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第123話 真偽官





 翌日。

 事態が事態なだけに、学校はお休みだったが、

 僕とルスカ、ラピス君やファンちゃんといった、面々は事情聴取のために学校に呼び出されていた。


 騎士団の駐屯地かどっかでやるのかと思ったけど、そんなことは無かった。


 学校の教室の1室を貸し切ってる感じかな?



「失礼します。」


 と、みんなで挨拶してから教室に入る。



 フィアル先生と僕とルスカとファンちゃん。ラピス君も一緒に居るよ。



 さすがに子供一人対騎士なんて、緊張しちゃうだろうからっていう先生の忠言と騎士団の配慮によるものだね。


 いや、実際かなり緊張しているけどね。

 僕ってばほら、魔王の子だし、ばれたら切りかかられそうだし。




「………。」


 と、思っていたら、一緒に格闘武術を学んで学校にも通ってるアルンやリノンより3歳くらい年上?

 13歳程度の女の子が神官服? かなんかを着て教室の後ろの方に立っていた。



「2年赤クラス担任、フィアル・サックです、失礼します」


 そう言って入って来たフィアル先生も、少女を見て、目を丸くしていた。



「ああ、私は本日面談を担当させていただくグリッドです。本日はよろしくお願いいたします。」


 と、丁寧に胸の鎧に拳を当てて敬礼した。


「それでは昨日のことについて詳しい話を聞きたいんだ。早速始めてもいいだろうか?」

「ええ………その前に、その子は………? ウチの生徒ではなさそうですが………」

「そうだな………彼女は南大陸にあるリリライル王国出身のみならい真偽官サチ様だ。今回はリリライル王国の第二王女も被害にあわれていたため、急きょ転移陣で南大陸からこちらの学校へ彼女が派遣されてきました。わたし自身驚いておりますよ。彼女のおかげでアントン教諭が逮捕で来たといっても過言ではありませんからね」

「そ、そう………ですか。」


「サチ、と、モウシマス、ヨロシク、デス」


 ペコリと頭を下げるサチさん。

 緊急で挨拶を覚えたのだろう、サチさんがしゃべったのは片言の中央大陸人間語だった。

 隣にいる若い女の人は通訳の人かな。南大陸と中央大陸のバイリンガルか。


 一応僕も東大陸と竜言語をマスターしているけど、南大陸語はわからないな。




 それにしても、真偽官か。予想外の想定に対して、僕は知っている。

 こういう時は人を頼るってことを。


『ラピス君。真偽官ってなにかわかる?』


 この中で最も頼りになるのはラピス君だ。

 ラピス君なら魔眼の力でどうにかできる。


 僕は即座に繋いでいた糸魔法から念話を行い、意思の統一を行うことにする


『真偽官ってのは名前の通り嘘を見破る人間ってことだろうね。ちょっと鑑定眼で見てみたけど、彼女、魔眼持ちだよ』


『魔眼………大丈夫なの?』


 と、ファンちゃんが心配そうにこちらを見た。


『わからないけど、真偽眼は嘘を見抜く力がある。当然僕も持っているけど、彼女は真偽眼だけだね。アリスおねーさんとか僕みたいにメデューサの血を継いでいるならともかく、普通持っている魔眼なんて1つがせいぜいなんだから』


『真偽眼をかいくぐる方法はあるのかしら?』

『ウソをつかないこと。嘘をつかずにごまかすことは可能だよ。その時は本当でも、時間がたったらかわる気持ちなんかその時に答えが変わったりするよ。』

『つまり、一つの質問に一つのうそかほんとかが判るだけってことなの』

『そんな感じだね。魔眼を発動しっぱなしにすれば2,3回の質問くらいはされそうだけど』

『了解。フィアルもそういうていでよろしくね』

『わかったわ』


 こちらの方は向かずに頷くフィアル先生。

 しかし、ウソをつかずにごまかす。そういう方法も取れるが、相手が『はい』か『いいえ』でしか答えられない質問をしてきた場合、それはごまかすことが不可能になる。



「アントン先生も彼女………真偽官の前では嘘が付けませんでしたからね。」


「真偽官………すごい人なんですね」


「私だって最初は半信半疑だったがね。こんな小娘が、と。しかし、我々が一言『毒物の混入に関わっていますか』と質問しただけで、アントン先生はしらばっくれたのですが、彼女が首を横に振るだけでアントン先生は即捕縛となりました。」


