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第30話 攫われたリオル

              ☆ フィアルSIDE ★ 






「おばーちゃ――――――ん!! まーまー―――――――!!」


「うるっせぇ! だぁってろクソガキが!!」


「ぎゃん! ああああああああああああああああああああああああああああん!!」



 盗賊たちは子供(たしかリールゥって名前だった)を麻布にくるんで小脇に抱えながら魔法屋から出てきた


 それを見て、今朝、門番さんが言っていたことを思い出す。


『最近は近くに盗賊団がアジトを構えたみたいだ。』

『この町に来る商人が襲われた。』

『女や子供がすでに何人か攫われてしまっている』


 と。


 女や子供を誘拐する理由は想像がつく。

 奴隷として売り払うつもりなんだ。


 子供は幼い頃から仕事を仕込んで覚えさせ、労働の糧にする。

 女は………弄ばれるのだろう。


 嘆かわしいことだ! 




「ま、まちなさい!」


「ああ!?」

「んだてめぇ! ちっ、さっきの女か」



 気づけば、盗賊たちの目の前に出ていた

 《ブースト》で盗賊たちを追い抜き、目の前に立ちふさがる


 魔法には自身があっても、私は戦闘職じゃないから、対人戦の自信は皆無だよ!

 あああああ! どうしよう!


 なるようになってしまえ! 私は捕まらない程度に頑張るからね!



「そそ、その子を離しなさい!」



 震える声で私がそう言うと、先ほど《身体燃焼エリアブースト》を使った盗賊が『チッ』と舌打ちをして、再び《身体燃焼》の詠唱を始めた



「っ! 《大気弾ウィンドボム!》」


 その隙を逃さず、私は風の圧縮魔法を放つ。


 圧縮された大気がもとに戻ろうとする力は、爆弾そのもの。

 その衝撃波は、人間を10mほどブッ飛ばすくらいは簡単にできる!


 もちろん、魔法屋のおばあちゃんの所にいた子供のリールゥ君を傷つけるつもりはないから威力は押さえているけどね



「チッ! クソが! おい、しゃがめ!」



 くそっ! 反応が早い!

 魔法を使える者との戦いにも慣れているのか!


「ッ! 覚悟しろ女ぁ!」


 魔法の軌道を読んで規模の小さい爆風をやり過ごした盗賊は、リールゥをもう一人の男に押し付け、短剣を抜いてこちらに向かってきちゃった!

 押し付けられた男は町の外まで一直線に走り出した!

 くそ、あの子を助けるために飛び出したのに!

 足止めなんて!


 どうしよう! マイケルとキラの服を買いに来ただけだったから解体用の安いナイフしか持って来てないし!

 いつも使ってる短剣は宿屋だよ!


 こういう時は距離を置かないと!

 爆発系の火魔法で牽制してから仕切り直しをしよう!



「《小爆エクス―――」

「――――死ね!!」



 私が魔法を唱えきる前に、ナイフが目の前に迫ってくる



 あ、やばい………死ん………




―――ダン!


―――キン!





「え?」「なっ!?」


「問題を増やすな、愚か者」




 そこに居たのは、盗賊の短剣を斧槍ハルバードで弾いたゼニスさんだった。



「ゼニスさん!!!」



 短剣を弾かれた盗賊は、いったん距離を置いて新しい短剣を握った。



「うむ。こやつらが例の盗賊団だな。私の所にも三人来たぞ。20秒でのしてやったがな。

 子供達を守りながらではさすがに苦戦した。」


 一人にこんなにてこずっている私とはえらい違いだ。

 そういえば、戦闘をしているうちにここは宿屋の近くだ。

 だからこんなに早くここにたどり着いたんだね



―――シュタッ!



「よっと! あ、フィアル! 無事だったんだね!」



 今度は上からリオルが降ってきた

 って、え? 降ってきた?


「う、うん。リオルも無事でなによりだよ」



 そう言いつつ、チラリと上を見てみる。

 宿屋の二階から飛び降りたのか………。なんで無事なんだろう?


