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第34話 不器用な二人。


「二年ぶりくらいだよね、ローラ。」



 バンダナをはぎ取った僕は、ローラに自分の正体を明かした。


 先ほどまでの僕の大声で、牢の中は僕の中に注目が集まっていた。

 薄暗くてよく見えないはずなのに、黒い髪を見た牢の中の人たちは、先ほどまでの絶望の顔から一辺して恐怖の表情に変わった。


 感情的になるなってゼニスに忠告されていたのを忘れていた。

 


 魔王の子の持つ黒い髪には魔王の子たらしめる何かがあるのだろう。

 無条件で人間に嫌われてしまう。


 僕とは逆に、ルスカは無条件で愛される。

 この髪には、腹立たしいことにそういう力が籠っているんだね。



「リオ………?」


「そうだよ? 僕が別の何かに見える? 捨てたことを後悔しておきながら、自分の息子の髪の色を忘れたとは言わせないよ?」


 ゼニスが言うには、こういう皮肉や挑発を無意識にしてしまうらしい。

 むぅ、たしかに、こういうセリフは聞く側だったらかなりイラッとするかも。


 ローラは恐る恐るとぼくの頭に手を乗せる。


「生きて………いたのね………よかった………」


「僕も自分がなんで生きてるのか不思議なくらいだよ。

 あと、あんまり触らないでもらっていいかな。僕はローラのことが嫌いなんだよね」



 にっこりと微笑みかけるようにローラを脅す。

 ビクリと肩を振るわせると、ローラは僕の頭から手を離した。



「ローラの今の境遇には同情してあげる。

 でもね、ローラがさっき話してくれた事については同情できない。

 僕は心の底から村の人たちとローラの事が憎いんだもん。

 僕だってね、人と仲良くしたいよ? なのに、人が僕を嫌うんだもん、魔王の子を人間嫌いにしたのは他の誰でもない。伝承に踊らされた人間だよ。

 そしてローラはそんな僕たちの話をダシに同情してほしかっただけ。

 話を聞いてて、僕は吐き気さえしたよ。」



「それはっ! ………それもそうよね………ごめん、なさい」



 一瞬顔を赤くしたローラだったけど、すぐに落ち着き、僕に頭を下げた。

 自分のしてきたことを思い出したんだろう。

 あんたなんか生まなきゃよかった、とまで言われたんだ。


 同情なんかできない。

 できるわけがない。


「うん、謝られても僕は一生許さないけどね。

 でも、ローラは最初に僕を間引きから救ってくれたから、今だけは水に流してあげる。」



 だけど、僕はすべてを許せるような人間にはなれそうにない。

 でも、先ほど感情的になって思いのたけをぶちまけた分、少し自分の肩の荷が下りたような気がした。


 僕がだいぶ落ち着いてきたのがわかったのか、キラが僕の右手を握って心配そうに見上げてきた。キラの手がすこしひんやりしてきもちいい。



「にーさま、だいじょうぶ?」

「うん、心配してくれてありがとね。」


 左手でキラの頭を撫でて安心させると、ローラが不思議そうな顔をしてきた



「にー、さま? リオ、その子はいったい………?

 それに、その頭の色は………。」


「あー、説明は面倒くさい。この正体をさらすと危険だからこの子については僕はなにも言わないよ。

 一つだけ言えることと言ったら、この子はルスカのために存在する子ってことだね。」



「ルスカ………。ルーも生きているの!?」


 今度はルスカの無事も知って目を輝かせる。

 絶望の中に光を見たようだ。よかったね。


「生きてるよ。僕とルスカはあの日から必死で生きてきたからね。僕どころか、ルスカまでドラゴンに生贄にするような人たちはいないから、あの村よりも有意義に過ごしているよ」