 やはり、『はい』か『いいえ』の答えでウソの判断をするのか。


 魔眼ってのはラピス君やゼニスの例があるから知っているけど、持っているだけでズルイな。

 強力な力が多すぎる。


 真偽官のサチさんはガチガチに緊張しているのがわかる。

 


「そ、そこまでの信用があるのですね。真偽官が虚偽を述べていた場合は?」


「みならいとは言え、彼女は優秀な真偽官ですから。そもそも真偽官が嘘偽りを述べることを禁止されております。それに、真偽の最中、彼女は音は聞いておりません。耳栓をしてもらい、嘘かどうかだけわかるのです。それにそもそも、彼女にはこの国の言葉はまだわかりません。」


 真偽官本人に質問の内容を聞かせないことで、真偽官には質問がわからないようにしているようだ。

 だから、何の質問がウソかどうか、真偽官自身にはわからないのだ。

 しかも、ここは彼女にとって外国で、大陸すら違うため、当然ながら言語が違う。

 そもそも彼女は僕らの言葉はわからないんだ。


 わからないのに嘘をついているかだけはわかる。

 魔眼ってすごいな。



「それって、声もきかずにどうやって嘘かどうかがわかるのかな?」



 ラピス君が首を捻りながら騎士の人に質問をする。

 子供の純粋な好奇心を演じているが、知っているくせに聞いているラピス君あざとい。


 真偽官の目の前で堂々と知らないふりをする胆力よ。


「それはリリライル王国の王宮真偽官の秘密だから教えられないそうだ」


 