 あ、そっか、闇魔法だね! 本当に便利な魔法だなぁ。


「いくの~♪」

「「 ぴゃー! 」」


 今度は子竜とルスカちゃんが二階から飛び降りてきた!

 うわ! あの子たちは何も考えていない!




「もー! ルスカたちは邪魔になるから待ってろっていったのに! 糸魔法・遊技《釣床ハンモック》!」




 リオルは両手の指を広げて前に出すと、ルスカちゃんたちは地面に激突する寸前に“空中に留まった”




「―――なんちゃって」


「「「 ふにゃ!? 」」」


 ポテっと地面に落ちる3人。

 技名から推測すると、リオルは糸を網目状にして出してルスカちゃんたちを受け止めたみたいだね。


 リオルによれば、糸魔法は実体化と非実体化ができるらしい。

 非実体化は、実体がないから大抵の物体は素通りできるって言ってた。目にも見えない


 実体化の方は細かったり伸縮性があったり、いろんなバージョンがある。


 細くて視にくいし 物にもくっつくし、まるで蜘蛛の糸のようだね。



「―――《身体燃焼エリアブースト》 クソが! 続々と!!

 だが、ガキや女が増えるのは好都合―――ん?

 あの髪の色………もしかしてアジトにいたローラって女の………?」


「ローラ?」



 身体燃焼の詠唱を終えた盗賊が、なにやらぶつぶつと言い、リオルが首を捻った。

 ローラ? 人の名前?




「ははっ! 神子じゃねぇか!! そっちは魔王の子かァ!?

 こいつぁ今までにないほどとんでもなく高く売れそうだぜ!!

 おい、そこのガキどもを寄越せ。そしたらあんたの命だけは助けてやる!」



 げ! マイケルとキラの髪の色を見た盗賊は神子と魔王の子だと勘違いしたみたいだ!

 擬人化したばっかりだから、まだこの子たち用のバンダナも巻いていないし!


 誰が受けるか、そんな提案!

 ゼニスさんにかかればあんたなんかすぐやられちゃうんだからね!


「下らん。ごちゃごちゃ抜かさず来い。」

「チッ! だったら殺してから攫うまでだ! ―――《爆煙イクスフロー!》」



 ゼニスさんと盗賊と中間あたりで煙幕が発生した!

 火魔法の視界阻害魔法、《爆煙イクスフロー》黒っぽい煙幕で視界が遮られた

 その魔法には慣れているのだろう、タイムラグはあるものの、詠唱短縮でこのあたり一帯に煙幕を張ったようだ


「この程度の目くらましで私の首を取れると思うなよ」



 ゼニスさんには《魔力探知》があるから目つぶし程度は気休めにもならないだろう

 私とゼニスさんは瞬時に視界から《魔力探知》に切り替える。



「ルー危ない!」

「ひゃっ! あ、りお!!」

「むぐっ! 落ち着け、ルー! 《ミスト》を!」

「う、うん!」


 でも、私とゼニスさんが眼から《魔力探知》に切り替えた瞬間には、盗賊はすでに動いていたみたいだ!

 リオル達が襲われた!!



「む! リオル!」


 意識の死角を突いた奇襲。

 前のセリフは、自分に攻撃が来ると錯覚させるためのものか!


 狙いは初めから子供たちだったんだ!


「《へびーふぉぐ―――」

「―――落ちろ(ダウン)!》」



 視界の煙幕にルスカちゃんの水属性の視界阻害魔法《濃霧ヘビーフォグ》が加わり、爆煙に水分が付着したところを、リオルが一気に地面に落として視界が晴れた

 うわ、体に黒っぽい水が付着してベタベタする


「チィ! 対応が早い! 」


 相手は事前に《身体燃焼エリアブースト》をかけていたので、すでに50mほど離れてしまっている


 脇に誰かを抱えている! 子供たちが攫われた!!