 皮肉を言いつつ僕がルスカの無事を伝えると、ローラは複雑そうに安心した息を吐いた。

 僕は話しはそこで打ち切る。


 頭にバンダナを巻いて再び髪を隠す。

 牢の中の人たちにはすでに怯えられちゃっているし、牢の番をしていた盗賊にも知られてしまった。


 慣れたと言っても、嫌われるのはやっぱりいやだよ………。


 牢の番をしていた盗賊がどこかに向かって歩き出した。

 ああ、しまった。このことをあのクズ団長に伝えるつもりなんだ

 牢の番をしていた人は2人いたから情報を伝えさせないように始末するのは不可能か。


 くそっ しかたないか。



「リオ………」


「………?」



 ローラがこちらを向いて僕に声を掛けた

 僕はローラを見上げる。その瞳には涙が溜まっていた。



「………今まで、本当にごめんね」


 そう言って僕の頭を抱きしめ、何度も何度も僕の頭を優しく撫でた。

 でも、僕はまだローラの言葉を信じ切ることができていなかった。

 だから、顔をそらした。


「………。」


 今、ローラはどんな顔をしているだろうか。

 わからない。



                ☆


 それから、どれくらい経っただろうか。

 10分だろうか。30分だろうか。

 それとも、1時間だろうか。

 日の光も届かないから、時間も計れない。糸魔法を外に向かって出したらわかるんだろうけどさ。



『リオル。私たちも盗賊のアジトに到着した。外はすでに日は落ちている。

 10分後にそちらに攻め込む。』




 おっと、ゼニスはアジトに到着したみたいだ。

 ゼニスにつないでいた糸に視覚情報を組み込むと、ゼニスは岩陰に身を隠していた。


 洞窟までの距離はおよそ100m かな。



(わかった。スムーズに洞窟から脱出できるように中の人たちには説明しといた方がいい?)



『うむ。内密に頼むぞ。』




 りょーかいっと。




 僕は糸魔法を発動。女性牢の内だけのローカル回線を構築。

 男性の牢は混乱を招くだけだろうから今は放置。

 あと、女性の牢の中にいた子供たちも回線から除外する。





(みんな、今から一言も発しないで僕の言葉をよく聞いてね)



 自己紹介や作戦よりもまずはしゃべらないことを伝える。



『『『『『  !!?  』』』』』




 回線を通じて、ローラも含めて全員の驚愕の気持ちが伝わってきた。

 うーん、いい反応をありがとう。



「な、なに!?」

「声!?」

「どういうこと!?」



 きょろきょろとあたりを見渡す女性たち。

 いぶかしんで牢を覗く盗賊。

 おっといかんいかん



(聞こえなかったのかな、僕はね、しゃべらないでって言ってるんだよ?

 できるだけいつも通りに振る舞って欲しいな。僕の声が聞こえるように気取られないようにしてね)



 僕はキラの頭を撫でながら女性牢の中の人たちに注意を促す

 すると、何人かが僕の方を見つめてきた。そうだよ、僕の声だよ。



(お察しの通り、僕は魔王の子だよ。そして、みんなも知ってるだろうけど、僕の隣にいるこの女の人、ローラは僕の産みの親なんだよ。

 僕は別に誰かを殺そうだなんて思ってないから安心してね。

 端的に言うと、僕はローラを含めて、ここにいるみんなを助けに来たんだよ。)



 うーん、なんか胡散臭いセリフになっちゃった。

 まぁいっか。僕はほんとのことを言ってるだけだし。


 なんか懐疑的な眼差しを受けるけど、無視。


(僕の仲間が今、この洞窟の近くで機を窺っているんだよ。

 あと10分くらいでここに急襲を仕掛けてここにいるみんなを解放する手はずになっているんだよ。

 だから安心して。みんなは助かる。僕たちが助けるから。

 あと、望み薄だけど約束してほしい。もし助かったら、僕の事を嫌わないでほしいな。)



『……………………。』

『信用してもいいの?』

『きっと嘘ね。嘘に決まっているわ』

『魔王の子………いい子なのかしら』

『あんなに小さい子が、助けられるの?』

『もういや………いっそ殺して………』

『仲間って、きっと魔族よね、信用できないわ』


 何人かが顔色を明るくし、何人かが疑いの視線を向ける。

 少数だけど、さらに絶望の顔をする人がいた。


 言うべきじゃなかったのかな


 何も言わずに助けた方がスムーズに事が進んだら嫌だな。

 フラグとかじゃない………よね?


