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第17話 魔力譲渡



 紫竜序列最下位であったミミロが産卵をするらしい。

 というわけで僕たちは今、アルノー山脈の頂上にやってきている。


 紫竜のタマゴは頂上で産むっぽい。


 竜のタマゴについてはまだなぞが多いからなんとも言えないけど、竜だって感情はあるし、自分のタマゴは自分で守りたいから頂上に隠さずに紫竜の里で暖めたりすることもあるらしい。


 そういうタマゴでも、紫竜の魔力を吸収して、紫竜が生まれることになるって言ってた。

 でも、頂上で紫竜のタマゴだと確定させるために放置をしていると、盗まれる可能性もあるし、紫竜の里で育てているとタマゴの環境が高高度ではないので、それに一番近い環境である赤竜が生まれてしまうことがあるとかないとか。


 僕も詳しくは分からない。


 ただ、最初からタマゴを自分の魔力を注ぎながら温めていると、早くタマゴが孵るみたいだよ。


 ちょっと違う竜が生まれる可能性があるけど。


「みみろ、がんばるのー!」

『グルルゥ』


「ミミロ、落ち着いて、ヒッヒッフー!」

『グル、ムフーッ』


 紫竜たちに囲まれて生命の神秘を見守る僕たち。


 神経質なドラゴンの、産卵の瞬間を見ることができた人って、僕たちくらいしかいないんじゃないかな


 普段はミミロを虐めている紫竜たちも、産卵の時はさすがに固唾を飲んで見守った。

 なにも紫竜全員で集まって産卵をすることは無いのだけれど、紫竜の個体数が少なくなってきていて、タマゴは大歓迎だからみんなでお祝いをするんだよ


 こういう日はゼニス秘蔵の樽酒を竜のみんなで一気飲みするってゼニスが言ってた。

 竜はお酒も好きなのか。


『グル、GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』


 突如ミミロが絶叫を上げた


「ぜ、ゼニス、大丈夫なのあれ、すごく痛そうだよ!」

『うむ。ちとミミロがタマゴを産むのは早すぎたかもしれないな。まだミミロは4歳なのだし。』

「ミミロ同い年かよ!」


 たしかに他の竜に比べて体は小さいし若い竜だとは思っていたけど、まさか4歳だったとは


 竜の成長って早いんだね。そして、えっと………紫竜の戦士長テディはロリコン?

 戦士長で上位の竜だからゼニスと同じように数百年単位で生きているだろうし。

 でも、犬とか猫って1年くらいでもう大人だし、そんなもんなのかな。


「がんばって、ミミロ!」

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』



 それにしても、なんかミミロの様子がおかしい。

 なんというか、痛いというより、苦しそうなんだけど………

 紫竜の産卵って、こういうものなのかな。



「む? なにやら魔力の流れがおかしいな。」


 ゼニスが魔眼でミミロの様子を観察する

 ゼニスの目にも、この様子は少しおかしなものだったらしい


「ゼニス、なにかわかった?」


 僕はゼニスの背中から落ちそうになり、ゼニスに持ち直してもらう。

 そうだよ。ずっとゼニスにおんぶされているんだよ。

 ルスカはゼニスに抱っこされている。


「よくわからんが、なにやらまずいことになっているようだ。ミミロの腹の中に、魔力の塊が3つほど見える。おそらく、それがタマゴだろう。………しかしおかしいな。紫竜は普通、タマゴを1つしか生まぬ。多くても2つまでだ。3つもタマゴを産むというのは、初めてだ。」


「よくわからないよ、僕は紫竜の生体には詳しくないんだから。なにがどうなってるの?」


『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』



 再びミミロの大絶叫


 紫竜たちもその雰囲気に飲まれてあたふたし始めた


「マズイ! ミミロの魔力がタマゴにどんどん吸い取られていく! このままではミミロが死んでしまう!」


 竜の産卵には、魔力を使うらしい。

 ミミロのおなかには3つのタマゴがあり、ミミロの魔力じゃそのすべてに魔力を与えることができないんだ。


「な! ど、どうすれば! そうだ、僕がミミロに《魔力譲渡》を行う、それでなんとかならない!?」


「わからん、やってみてくれ!」



 僕はゼニスの背中から飛び降りて、《ブースト》を使ってミミロの背中に飛び乗る。

 フィアルに教えてもらった《魔力譲渡》 これをミミロに使用すれば………

 僕は魔力だけなら腐るほど持っているらしいし


 ミミロの背中に両手をついて、僕のありったけの魔力をミミロにつぎ込む


『グルゥ、グゥゥ………』


 訳すと、『ありがとう、リオ。』


「礼はいいから、集中して! 僕も精一杯手助けするから!」


 有り余る僕の魔力をすべてミミロに与えるくらいの気持ちでミミロに魔力を与え続ける


「ゼニス、タマゴは!?」


「うむ、まだだ、まだ足りん!!」


「うそぉ!!? 僕もう半分くらいしか魔力も残ってないよ!?」


 僕の魔力は神や魔王に匹敵するとゼニスが言っていた。

 それなのに、そんだけ魔力を注いでもまだ足りないというのか!


 《魔力譲渡》は魔力を人に与えることができるけど万能じゃない。

 どんなに頑張っても、例えば10の魔力をミミロに与えようとすると、3は空気に溶けてしまい、残りの7をミミロに送ることができる。

 僕は余りある魔力で消費を気にせず、強引にミミロに魔力を与え続けた

 半分くらいは無駄にしちゃっているかもしれない


「りおー! だいじょうぶー?」


 ルスカがゼニスに抱っこされた状態から僕に向かって声をかけてくれた


「けっこうやばい! ミミロ、早くタマゴを産んでよ!」


『グル、GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』



 訳すると『無茶言わないでよ!』

 知らないよ、僕の魔力が底をついちゃう!


