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「いくわよっ」
アイリーンに片腕を、左腕にリーズが腕を掴んだまま食堂の中に入っていく。
さっき囲まれていたのが嘘みたいに道が開けて行く。
まるでモーゼの十……あれ、モーゼって誰だよ。
よく分からないが、俺のいた場所の言葉だろうか、それとも名前だろうか?
「はいっ、ここ座って」
アイリーンに肩を押されて椅子に座らされる。
食堂の一番奥のテーブル、椅子は四脚。
「適当に取って来るから、動かないでよ?」
アイリーンがリーズに目で合図をして、朝食を取りに行ったらしい。
リーズが俺の隣に座り、周りを威嚇するように見渡している。
遠巻きにしてる一部の──さっき俺を囲んでた──女の子たちが悔しそうな顔をリーズに向けている。
「……リーズ、さっきアイリーンとケンカしてなかったっけ?」
「休戦中~、だってアイリーンだけじゃ悪い虫を遠ざけられないもの」
えーと、悪い虫って──あの女の子たちのことだろうか。
リヴィーって人気なんだなぁ……と俺はまだ人事だと思っていた。
「リヴィー、おまたせ。
オムレツにパンとサラダ、あとオレンジジュース持って来たわ」
大きなトレイに料理を乗せてアイリーンが戻って来た。
「うわ、すごいな」
どうやってこんなに持ってこれたんだろう。
細い女の子の腕で、三人分も。
「何言ってるの、こんなのまだ軽いでしょ、いつもの訓練じゃもっと重い物も扱うんだし」
……え、いったいこの学院では何を教えてるんだろう。
しかし、パンは焼きたてなのかな、薄茶色のロールパンが美味しそうだ。
それに、デニッシュのつやつやした甘い皮とか、中に入ってるフルーツと生クリームが食欲をそそる。
「じゃ、食べてもいいかな」
「ええ、たくさん食べて。
ついでに私のも食べる?」
「あ、うん。
ちょっと足りないかなって思ったから助かる」
「私追加とってくるね~」
アイリーンと入れ替わりにリーズが朝食の追加を取りに行った。
これは、リヴィーの為なんだろうなと思いながらも、今リヴィーは俺の身体だから、嬉しくなってくる気持ちは止められなくて、つい顔が笑ってしまった。
「アイリーンとリーズってほんとは仲いいんだろ、休戦中とか言ってたけどさ」