 ゼニスの判断ミスか、それとも僕が聞かなければよかったのか………。

 もしくは、僕の言い方が悪かったのか………。わからない。

 わからないなら嘆いてもしかたないね。


 回線は繋いだけど、彼女たちの気持ちは一方通行で僕に届く。他の人たちを経由することは無い。



(はい、僕からの話は以上! 安心してね、絶対にみんなを助けるから!)



 そう言って僕は不安を感じつつ念話を解いた。

 こういう時に、安心させられるような話術が無い自分を呪った。




                   ☆




 ゼニスの急襲を待つ間、トラブルが発生してしまった。

 それも、思いもしない所から。



「にーさま………」


 キラが僕の手を握って、何かを訴えるかのような目を向ける。


「どうしたの?」


 キラの小さなその体は、かくかくとちいさく震えていた


 ん? 別にローラに怯えているというわけでもないし、気温は少し低いけど寒いわけでもない。

 なにか体が不調を訴えている類の震えだ。

 冷や汗も掻いているし、大丈夫か?


「にーさま………ごめんなさいです。」


「キラ? どうしたの? 言ってごらん。」


「もう、やくそく、まもれなかったのです………」

「え、なにが―――」



―――ポンッ!


『きゅー!』

「は………!?」

「え………?」



 キラの擬人化が解けて白竜になってしまった

 間近で見ていたローラも、あまりの事態に間抜けな声を出す。



 …………………………………。


 …………………………………。



 ……………………………………………………はっ!




 ちょっと思考停止してた!

 とと、とにかくトラブル発生! すぐにゼニスに連絡をとらなくちゃ!



(ゼニス! 大変だ! キラの擬人化が解けた!)


『む………、そうか。まだ人化の術は慣れていないのだし、仕方ないかもしれぬな』


(どうしよう! このまま盗賊にキラが見つかっちゃったら!)


『落ち着け。リオルが落ち着かなければキラまでも不安になるであろう。』



 それもそうだ! とにかく打開策を考えないと!


 このままキラが白竜になったままだったら盗賊に見つかった時にどういう言い訳をしたらいいのかわからない!

 それに、キラだけ別の場所に移されるようなことになったら救出の計画が狂ってしまうかもしれない!




『きゅー! きぃ!!(ごめんね、おにいちゃん! ごめんね!)』

「ど、どうしちゃったの、この子。さっきの子、だよね………?」


 ローラがキラの正体にいち早く気付いたようだけど、今はそれどころじゃないんだよ!!


「えっと、えっと、とにかくこの子を隠さないとっ!」


 ああ! でも牢の中は隠れる場所がない!

 どうしよう、どうしよう!!


 そうだ! 土魔法でうまく隠せないかな! やってみよう!

 僕が土魔法でキラを隠そうとすると―――


「きゃ―――――――!!! 魔物よ―――――!!」


「ばっ! ちがっ! これは」


 こっちがパニックを起こしていると、牢の中の女の人たちもパニックを起こしていた!


 でも、そりゃそうだよね!

 逃げ場のない牢屋の中にいきなり70cm台トカゲ型の生き物が現れたら僕だってパニックを起こして魔物だと思うよ!



「あ、待って! キラ!!」



 そして、こういう時こそ僕が落ち着いていないといけないのに、僕まで慌ててしまっているもんだから、キラまで混乱してしまっている!


 パニックスパイラルだよ!

 そしてそのパニックはすぐさま牢内に伝染しちゃってパニックパンデミックだよ! 


 ああもう! 部屋を走り回らないで!!



『きゅあ―! ぴーぃ!(どうしよう! どうしよう! もどれないよー!)』


「キャー! こっちに来たわ―!」

「魔王の子の仕業よー!」

「いやあああああああああ!! 食べないで――――!!!」


 幸い牢の中でキラは走り回っているだけで、けが人は出ていないけど、牢の中は阿鼻叫喚。

 あと、おい誰だ! さりげなく僕のせいにしたヤツ!!