 あ、そうだ、自分に掛けている闇魔法を打ち切ろう。

 もはや無意識に1.2倍の重力を掛けるようになってしまって、集中しないと闇魔法を解除できなくなってしまっている


 闇魔法を打ち切り、さらに魔力を注ぐ。


『グルガ、がふ………』


 訳すと『まず一つ、産んだよ………』


 ミミロから手を離して地面を見てみる。

 スイカのような大きさの、血が付いた真っ赤なタマゴが落ちていた。

 後二回、だよね。もうやばい、そろそろ魔力が付きそう。すこしは余裕を持たせておきたいのに



「ゼニス、なんでミミロはこんなことになってるの!?」


「わからん! 私も初めてだ!」


「くそっ! ルスカ!」


「なーにー?」


「ルスカもこっちに来て! 魔力が足りない!!」


「は~いなのー!」



 ルスカはゼニスに降ろしてもらい、《ブースト》でミミロに飛び乗った。

 さすがに疲れた。まだ魔力に余裕はあるけど、ちょっと尋常じゃないくらい疲れている

 ルスカに交代してもらいたい


「るー、《魔力譲渡》できる?」

「りおにおしえてもらったの♪」


 大丈夫だ。ルスカも相当な魔力を持っている。

 ルスカもミミロに両手を当てて、《魔力譲渡》を行う


「なぜだ………魔力を与えるそばからほとんどタマゴに吸収されていくぞ!」


 魔眼を使用しているゼニスが状況を教えてくれるけど


「なにそれ! どうすればいいの!?」

「わからん、ルスカの魔力でも足りぬかもしれない!」

「むー!」


 ルスカはおもむろに僕の腕を掴んだ

 ルスカは右手で僕の腕を掴み、左手でミミロの背中に触れる。


「るー。なにを」

「りお、ごめんね」


 その瞬間、僕の魔力がグイグイとルスカに吸い取られる感触を覚える

 な、なんだこれは………。《魔力譲渡》の反対の事までできるのか、ルスカは!


 これは、《魔力強奪》とでも言える技術だろうか、むちゃくちゃだよルスカ!



「ぜー………ぜー………。もう、やめ………」


 休憩したかったのに、余った魔力をほとんど持っていかれて魔力枯渇を起こしてしまった

 もうすっからかんなのにルスカは吸収しようとして、僕の体力がどんどん失われていった。頭が痛い………吐き気がする

 ルスカは僕よりも上手に《魔力譲渡》を使用し、およそ8割。ミミロに魔力を渡していた。

 それも、僕の魔力で。すべてルスカを介してミミロに届けられてしまった


「ああん、ごめんね、りおー。あとはるーがやるの!」


 最後に、ルスカ自身の魔力をほとんどつぎ込んだところで、2つ目のタマゴが産まれた。


 そこで、僕とルスカは気を失ってしまった。







 ――― ゼニスSIDE ―――







 なんだ、いったい、何が起こっているというのだ。


 今しがたミミロが2つ目のタマゴを産んだ。


 竜はタマゴを産む時に自身の魔力をタマゴに注ぐ。

 ミミロはまだ若い。魔力量もさほど多いものではないだろう。


 それなのに、3つもタマゴを産めるわけがない。

 一つのタマゴを産むだけでも大半の魔力を持っていかれるのだ。

 だというのに、3つもタマゴを産むとは………



 このままではミミロの命が危ないな。

 タマゴは生まれるまで魔力を奪い続ける。

 魔力が枯渇してなお、生命力から奪い続ける。


 今まではミミロの足りない分をリオルとルスカが補ってくれていたが、それにしてもタマゴに使われる魔力量が多すぎる気がする。


 いったい、どういうことなのだろうか。


 ミミロが二つ目のタマゴを産んだ時点で、ルスカとリオルが気を失って、ミミロの背から落ちてきた。


 私は慌てて二人を抱き留める。



 これで、ミミロはあと一つのタマゴを産むわけだが、魔力を供給してくれるものがいない。

 それに、ミミロ自身の魔力はもう尽きている。


 最後のタマゴもミミロも無事では済まないかもしれない。



「聞けぇみんな! これから我々でミミロに《魔力譲渡》を行う! こんな小さな子たちがここまで頑張ったんだ、決してミミロを死なすな!! 命令だ!!」


『『『『『 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!! 』』』』』


 私はフィアルやルスカ、リオルのように器用に《魔力譲渡》を行うことはできない。

 大半はうまく譲渡できずに空気中に魔素として霧散してしまう。


 だが、総勢54匹の紫竜で集まってそれを補てんしてやれば………


「行くぞ! やり方は見て覚えろ!《魔力譲渡》!!」



 そして私も、気を失うまで魔力を使い続けた。





あとがきん


 お気に入り登録件数が4345人になりました!

 これもひとえに読者様方のおかげです。まことにありがとうございます!


 もうすぐ100万PV そして12万ユニーク突破。

 もう感謝しかございません。まことにありがとうございます


 絵師さんと族長たちについて話しているときにフィアル姉さんの絵をいただきました。

 次回乗っけます。かわいいです。エメラルドグリーンの髪にポニテです。


 さすがにフィアル姉さんに変なあだ名は付きませんよ。

 付きません………よね?


 へ、変なあだ名をつけたらだめなんだからね!


 ではでは。また次回、お会いしましょう


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