 なるほど。魔眼であることは隠すということか。

 魔眼だけじゃなく、メンタリスト的に相手の表情などから読むスペシャリストなども居そうだね。



『タネは割れてるけどね。ちなみに真偽眼には、弱点があるよ』

『教えて、ラピス君』

『勘違い、だよ』



 ラピス君が補足をするように念話を送って来た。

 なるほど、本人が本当だと思っていたことが実は嘘だった場合またはその逆か。


 サチという真偽官は絶対の自信を持って臨むはずだ。

 自分の魔眼が間違ったことを言ったことはないと。


 しかし、ラピス君が気づいた通りのことを、真偽官が気づいていないということはあるだろうか。


 自分の能力だ。何ができて何ができないか。どこで矛盾が発生するか。

 それを検証しないわけがない。

 そんな僕の表情をみて、ラピス君は一言


『………大丈夫じゃないかな。』

『………?』


『魔眼っていうのは、便利な反面、魔力の消費が激しいんだ。僕の見たところによると、サチさんの魔力はさほど多くない。無駄遣いはできないんだよ。』



 魔眼が暴走しがちなラピス君はよく魔力欠乏でフラフラになる。

 以前は無理をして眼から血が出たこともあったね。


 古代種ではないのに、ルスカと同等レベルの魔力を持つラピス君でさえ、何度も魔力欠乏を起こすのだ。

 そうそう無駄遣いはできない。


『彼女の推定の魔眼使用限度は?』

『3回だね。断言する』


 と、ラピス君が申しておるので信じよう。

 ラピス君はおそらく複数ある魔眼のうち、鑑定眼や魔力眼の魔眼をつかってまだ余裕があるラピス君は十分すごいんだよね

 知ってた。


 魔眼は嘘が判るだけじゃなく、本当もわかる。 曖昧はわからない。3つに分類できるだけで魔眼というのがいかにズルイものか再確認できる。




 ま、こそこそ話を堂々と念話でできる僕が言えたことじゃないけどね。



「それでは昨日の毒物事件についてのことを、質問させてもらうよ。みんな、椅子に座っていいからね」


 僕らが子供だからか、騎士の人もやわらかい物腰だった。

 そういうなら、椅子に座らせてもらおう。


 騎士の人と向かい合って座る。ちょっと緊張しちゃうな。


「確認させてもらうんだけど、みんなの名前は、ラピスドットくん、リオルくん、ルスカちゃん、ファン・リョクリュウちゃんだね」


「うん」

「はい」

「そーなの」

「………(こくり)」


 まずは名前の確認をして、それぞれの返事をする。ファンちゃんはやはり人と話すのは苦手だから、コクリと頷いて肯定した。


「昨日の、毒が混入されてた時に、一番最初に気付いたのは、ラピスドットくんだったね?」

「そうだよ」

「君のおかげで最悪の事態は防げた。ありがとう。礼を言わせてもらうよ。でも、どうして気付いたんだい?」


 当然だね。僕らみたいな子供が、普通気付くわけがない。


「んーっとね、ボクはこの魔法騎士学校に通わせてもらっているけど、魔法を使うことができないんだよ」

「ん? 続けて?」

「ボクは魔眼持ちだから。鑑定眼を持っているんだ。だから毒が混入していることに気付いたんだ。」

「そうなのかい?」

「うん!」


 余計なことまでは喋らない。教師陣も知っていることだけだ。

 騎士の後ろに控えている人が、質問内容や受け答えをメモしているのが見える。

 真偽官のサチさんは今のところ動きはない。



「なるほど。」


 魔眼持ちはかなり希少だが、いない訳ではない。

 そして、魔眼持ちが属性を持たないのは有名な話で、一般的に使われている属性魔法を使うことができない、と。

 不便もあるが、魔眼自体はかなり優秀であるため、使いこなすことができれば一生お金には困らないだろう、ということも。


 おそらく、サチさんもその魔眼のおかげで真偽官なる職に就いているのだ。

 真偽官は真偽眼を持っているのが絶対条件なのか、相手の挙動から嘘を見抜くのかはわからないが、魔眼の力のおかげで真偽官をしているのは間違いないだろう。



「それじゃあ、今度はリオルくん。」


『きた!』



 ラピス君からの合図。

 サチさんの魔眼が発動しているらしい。


「今回、キミの食事にだけ致死量の毒が混ぜられていたんだ。アントン先生に嫌われるような心当たりはあるかい?」


 んんんんんんっ! はいかいいえで答えさせる絶妙な質問!


 魔眼の発動さえなければ『わかんない』と答えるところだけど


「うーん」


 考えるそぶりで時間を稼ぐ。

 心当たりはあるんだよ。サナの件だ。

 アントン教諭はサナを孤児院から買い取ろうとしていた。それを力技で阻止しようとしていたんだ


 アントン先生の取り調べでどのあたりまで調べてあるのかがわからない。



「あります。なんか僕、インチキ小僧って呼ばれているみたいだし、嫌われてるみたいなんだ。アントン先生に」

「インチキ小僧?」

「はい。そうなんだよね、フィアル先生?」


 と、ここでバトンをフィアルにパスする。

 孤児院の一件は一切言わずに、『インチキ小僧』という単語を強調してそう呼ばれているという本当のことを話した。


 『魔眼、切れたよ』とラピス君の合図でひとまず乗り切る。

 騎士の人もフィアルに確認の視線を送ると



「ええ。リオルは入学時点ですでに魔力の操作ができるので、編入の際には水晶に触るのですが、触るときには光らず、触って少ししてから光らせる、という魔力操作を行って、多少魔力を操れると自己アピールしたのですが、どうにもアントン先生にはそれがインチキのように見えたようで………。インチキでないことは学園長も認めております。」

「なるほど。」


 騎士のグリッドさんが手元の資料に何かを書き込む。

 

 どうやら本当のことでごまかすことには成功したようだ。



 



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