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受難の魔王 -転生しても忌子だった件-  作者: たっさそ
亡きミミロの為に編
19/126

第18話 ★なんでこのタマゴは、《真っ黒》なんだろう。

 目を覚ますと、真っ白な世界にいた。

 ぼんやりとした思考のままあたりを見回すと、これは雪であることがわかった。

 それを認識したとたんに、急速に体が冷えてきた。


 でも、体がなにか暖かいものに包まれている感触があった。

 もぞもぞと体を動かすと、僕の手がなにか柔らかいものを掴んだ。

 これはなんだろう。


「ひぅ! ううん………すう………」


 ゼニスのおっぱいだった。

 なるほど、やわらかい。


 そしてあたたかい。


 ようやく思考がまとまってきた。

 ゼニスは僕とルスカを抱きしめた状態で気を失っていた。


 ルスカは無意識だったのだろうけど、僕の左手をずっと握っている。

 《魔力譲渡》の時に握ったまま離していないんだ。


 《魔力譲渡》………そうだよ! 《魔力譲渡》したんだ!


「ミミロは!?」


 ガバッと体を起こしてあたりを見回す。


 ルスカの手を離して、ゼニスから離れる。

 途端に冷気が体を突き抜けて身震いする。

 低い気圧のおかげで酸素が薄い。頭が痛くなってきた


 こめかみを押さえながら、ほんのすこし回復してきた魔力で《糸魔法》を発動し、空間を認識する。


 ミミロの姿がどこにも見当たらない。


「ミミロ? どこにいるの?」


 あたりは紫竜が力尽きてその辺でぐったりしている。

 その数53匹。糸魔法で数を調べた。


 ゼニスとミミロを除いた紫竜全員が、ここで倒れていた。

 なんで倒れているのかはわからない。

 でも、全員生きていた。だから今は放っておく。


「ねえ、悪い冗談話やめてよ。どこかに隠れているんでしょ?」


 強い風が吹き抜け、ヒュゥゥゥゥゥオオオオオオオ! という音を立てる。

 返事はない。


「あはは、お、驚かせようとしても、隠れていることなんてわかってるんだからね!」



 僕は何かに怯えるように、大声を上げてミミロを呼んだ。

 帰ってくる答えは、ない。糸魔法に反応もない。


 いつしか僕は、ミミロがタマゴを産み落とした場所までたどり着いた


「これは………」


 そこには、赤黒い血にまみれたタマゴ。血と体液が付いてほんのりピンク色をしたタマゴ。そして、なにやら《濃い紫色のタマゴ》が落ちていた。


 最後のタマゴには血が付いていなかった。


 なぜかそれが不気味に思えた。


 それに、色竜カラーズドラゴンのタマゴは《肌色》のはずなんだ。

 最初から《濃い紫色のタマゴ》なんて見たことがない。


 何かが怪しい。

 いったい、何が起こったのかわからない。


 タマゴがあった場所には、ミミロは居なかった。

 ミミロが居た痕跡は残っている。

 雪に足跡が残っているんだ。


 なのに、飛行したり移動したりした痕跡がない。

 翼を使って飛行したなら、少なくとも周りの雪がそれなりに散っていてもおかしくないんだ。

 なのに、ミミロが居た場所には、まるでそこからミミロが消えたかのように、何もなくなっている。


 不安が押し寄せる。


「あしあと………ミミロの足跡をさがそう!」


 紫竜の足跡の中で、ミミロの足跡を探す。


 ミミロの足は他の紫竜より小さい。


 見分けがつきやすいはずなんだ!


 きっと、どっかにいる。

 僕たちを驚かせるためにどこかに隠れているはず


 僕はそう信じて地面の雪を見ながら歩き続ける


 ミミロはゼニスに頂上まで連れてこられて、そこから動いていなかった。

 だから、一歩でも動いていたら、ミミロの足跡がどこかにあるはず、念入りに探そう。


 糸魔法を地面に向けて伸ばし、ミミロの足跡を広範囲で探す


「なんで………っ!」


 でも、見つからない。

 どこにもない


「ミミロー! ミミロ、どこにいるのー!? 出てきてよー!」


 不安がどっと押し寄せてくる。

 ミミロがどこかに行ってしまった。


 せっかく………せっかく、仲良くなってくれたのに


 いなくなってしまった


「ミミロぉ………」


 3つのタマゴがある場所で膝をつく。

 ミミロは最後のタマゴを産める体力は残っていなかったはずだ。

 ミミロの魔力も、すでに底をついていた。


 だから、ミミロはおそらくもう………



「こんな、タマゴなんてっ!」

『早まるな!!』


 僕は拳を振り上げ、タマゴに向けて叩きつけようとすると、紫竜戦士長のテディがそれを制止した


 ミミロのタマゴはテディとの子でもあるんだっけか。

 テディも起きたばっかりなのか、すこしフラフラしている様子だった。


「起きてたの………? そうだ、ミミロは!?

 ミミロはあの後、どうなったの!?」


『ミミロは………消滅した。』


「は?」


 なに、言ってるの?


     ああ、分かった。テディも僕を驚かせようとしているんでしょ


  いたよいたいた。


      前世でも冗談半分嫌がらせ半分で僕にラブレターを送ってきた人とか。

罰ゲームとか

         そういうたぐいの


   冗談

        なんでしょ?



 視界が歪んだ。


「ちょっとよくわかんないなー。消滅?