『きぃ! きゅ―――――!!(やくそくやぶってごめんなさい! うえええええええん)!』


「キラ!! 落ち着きなさい!! 糸魔法・捕縛《蜘蛛網(スパイダーズネット)!》」


 僕は蜘蛛の巣状に糸を出し、粘着性を付加し勢いをつけて射出。

 バサッ! とキラにかぶさった




「よし! くっついた! これで―――うわあああ!!」




 キラにくっついた糸に引っ張られて、僕はズルーン! と盛大に滑ってしまった!

 そうだった!! ドラゴンの力はすごく強いんだ!


 僕の体重はまだ15kgくらいしかないし! いだだだだ!!! 引きずらないで!!


 慌てて糸を切る。


 ううううう………………………。

 ファンタの町を出てから怪我してばっかりだ。

 ズルズルと石の上を引きずられて僕の右半身が傷だらけ………。

 2,3日休んでいれば治る怪我だけど、ヒリヒリして地味にいたい………


 こんなことなら闇魔法を使って地面に伏させればよかった………。



『き、きゅあー!?(わわっ! おにいちゃん、だいじょうぶ!?)』



 僕を引きずっていたことに気付いたキラは、今度は僕を心配してこちらに走ってきた


 人間語を理解できるようになっても、やっぱりこの子たちは産まれたばかりなわけで、

 空気を読むなんて器用な真似はできないわけで


 この子は牢屋内の雰囲気をめちゃくちゃにしちゃったよ!



 キラはそんなことお構いなしに僕に向かって突進をしてきた。


「うわああああ!!? そのスピードでこっちに来ないでよ!」


 心配してくれるのはわかったけど、その勢いでアタックされたら僕が死んじゃうって!


「きゅう!?」


 しかし、キラはこっちにくるなと言われて慌てて方向転換。しかし、混乱していたキラの行くその先にあるのは牢の岩壁である。


――ゴン!!


 激しい音を立ててキラは壁に激しく激突した。


「うわ! キラ!」


 ドラゴンの力で思い切り衝突された岩壁は、脆い所にミラクルヒットしたのか、ミシミシと音を立てて壁に罅が入る


「んな!?」


 それは天井付近にまで広がり、バキンと岩盤の一つが砕けてこちらに降り注いだ。

 落ちてくるのは小さな石とはいえ、高さのある場所から降ってくる石は、4歳児という幼い身体には十分すぎる脅威となる。



 迫ってくる脅威に、僕はなすすべなく身体が硬直して動けなくなってしまった

 僕は衝撃に備えて目をギュッと瞑った





「リオ! 危ない!!」





 その瞬間、僕は柔らかいモノに包まれ、なにか懐かしいにおいを嗅いだ。





 ……………。



 …………………………。




 ………………………………………?






 備えていた衝撃は、襲ってこなかった。

 そっと目を開けると、そこには僕を抱きしめてギュッと目を瞑ったローラの顔があった。

 背中と頬に石が当たってしまったのか、少しだけど血がにじんでしまっている。


 キラの方は………壁にぶつかったことでようやく混乱が収まったのか、申し訳なさそうに僕の方に歩いてきていた。


 思い返せば、直前に闇魔法で動きを止めればよかったと反省する。

 でもその瞬間は硬直して頭も真っ白になっちゃったから無理だろうな。

 終わったことなんてなんとでも言えるからね。



 それにしても



「ロー………ラ?」



 このローラの行動に、僕は混乱していた。


 ローラが僕を抱きしめているんだもん。


 なんで、僕を守るの?

 いつもいじめていたのに、なんで、僕を庇うの?


 さっきは僕もローラに触らないで、とまで言ったのに、なんで僕を守ったの?


