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そういう所に目がいってしまうのは、リヴィーの、女の子の身体でも中身はしっかり男だってことで──あまり近寄られるとドキドキする。
「個室でよかった……」
つくづく個室でよかったと思う。
これが同室だとかだったら、俺の心臓が持たない。
「何か言った?」
「……なんでもない、気にしないで」
俺の皿にパンを乗せながらアイリーンが聞いて来る。
でも、やっぱりこうしていると、リヴィーと一番親しいのはアイリーンなのかな、と思う。
リーズは今朝あったばかりだけど、アイリーンが休戦中といいながらも仲良く話しているのを見ると、多分──だけど、リヴィーとも親しいんだろう。
「あのさ、リヴィーと親しいのってアイリーンとリーズであってる──かな?」
「ええ、多分一番が私、その次にリーズかしら」
よどみない答えが返ってきた。
なら──俺の秘密を二人には打ち明けた方がいいかも知れない。
「あとで、三人で話せるかな?」
ずっとリヴィーのフリをして二人といるのは、騙してるようで、気が咎める。
それで──二人の態度が変わっても、それは俺がリヴィーじゃないんだから仕方がないよな。
「うん、できれば他に人の居ない所で」
いくら何でも、こんな人の多い場所でだと、聞こえるかも知れないし、二人の反応から何があったかと騒ぎになっても不味い。
「紅茶のお代わりをもらってきたわ」
にこにことテーブルにポットを置くリーズ、そういえば俺の世話ばかりして、リーズはちゃんと食べたんだろうか。
「リーズ、後で時間あるかしら、リヴィーが三人だけで話したいって」
「え? ああ、出たい授業があったけど、いいわ」
え、授業サボってまでとは言わなかったんだけどっ。
「授業が終わってからでも──」
口を挟もうとして、アイリーンとリーズが頭を振る。
どうやら俺の話を優先してくれるらしい。
「リヴィーは今普通じゃないんだから、何かあったら話を聞くようにって先生からも言われてるから、平気よ。
まぁ、その時リーズはいなかったけど、後で許可もらえばいいでしょう」
ああ、そういうことか。
先生ってミルカ先生かな──昨日記憶がないことだけでも話しておいてよかった。
「じゃあ……裏庭の東屋はどうかしら。
授業中なら誰も来ないし、庭師もこの時間なら東屋の方には来ないはずよ」
場所を提示されてアイリーンが頷く。
「あずまや……ああ、そんなのがあるんだ」
何となく頭に浮かぶのは小さな休憩所みたいな建物で、ナイショ話というよりは散歩の途中とか、逢瀬なんかに似合いそうな場所だな。
「食べたら行きましょうか。
リーズあなたちゃんと食べた?」
アイリーンが言うと、リーズが椅子に座ってパンを食べ始める。
どうやら俺が思った通りだったようだ。
「リヴィーはお代わりはもういいの?」
俺の皿が空になっているのを見てアイリーンが聞いて来る。
「いや、もう充分お腹いっぱいだよ、ありがとう」
これは嘘じゃない、本当にお腹いっぱいで、もう入らない。