 ははっ、あるわけないよ。あんな巨体が、いったいどこに行ったっていうのさ」


『どこかに行ったわけではない。消滅、したのだ』


 ギリッ と歯を食いしばる音が僕にまで聞こえた

 その表情は後悔と無念に染まっている


 その顔で、それが事実であると、物語っているのがわかった。


 眩暈がした。


 後ろによろけて、尻餅をつく。


「そんなバカなことがあってたまるか! 僕は信じない! 絶対にミミロはいるもん!

 ミミロー!! 返事くらいしてよ!」


 涙が頬を伝った。

 すぐに凍ってしまい、ほっぺたが痛くなる


 それでも、僕はミミロを呼び続けた


『無駄だ』


「無駄なことなんてあるか!! ミミロは僕の友達だ! いなくなるなんて………」


 そんなの、いやだよ………


「ミミロ!! ねえ、どこかにいるんでしょ!? 何とか言ってよ!! ミミロ――!!」



 僕が大声でミミロを呼んでいると、他の紫竜の意識が戻ってきたようだ。

 ゼニスとルスカも、もう目を覚ましている


 ゼニスがこちらに歩み寄ってきた。

 ルスカはまだ少しだるそうにして、ゼニスに抱かれていた。


「リオル! ミミロは」


「うるさいうるさい!! なにも聞きたくない!! きっとどこかにいるんだ、隠れているだけなんだ!!」


「ミミロは、魔力と生命力をタマゴにすべて」


「何も言わないでよ!! ミミロ、隠れてないで出てきてよー!!」


「私達も全力を尽くしたが………ミミロは魔力も存在もすべて最後のタマゴに食われてしまった」


「嘘だ!! いい加減にしてよ、いくら僕でも怒るよ!」


「嘘ではない! 私は、この魔眼で、見たのだから。」


「そ、そんなこと………」


 信じられる、はずがないじゃないか


 この間まで一緒に追いかけっこしてたんだよ?

 そんなミミロが、消滅だなんて………


 子供を産んで、幸せになるはずだったのに


「なんで、僕はいつも、大切なものを取られないといけないんだ………

 僕が、いったい何をしたっていうんだよ………」


「リオル………」


「うぅ………うわああああああああああああああああああああああああん!!」


「りお、どこかいたいの? みみろ、どこかにいったの?」


「るすか………ルスカぁ………ミミロは………うぅううう! 」



 ゼニスに抱かれながら、僕に手を伸ばすルスカ。

 まだ起きたばっかりで状況を把握していないんだ。


「こいつらが………こいつらがっ! このタマゴがミミロを殺したんだ! ここで叩き割って!」

「叩き割ったら、ミミロが戻ってくるのか。」


「そうじゃないけど、そうしないと」

「落ち着かないのだろう。だが、命がけで産んだミミロのタマゴを、そんな簡単に割ってもいいのか。」

「うぅ………」

「冷静になれ。ミミロを救えなかった気持ちは、皆一緒だ。」


 ゼニスは右手でひょいと僕を持ち上げると、抱きしめた。

 そして、僕の耳元に口を寄せ、安心させるように囁いた。


「タマゴを持って、里に戻ろう。」


「………………うん。」


 小さく頷き、ゼニスに降ろしてもらう。


 スイカよりも一回りおおきな赤いタマゴを、僕は一つ抱えた。一番血まみれの奴だ。

 ルスカもピンク色のタマゴを抱える。

 ゼニスは濃い紫色のタマゴを抱えて、戦士長テディの背中に飛び乗った

 僕とルスカもテディの背中に飛び乗った。


「テディ、疲れているだろうが、頼む。」


『わかった。落ちるなよ。』


「ふっ、それが族長に言う言葉か。」


『てめぇにじゃねぇよ、カス。』



 軽口をたたきながら、テディは山を下った。

 他の紫竜も、疲れた体に鞭を打ち、紫竜の里に帰還する。


 この際、僕の知ることではないけれど、アルノーを採取していた冒険者たちはいっせいに戻ってきた紫竜たちを見て腰を抜かせていたらしい。

 紫竜の里に入り込んだ冒険者もいたが、特に相手にはしなかった。

 いくつかの住処から財宝が盗まれていた程度だったため、今はそれに掛ける余裕はなかったのだ。


 幸いなことに、里にあるタマゴは盗まれていなかった。



 里に戻ってから、近くに流れる雪解け水でタマゴを洗う。

 血が付いたままだったら、タマゴも気持ちが悪いだろう。



「ミミロ………ぐすっ………ん?」


 タマゴを洗っていると、違和感に気付いた。



 最後のタマゴが《濃い紫色》だったのは覚えている。ミミロが消滅して、タマゴだけが残ったから血が付いていなかったんだろう。

 だけど、タマゴが紫色なのは見たことがない。異常だ。


 最初に産んだタマゴは、血まみれだった。

 それを僕が今、血を洗い流している最中だ。


 あの時は本当の色なんて見えなかったけど、紫竜のタマゴと言えど、色竜カラーズドラゴンのタマゴは《肌色》で統一されているはず。


 なのに………





 なのに、なんでこのタマゴは、《真っ黒》なんだろう。


 あとがき



 特筆することも無いのであとがきもさっさとおわります

 フィアル先生の画像を乗っけます


エメラルドグリーンの髪にポニテです





どぞ




挿絵(By みてみん)


 いつものように、画像クリックでしょーもないおまけが見れます



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