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「そうね、仲はよかった時もあったわね」
「やっぱり──って、時もあったって?」
「だって、私もリーズもリヴィーの事を好きなんですもの」
「……っ、あー……友達として、だよな?」
そうだと言って欲しいと思いながらも、違うんだろうなというのは何となく分かっていて。
「違う、と言ったら信じるのかしら」
くすっと笑ってアイリーンが言う。
その笑顔は反則だと思う。
緑色の瞳が面白そうに目を細めていて、俺をじっと見つめている。
「いや、その……記憶がないからよく分からないな。
正直アイリーンの事もリーズの事も思い出せないし」
半分事実で半分は嘘だ。
だって、俺はリヴィーじゃないんだから。
「おまたせっ、焼きたてのパンがあったから取ってきたわよー」
テーブルの俺の前にどんっとパンの入った籠が置かれた。
ああ、やっぱり俺の為──いやリヴィーの為に取りに行ってくれたんだ。
「ありがとう、リーズ。
うわ、どれも美味しそうだな」
チーズの入ったクロワッサンのようなのがあって、チーズがとろけてて美味しそうだ。
ひょいっとチーズクロワッサンを取って口に入れる。
チーズとバターたっぷりのクロワッサンが合わさって、もう絶品だと言いたいくらいだ。
そんなパンをぱくついてる俺をリーズとアイリーンがにこにこと見つめている。
「いや、そんな見てないで二人共食べろよ」
紅茶らしき飲み物の入ったカップを手にとって飲む。
これまたマスカットのような香りがして、砂糖も入ってないのにほんのり甘くて美味しい。
「美味いっ」
紅茶──なのかな、よく似てるような気がする。
まぁ、そうだとしてもこんないい味の紅茶は初めて飲むんだけど。
「リヴィー、砂糖とミルク入れないの?」
不思議そうにアイリーンが言って、ひょっとしてリヴィーは入れて飲んだのかなと気付く。
「入れなくても美味しいよ、けど、いつも入れてるなら入れてみるよ」
砂糖を一つ、ミルクをカップに垂らす。
ミルクが渦を巻いて溶け込んで、水色が琥珀から白濁した薄い茶色になっていく。
ミルクと砂糖を入れた紅茶を一口、……美味い。
「うん、こっちの方が美味しいな」
美味しい美味しい言ってたら、リーズがポットを持って来てくれた。
気が利くなぁ、いい嫁さんになるだろうなぁ……とか考えて、リーズもリヴィーが好きなんだよなと、艶やかだけどくせのある黒髪のリーズを眺める。
この身体は俺のじゃないし、あまり考えないようにしていたけど、アイリーンもリーズもスタイルがいい。
リヴィーの身体と比べると、二人の方が胸が大きくて、ちょっとだけリーズの方がアイリーンよりも大きいように見える。