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「リヴィーはかっこいいから」
へ? かっこいい──女の子?
「そうね、リヴィーはかっこいいのよね、だから好きになる人が多くて困っちゃうのよ」
鏡で見たリヴィーはいかにも女の子って感じで、綺麗で、柔らかくて──あ、いや、かっこいいタイプには思えなかったけど、そうだったのか……。
「ぶっきらぼうで無口だったけど、優しいの」
「そうそう。 でも、たまにドジなとこもあったりして、そこがいいのよね」
えーと、無口でかっこよくて、ドジっ子?
ますます分からなくなってきた。
「それで、学校では男子よりもモテてたりするのよね」
あ、男子もいるんだ。
「そうそう、そこらの男子よりもずっとかっこいいんだもの、リヴィーったら」
「あんまりくっつくと鬱陶しいって怒るんだけど、そこがまた可愛いのよね」
ああ、ひょっとしてアイリーンを身体が勝手にボイって放り投げたのって……その記憶かぁ。
「まぁ、あなたが誰でも、人のいる場所ではリヴィーとして扱うので覚悟してね」
にっこりとアイリーンが笑いかけてくる。
アイリーンとりヴぃーの関係っていったい……いや、考えるまい、だってアイリーンからの一方的な話しか聞いてない。
まだ決め付けちゃいけない。
「じゃあ、寮のことだけど、部屋は私の隣で、部屋には簡易のシャワーとトイレくらいならついてるわ。
それから、リヴィーはあまり物に執着しないの。
家から持って来てた本とか色々あったんだけど、欲しいって言う下級生とかにすぐ上げちゃって、今はほとんど残ってないかも。
ああ、着替えとか服は別ね」
「あ、小箱以外に何もなさそうに見えたのって……そういうことか。
じゃあ、服とか着る物は部屋のどこかにあるんだ」
まだタンスの中とかは確かめてないから、着る物は大丈夫そうだと知って安心する。
えっ、シャワー……今、シャワーって言ったよな。
「簡易ってことは……違うのもあるってことか?」
「ええ、大浴場と、露天になってるのが──」
「だ、だい、大浴場? 露天風呂?」
それは、それって、み、みんなで入るというアレですか?
裸の付き合いって背中流しあいしたりとか?
それは、混浴じゃなくても、その、俺が入ったら混浴?
いや、リヴィーは女の子だから、そうじゃないんだけど、それでも中身は俺で──。
うわぁぁぁぁぁぁっ!
「風呂に、入りたいと思ったら……他に女の子いるんだよ……なぁ。
俺だけで入れる時って、ある……のかな?」
「リヴ、それ──多分ムリだから。
それより、あなたが入るなら私たちがついてないと心配だわ。
ねぇ、リーズ?」
「えー、それってリヴィーと入れるって思ったらすごく嬉しいんだけど、でも中身はリヴなのよね、なんだか複雑―」
どうする? と二人が話してるのが聞こえる。
ああ、俺もどうしようって思った。
でもシャワーだけじゃ我慢できないような気がする。