「ひゃあー! まいく―――!」

「おね―――――!」

「りお――――――――!!」

「僕は大丈夫だから! みんな落ち着いて!」



「ハハハハハ!!! このガキどもは貰っていくぜ!!」


 盗賊が抱えていたのは、リオルと全裸のキラだった。

 あの一瞬で二人を攫ったのか、あの盗賊、場馴れしているな………


 それにしてもリオルはあの状況でルスカに何をすべきかの指示を出したのか。


 根性が据わっているというか、なんというか………リオルは攫われている最中だというのに、結構落ち着いているようだ


 攫われなかった方を見てみると、ルスカちゃんは尻餅をついていた。

 おそらく、攫われる寸前にリオルがかばったんだね。


 ………やるじゃん、リオル。




                   ☆



 ゼニスさんはリオルとキラを攫った盗賊の方をみて、獰猛に笑う。

 その顔は野生の猛獣のそれだ。



「ふん、浅はかだな。この私から逃げられると思って――――む? この糸は………」


 ゼニスさんは持ち前の脚力で飛びあがり、二階建て住宅の屋根の上に着地した。

 ハルバードを背中に構え、逃げた盗賊の首を取るために両足に力を込める



「………………。ふむ………それは本当か? ―――わかった。

 後で必ず助けに行く。待っていろ。リオル。」




 リオルとキラが攫われているというのに、ゼニスさんは男を追わずに、何かを呟いてから屋根から飛び降りてこちらに歩いてきた。



「どうしたんですかゼニスさん! 盗賊を追わなくていいんですか!? 見失っちゃいますよ!!」


「ふむ。見失うことはない。リオルが糸を残してくれたからな。」


 そう言って、ゼニスさんは軽く右腕を上げた。

 おそらく右腕にリオルの糸がくっついているんだろうな。

 私には見えないけど。


 あの子は状況の把握が早い。

 道しるべになるものを瞬時に用意してくれたみたいだね



「………リオルなら心配いらんだろう。子供は殺さず、売るそうだからな。」


「でも、だからって薄情すぎませんか!?」


「いや、いいのだ。先ほどリオルの糸から伝わったことだが、その盗賊団のアジトに、リオルの母親が捕らえられているかもしれないらしい。確証はないだろうがな。」


「………ははおや?」


 ルスカちゃんが首を捻った。

 リオルの母親ってことはルスカちゃんの母親でもあるんだよね………?

 双子なんだし………。


「その母親とやらが捕らえられているのであれば、一応救出してから脱出するつもりだと無茶を言っておる。リオルめ………勝手なことを言いおって!」


 ガン! と斧槍ハルバードの底で地面を打つと、あたりの地面にヒビが広がった。

 うわぁ、ゼニスさん、めちゃくちゃ怒ってる………。




『―――無茶なのは承知だよ。あ、今フィアルにも糸は繋いだから、僕の声は聞こえるよね?』




 うわ! びっくりした!


 糸魔法を使った念話かぁ、本当にリオルの糸魔法は便利な機能が搭載されているなぁ。


『別に、救出はついでだよ。僕は救出したくて捕まったわけじゃないし、捕まるつもりはなかったんだけどさ。盗賊の手がマイケルからすり抜けてルスカの方に伸びているのを見たらついカッとなってルスカを突き飛ばしてたんだよね』


「それでリオルが捕まっているのであれば世話ないな。」


『め、面目ない………。ごめんね、面倒掛けて。』


「それはいい。後で死ぬほど叱ってやる。今の状況を話せ。」


『今、僕とキラは盗賊が持っていた馬車に手足を縛られて乗っけられた所。なんかよくわからないけど、魔法屋のババアの店にいたリールゥって子も近くにいるよ。

 こんな子供を攫うってことは奴隷商にでも売るってことなのかな?

 後はね、その気になれば盗賊たちみんなの首を撥ねることはできるよ。二人しかいないし。』



 リオルのこの落ち着きはなんなんだろう。

 攫われている最中だとは到底思えないほど平坦な声だ。


 もちろん、馬車の中でしゃべれないだろうから念話だけど。



「へっくち!」



 おっとっと。すぐそばで黒竜のマイケルがくしゃみをした。

 あ! そういえばキラの服買っただけでまだ着せてない!


