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焼きたてのバターたっぷりのさくさくしたクロワッサンに、ミルクの風味のロールパン、多分食べたことのない甘い砂糖のついたパンとか、たくさんあったのを結構食べてしまっていた。
「うん、美味しかったな、あのパン」
卵のオムレツなんかもよかったけど、あの白いトロッとした砂糖のかかった甘いパンはほんのりシナモンの香りもして、美味しかった。
「一口だけでも食べて、口がすっきりするわ」
アイリーンが俺の前に置いたのはフルーツが乗った小皿。
切られた緑色のフルーツを試しに一口と、口に入れると爽やかな味と香りで口の中がさっぱりした。
「お待たせっ」
リーズが食べ終わったのか声がかけられて、立ち上がる。
「皿とかカップはいいのか?」
「ええ、それは下げてもらえるから置いておいても大丈夫」
そうか、取りに行くのは自分でだけど、皿とかは引いてもらえるんだ。
「じゃあ、行きましょう」
アイリーンが言うとリーズが頷いて、食堂から三人で出ていく。
廊下を歩いて裏庭に出るとそのまま寮の建物から離れていき、花の咲き乱れる庭の中から迷路にしつらえた低木の中に入り、そのまま道に迷うことなく開けた場所に着いた。
「綺麗だな」
迷路の真ん中に噴水と多分あれが東屋なんだろう、白い柱に囲まれた屋根のある一角は薔薇の蔦が柱から屋根へと這い上がり、白にその緑と赤い薔薇が見事な色を見せていた。
その東屋を見ていると、思わず口をついて言葉が出た。
「この時間に迷宮庭園に入って来ようなんて人もいないし、丁度いいでしょ?」
東屋の中にある椅子に座ろうと促されて、東屋に足を踏み入れると薔薇の香りがして、白い彫刻され柱に囲まれた白い椅子は、まるで乙女の見る夢のような感じがした。
「それで、リヴィー話って?」
座ったところでアイリーンに話を促された。
「ああ、急に言っても信じられないかも知れないけど……、俺はリヴィエール・アレイスターじゃないんだ」
鳩が豆を食らったような顔、というのはこんな顔かなといった顔をアイリーンも、リーズもしていた。
そんな顔をしていても、二人共綺麗で可愛くて、美少女ってのはどんな顔をしてても美少女なんだな、なんて思わされた。
「嘘──でしょ?」