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「リヴィーの記憶がないのを利用してっ、なんて子なのっ!」
「何よ、ちょっと自分が一年の時から同じクラスだってだけで一番の親友みたいな顔してっ!」
アイリーンとリーズが口げんかを始めてしまうのに、足が勝手に後ずさる。
怖い、口げんかとはいえ、女の子の争う様って本当に怖い。
誰か俺に本当のリヴィーの友人関係を教えて欲しいもんだ。
「あ、と俺、先に行くからっ」
それだけ言い置いて廊下の先へと小走りで向かった。
後ではリヴィーを呼ぶ声がしていたが、無視した。
廊下の突き当たりまで来ると、左手に階段があり、それを降りて行く。
階段を降りると賑やかな声が聞こえて来て、食堂はすぐに見つかった。
「よかった……これで朝飯が食えるな」
食堂にはドアがあったが、開きっぱなしになっていて、パンの匂いとかこれはペーコンだろうか、肉のいい匂いがして、お腹が鳴った。
「そういや二日寝たっきりって言われてたよなぁ……、てことは三日は食ってないのかな」
それなら、胃に悪いものはなるべき避けて食べようと中に一歩入る。
「きゃあっ」
……きゃあ?
「あのっ、これからでしたら、ぜひ私たちのテーブルに」
「私っ、私の横空いてますっ!」
あっという間に囲まれた。
「え、あの……」
どうしたらいいんだろう。
五人くらいの女の子たちに囲まれて、一歩も前に進めない。
リヴィーって実はすごい人気があるのか?
そりゃ鏡で見た時には綺麗で見惚れたけど、この子たちもリヴィーも女の子なのに。
男はいないんだろうか、と女の子たちの間から食堂を見てみる。
ほんの少し、端っこのほうに四人くらいの男がいた。
だが、どうみても生徒に見えない。
テーブルについたその背が飛びぬけてでかい。
女の子たちのテーブルからそこのテーブルに行くのも憚られる、そんな感じがした。
「あ、リヴィーいたっ!」
「リヴィーやっと追いついた!」
後からかけられた声に、アイリーンとリーズがすぐ側まで来ていた。
女の子たちに囲まれた俺を見て、けんかしていたのが嘘みたいにタイミングよく左右から腕を取られる。
右腕にアイリーン、左腕にリーズ、二人の美少女に腕を取られて、囲んでいた女の子達をかき分けるようにして中に入って行く。
「いつも言ってるじゃない、一人で行くなって、もうっ」
アイリーンがじろりと見上げながら呟く。
「え、と……ごめん」