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第26話 盗賊 VS ゼニス

 野営。それは危険がつきものだ。


 夜、寝ずの番をする人が居なくては野盗に襲われかねないし、魔物や害獣が襲ってきても対応できなくなる。


 そこで、ゼニスが寝ずの番をしているが、ゼニスばかりに任せるわけにもいかない。


 ゼニスは一日中飛行して移動しているし、オリハル部屋も抱えた状態で飛んでいる。

 一番疲れているのはゼニスなんだ。


 ゼニスが使用する《魔力探知》は、自分の魔力を広範囲に渡って散布することで地形や動植物の動きを感知することができる便利な技術だ。


 とはいっても、大雑把な情報しか得られない。

 動いているものであれば、大体ピンポン玉くらいの大きさが、知覚できる限界だそうだ。


 しかし、これができるのとできないのでは生存率に大きく差が出る。

 『魔力探知』ができるだけで、盗賊からの襲撃はなくなる。


 しかし、これには欠点がある。

 燃費が悪い。


 常に広範囲に自分の魔力を放出し続けなければならないため、当然のことではある。

 ドラゴンは人間よりも莫大な魔力を持っているため、燃費が悪くても何とかなるようだ。


 僕は『魔力探知』ほど広範囲を索敵できないけど、《糸魔法》による索敵でカバーできる。

 《糸魔法》の燃費はすこぶるいい。


 なぜなら、《魔力探知》のように空気中に散布する必要性がないからだ。

 それに、僕の糸はすべてが目となり耳となり手足となる。


 ゼニスには休んでもらいたいから、夜の警戒は僕も手伝うよ。という意思表示のために、テントから糸魔法を足して周囲の警戒に当てると



(………ん?)



 50m地点に、いきなり不審人物を見つけた。


(気づいたか、リオル。)


 ゼニスが僕に小声で話しかける。

 ルスカと白黒竜が寝ているため、大きな声は出さない。

 もちろん、僕だけじゃなく、フィアル先生も起きている。


 さっきまでルスカたちに本を読んでいたからね。


 僕は物音を立てないように《糸魔法》でフィアルとゼニスと僕を繋ぐ。

 さっそく新魔法による念話が役に立つ時が来たみたいだ。

 ここから先は糸魔法による念話だ。



(ゼニスさん。どうしたんですか?)


(盗賊だろう。火もつけず、夜番もせずにこんなところにテントを張っていたら、それは盗賊にとってはさぞおいしく見えることだろう。)


 その通りだ。といっても、僕たちが行っている旅は食事は現地調達でお金もほとんど持たずに行動しているから、金目の物なんて全くと言っていいほど存在しないんだけど。


 盗賊相手はしたくないなぁ。

 僕は弱いし。


 勇者物語に出てきた魔王の子であるあいつみたいにすごい剣術とかを扱えるわけでもない。

 僕は本当に魔力によるゴリ押しだけだ。


(それじゃ、どうするの、ゼニス。倒す?)


(そうだな。かかってくるようなら、潰しておいても問題あるまい。)


 ゼニスはあくまで正当防衛を主張するつもりらしい。


(何人いるかはわかる?)


(6人だ。すでに囲まれている。)


 僕も糸で確認してみる。

 距離は10mくらいに詰められていた。

 この距離になると、連携を重視して大回りにテントを囲み始めたようだ


 盗賊どもは狙う相手を間違えたね。

 なんせ僕たちは、お金なんか持ってないからね!!


(ゼニス。相手は全部任せてもいい? 僕は弱いから無理。)


(はなからそのつもりだ。)


 そう言ってゼニスはテントから出た。

 あれ? 斧槍ハルバードを持ってないけど、素手でやるつもりなのかな。

 一応籠手(こて)を付けているけど、大丈夫かな。


 ゼニスが一人でテントを出たことを確認した盗賊たちの顔は、ニヤニヤしていた。

 ゼニスを食い物にするつもりなんだろう。

 気に食わない。

 『勇者物語』の主人公と同じただのケダモノだな。


 僕の糸は、魔眼持ちか使用者本人にしか見えない。


 ゆえに、糸の気配を盗賊たちに知られずに顔を把握することができる。


 本当に、この《糸魔法》は便利だ。


 僕は接近戦でさえなければそれなりに戦える。

 この無駄魔力が続く限り、接近さえしなければ勝てる!!