 いや、違う。

 ローラはこの混乱に乗じて僕を絞め殺そうとしているのかもしれない。


 だって、僕の髪を見た女性たちの反応は、恐怖。


 僕を恐れていた。


 だったらローラもその時、同じ感情だったのかもしれない。

 僕はローラの事が嫌いだと、すでに言っているし

 ローラはそれでどう思ったかなんてわからない


 僕が息子であることを打ち明けても、やっぱり自分の子が魔王の子だなんて不名誉なレッテルが張られたままなのは嫌だろう。

 ローラも僕を産んだことにより虐げられてきたかもしれない。


 僕が憎くて当然だ。

 僕のせいでローラも大変な思いをしていただろう。

 だからローラは僕が憎くて2年前は僕を虐めていたんだ。


 今でも、僕がローラが憎かったように、ローラも僕が憎いはずだ。

 それこそ、腹いせに僕を殺したいくらいには。




「今度こそ、私が守ってあげるからね、リオ。」




 だけど、後に続いたその言葉に、意味もなく安心した。

 なんでだろう。不快に思っていた相手なのに。


 殺そうとさえ思っていたはずなのに。

 さっきまで僕を殺そうとしているのではと疑心暗鬼になっていたのに



 僕の心の中にあったしこりを、その言葉がゆっくりと溶かしてくれた。



 ああ、なるほど………。

 僕はこの人に認めてもらいたかったのかもしれない。

 ローラの息子だと、認めてもらいたかったのかもしれない。


 今まで、息子らしい扱いを受けたことは無い。

 悪魔として、恐れられていた。ローラの子供なのに、どこか距離を感じていた。

 僕も、“ローラ”と呼んで距離を置いていた。


 僕がこんな髪だから………。

 どうせ嫌われるはずだから………。


 自分からそう決めつけていた。


 でも、ローラはキラの暴走から僕を守ってくれた。

 体が硬直して動けなかった僕を、ローラは守ろうとしてくれた。

 その行為が、ただ、うれしかった。


 本当に、信じてもいいのだろうか?



 ローラを信じても、いいのかな。



『あんたなんか生まなきゃよかった』



 昔ローラが言っていたことが僕の脳裏をよぎる。

 僕の心の中にあるしこりがうずく。

 胸の奥がズキンと脈打った。



『わたしが守ってあげるから』



 そうだよ。守ってほしいんだよ。

 でも、ローラは約束を破った。


 人間は、また同じ過ちを繰り返す生き物だ。

 また、ローラは約束を破るかもしれない。


 それでも!


 僕は


 ローラを信じたい。


 信じてみたいんだ。


 だって、お母さんだもん。

 理由なんて、それでいい。

 僕たちは、二人とも不器用だっただけだ。


 それに、僕は一度だけ信じるって決めたんだ。

 自分から疑ってどうする!



「ありがとう、ローラ。その子は白竜だよ。人に害するような子じゃないから、心配いらないよ」


『きぃ!きぃー!(おにいちゃん、もどれないの!)』


 急ブレーキをかけたキラはローラの寸前で立ち止まり、回り込んで僕の背中にのしかかろうとしていた。

 さすがにローラに飛びつくことはしなかったようだ。

 僕に抱き着くことはあっても、障害物があったら急停止するのは当たり前だ。



「白竜………? で、でも………リオは怪我を………」


「このくらい、すぐに治るよ。

 僕の羽がちぎれてもすぐに再生しちゃったのを覚えていないの?

 このくらいの怪我なら、問題にならないよ。」


 ちょっと冗談っぽく、小馬鹿にしたような言い方でローラにどうってことないと伝える。


「そう………よかった………。」



 僕とローラが安堵の息を吐いた。

 僕もローラが無事でよかった。


 せっかく今から助けようとしているところなのに、怪我なんかさせたくないもん



『ぴぃ! ぎぃ!(むー! おにいちゃんからはなれてー!)』



 キラが僕の背中に張り付いてローラから引きはがそうとする。


 まったく、キラのおかげで僕の中で燻っていた問題が解決しちゃったじゃないか。

 キラには悪いけど、ここは僕の子供らしいわがままを許してほしい。




「ねえ、“お母さん”。」


「え………? ん………なに、リオ?」















「………もうちょっと、こうしてたい。」







 少し力を込めてローラを抱きしめると

 ローラも、僕をギュッと抱きしめてくれた。





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