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「──まぁ、なるようになるか」
そう呟くと、考えることを諦めた。
ベッドに潜り込むと、そのまま目を閉じる。
翌朝、ここの制服らしいものをクローゼットから見つけて、身支度を整える。
スカートが短くて、足がすうすうする。
部屋を出て廊下に出ると、何人かの少女が遠巻きにこちらを見ている。
──何か、リヴィーらしくない格好とか仕草をしているのだろうか。
立ち止まって、誰かに声をかけようとすると、チャイムが鳴って、皆慌てて去ってしまった。
「皆どこに行ったんだろう?」
時間からして、授業というよりは朝食の合図だろうか?
誰もいなくなった廊下で、食堂はどっちだろうかと考える。
「困った、な──っ?」
背中にドンっとぶつかったものがあって、独り言が途切れる。
「おっはよう、リヴィー」
振り向くと、背中に張り付くように黒髪の、くせのある髪の少女が笑っていた。
「え、と──ごめん、誰だっけ?」
「やだなぁ、頭を打ったとは聞いてたけど、フィアンセのリーズを忘れちゃったの?」
「えっ?」
ふぃ、ふぃあんせ? ふぃあんせってあれだよな、婚約者とか許婚ってやつで──。
ちょっと待て、リヴィーもこの子、リーズも女だろ、この世界は女同士で結婚したりするのか?
「ご、ごめんリーズ……だっけ? 俺記憶がはっきりしてなくて──」
「うん、それはいいのっ、聞いてるから」
そう言いながら腕に腕を絡ませられて、腕を組まれてしまった。
黒髪の美少女に腕を組まれるなんて、多分元の俺なら嬉しいんだろうけど、いいんだろうか?
「あーっ! リーズ何やってるんですかっ!」
「──アイリーン……?」
昨日の今日だから心配して迎えに来てくれたんだろうか、なんて一瞬考えてしまった。
「何抜け駆けしてるんですか、リーズ。
リヴィーもっ、腕なんて組んじゃって!」
いかにも怒ってますって顔でアイリーンに言われた。
「いや、だってリーズが俺のフィアンセだって──」
「リーズぅぅぅ!」
アイリーンの怒鳴り声がして、思わず肩を竦めてしまった。
どうやら、フィアンセというのはリーズの嘘らしい。