 ということで、ちょっと実験。


 ごめんゼニス。一人だけ僕が細工してみる。


 糸を背後の木を通してから盗賊一人の右手首に糸を巻きつけてみた。

 右手なのは、刃こぼれだらけの剣を持っていたから。



「おい、そこ居るのはわかっているぞ。相手をしてやるから、姿を現せ」



 そうこう準備をしていると、ゼニスが軽く声をかけた。

 草原で遮蔽物はほとんどなし。しかも夜。


 その軽い声は、ルスカを起こすことなくあたりに響いた。



「ヒュー。いつから気づいていたんだ? お嬢ちゃん」


 僕が右手に糸を巻きつけた盗賊の一人が木から出てくる。

 ああ、こいつがリーダーだったのか。


「ふん。お粗末な隠密行動なんぞ見せつけおって。私でなくとも気づくわ。」


「へえ。見破られてたんだ。おい、出て来い。こいつをアジトに運んでやったらあいつらも満足するだろ。新しいおもちゃだ。ひゃはは!」


 男が茂みに声をかけると、「へへっ」とか「ひひっ」とか小物臭のする笑い声を出しながら5人の男たちが出てきた。


 下種い顔。

 下種。

 汚い。


 こういう他人に迷惑ばかりかけて、自己中な行動を取る連中が、前世にもわんさかいたなぁ。

 どちらかというと、この世界の方がそういう連中が多いのだろう。

 そろいもそろって汚い面だ。

 吐き気がする。


 僕はいつだってこういうやつらに虐げられてきた。

 そんな奴らをぶちのめせる。なんて世の中の為になることをしているんだろう。


 ゼニスが下卑た表情の連中に囲まれるも、鼻を鳴らして腕を組んだ。



「はん、私を拉致して婦女暴行するつもりか。やれるものならやってみろ、三下。」


「へへッ、立場を理解してねェみてェだなァ。死てェのなら望み通り殺してやんよォ!」


 男が手に持った剣を振りかぶる。威嚇だろう。振る気はなさそうだ。

 もちろん、そんなことはわかりきっているゼニスはとくに反応はしない。

 振られたとしても、対処するだろうし。


「おい、一応先に言っておくが、その剣は振り下ろさない方がいいぞ。お前のために言っている」


 ゼニスのなめきったセリフに、ピキピキと青筋を浮かび上がらせたリーダーの男。


「ご忠告ありがとよ! そんなに死にてェなら死ねよごらああああ!!」


 振りかぶった剣を思いっきりゼニスに向かって振り下ろした。




 『ブチィ!』という肉を切る音と共に、ゼニスの右肩から左腰あたりまで、真っ赤な鮮血に染まった




「へへっ だから言ったんだ。あーあ。やっちまった。」




 状況を理解していないリーダーがそんなことを言う




「なにをやってしまったのだ? 詳しく教えてはくれまいか」




 ゼニスがため息交じりにリーダーに問う。

 もちろん、ゼニスが血に染まってしまったのは、ゼニスが切られたからではない。

 そのリーダーの手首が切れたからだ。


 糸がするどすぎて切られたことに気付いていないんだ。


 まさかこんなうまくいくとは思わなかった。


「あ? おまえ、切られたんじゃ………」

「手首を見てみろ、三下。」

「ああん? ……………ああ? なんで―――むぐぅ!!」


 ちょいちょいとゼニスが盗賊リーダーの手首を指差し、リーダーは自分の右手首から先が存在しなくなっていた。


 もちろん、これは僕が先に糸を手首に巻いて、振りかぶった瞬間に糸を張ったから、自分の力で手首を切断させてあげたんだよ。

 剣を握った手首の方は、糸を張っていた反動で30cmくらい後方に落ちてるよ。