 あの子、裸のままで捕まえられちゃったよ………


 とりあえず、さっき買った服をマイケルに着せてあげる。

 不愉快そうに顔をゆがませたけど、服は着ないとだめだよ。



「うぁー、おねー………」


 マイケルがキラちゃんが攫われてしまった方角を見つめる


「ねぇリオル。キラちゃんは今………」


『大声で泣いてるよ。手足を縛られているし、いきなり連れ去られたらね………あ、あと服なんだけど、僕の上着を着せてあげているよ。フードつきので助かったよ。あー、でももう神子だと勘違いされているっぽい。』



 もはやそれは仕方のないことだ。


「ふーん、わかった。それにしても、なんで盗賊団のアジトにリオルの母親がいるって思ったの?」


『あの盗賊が髪の色から関連付けて《ローラ》って言ったでしょ?

 ローラっていうのは、僕の母親の名前なんだよ。それが偶然とは思えない理由もある。

 助ける義理はないし、ずっと僕を虐めてきたから殺したくすらあるけど………

 2年前に村を紫竜に滅ぼされてから、僕はローラは死んだものだ思っていたんだよ。

 でも、フィアルも見た魔法屋のクソババアも生きていたし、もしかしたらローラもあの町で生きていたのかもしれない。僕はそれを確認したいんだ』


 リオルの中ですごい葛藤が生まれているようだ。

 リオルがどういう扱いをされていたのかは知っている。

 でも、その扱いを受けて、リオルがどういう感情を持ったのかは、私にはわからない。

 想像もできない。


 これは、リオルの問題なんだから。



『アジトに着いたら教えるよ。その時は僕の糸を辿ってきたらいい。

 ゼニスの魔眼なら僕の糸がどこに向かっているのか、見えるでしょ?』


「ああ、そうする。リオル。くれぐれも無茶だけはするなよ?」


『わかってるよ。そろそろ念話は切るね。糸は繋げておくけど、念話は距離が開けば開くほど魔力の消費がちょっと多いみたいだから。』


「うむ。………リオル。お前の村を滅ぼした紫竜が言うのもおこがましいが………聞いてくれ。」


『なに?』




「―――母親は、大事にしろ。」




『……………善処してみるよ。一応言っておくけど、僕は村を滅ぼした事についてはなにも思っていない。ゼニスには感謝してるんだから。』




 それを最後に、念話が切れた。

 リオルの方には一方通行で情報が行っているんだろう。

 合図をすれば、リオルの方から話しかけてくれるはずだ。


あと、ゼニスさんは、リオルの言葉を聞いた後、少しだけ笑っていた



「フィアル殿!」

「え!? わわっ!」



 急な呼び声に上を向くと、宿屋の部屋に残っていたミミロちゃんが私の荷物を宿屋の窓から放り投げた

 小さい身体だけど、やっぱりドラゴンは力持ちだね。

 私はそれをキャッチすると―――


「ええっと、よくわかりませんが、どこかに行くのでありますか? わちきは怖いのでここでお留守番しておくのであります!」


 異常事態を察知して気を利かせてくれたみたいだ。


「む………そうだな。ミミロ、留守番は任せたぞ。あと、コイツの世話も頼む!」


 今度はゼニスさんがマイケルの首を掴んでから、宿屋の二階に向かって放り投げた



「ふわぁあああああああああ!!」

「わわわ!! 承りました!! このミミロに任せておいてください!」


 なんとかマイケルを抱き留めたミミロちゃんは、ビシッと敬礼をした後、部屋の中に消えた



「さて、私を出しぬいた盗賊どもを生かしてはおかんぞ………フフフ」

「ぜ、ゼニス、さん?」

くぞフィアル!」

「えっと、は、はい!!」



 そして、私達は準備を整えてからリオルの糸を辿って盗賊団のアジトに攻め込むことになった。

 やっぱり、最近の私の人生ってどこかがおかしいよ!






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