 リーダーが動揺し始めた瞬間。ゼニスは飛びかかってリーダーの口を押えた。



「おっと。中で子供が寝ているのだ。叫ばれてしまえば困るな。」



 ひどく嗜虐的な笑みを浮かべたゼニスがそんなことを言い放った。

 Sだ。


 ゼニスはSだ。


 人間の事が好きとか言っておきながら、結構楽しんでいる。


「ム――――――!! ウ―――――ッ!!!」


「困ると言っているであろう」


 盗賊の口を押えたまま、首をコキッとへし折った。

 ゼニスは容赦がない。



「リオルめ。すべて私に任せるとか言っておきながら勝手な真似をしおって」


 ご、ごめんなさい。



「さて、次はお前たちの番だ。かかってこい。」



 ゼニスはクイクイっと人差し指を動かして挑発する。


「こ、んの!! 死ねやああぐふっ!」


「大声を出すなと言っているであろう。」


 顎先に軽く掌底を放つ。


「後ろががら空きだぜごばっ!」


「がら空き? どの辺がだ?」


 余裕を持った後ろ蹴りで吹っ飛ぶ盗賊。


「ぜああああ!!」


 ゼニスの首めがけて一閃。

 盗賊の一人が長剣を振るったが―――


 ガギン!


「なっ!」


「残念だったな。私の籠手は、紫竜の鱗で作られているのだ。なまくら剣程度では傷もつかんぞ」


 なまくら剣を籠手でへし折った。


 鱗は硬い。名刀か剣豪でなければ傷も付かないであろう。



 ゼニスは軽く裏拳を放ち、昏倒させる。



 今度は二人係でゼニスに襲い掛かる盗賊。

 ゼニスは軽くかわして盗賊一人の頭を掴み、もう一人に向かって投げつけた。

 バカ力だ。


 もはやバカだ。


「「ぎゃっ!」」



 短い悲鳴を残し、ぶっ飛んでいくバカ共。



 これで盗賊は片付いたみたいだ。

 ゼニスは、誰一人殺してはいない。


 最初の一人は首の骨を折ってはいるが、殺してはいない。

 一生不自由な体なのだろうし、どうせ草原で転がっていたら魔物に食われておしまいだ。


 だが、殺してはいない。

 これがゼニスなりの優しさなのだろうか。

 一部は生きたまま魔物に食われる運命になるだろうが。



 ゼニスは周囲を軽く見渡し、腕を組んだ。

 僕はテントから顔を出す。


「さっすがゼニス。瞬殺だね。」


「当然だ。………ふむ。これは、早々に宿に向かった方がいいな。

 また盗賊に襲われるかもしれん。リオル、箱を作れ。」


「うん。」


 僕は言われるがままに土魔法で巨大な鉄の箱を作り、ルスカと黒竜マイケル白竜キラを箱の中に入れ、僕とフィアルとミミロも箱の中に入った。

 ミミロは寝ていた。まだ赤ん坊だし、起きている時間より寝る時間の方が多いのだろう。


 今回の箱は鉄だよ。


 さすがにオリハルコンは魔力の消費が激しすぎて作るわけにはいかない。

 オリハルコンって、100gいくらするのかな。自分で作る以外に見たことがない。


 ゼニスは、こういうことがあるから、夜のうちに飛行して僕たちを運んでいたのか。

 町や村の宿に着いたら、ゼニスにはゆっくりと休んでもらおう。



 ドラゴンだって疲れれば動きが鈍る。

 だから、今夜まで頑張って、ゼニス。







あとがき



 活動報告に画像URLを張っておきました。


 興味がある人だけ見てくだされば、私は満足です。成仏できます。


 ドエムの人は興奮できるんじゃないかな、と絵のネタバレをしておきます。



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