第5話 父と母
侵略者≪招かれざる者≫
世界を震撼させたあの日 西暦21XX年
世界各地に今まで海外の映画や漫画などで見られてきた空想の中での生物たち。一言でいうと化け物が姿を現した。ボクの住む日本にも例に漏れず出現した。
そんな襲撃は全くの予想外である。そんな中統制のとれた避難や行動がとれるわけがなかった。
地面から出てきた化け物はゆっくりとした動きで立ち上がった。その姿は首が異様に長く牙が目に見えて鋭くとがっていた。大きさは近くに立ててある普通の一戸建ての家を軽く凌駕していた。
目がない顔を空に向けてその化け物は雄たけびを上げた。
後から聞いたが同時刻の同じ瞬間にすべての化け物たちが空に向かって吠えたらしい。その異様な叫びはこの世の終わりを連想させるには十分だった。
その時は必死だった。逃げ惑う人は我を忘れて自分一人逃げ惑い化け物はその人たちを追いかけては食べる。それは今までの生活からは考えられないもの。立ち止まりその光景から目を離せないボクを父さんと母さんは抱きかかえて必死で逃げた。
だけど僕たちの前には逆からも化け物が来ていた。ボクは近くにあった車の下に隠れてなさいと言われた。「すぐに帰ってくるから。目をふさいで耳を手に当ててなさい。」いつもの様に優しく言った。
その後はひどい爆音と同時にボクは軍人の洋服を着た人に保護された。連れられてきたのはけが人や人を探している人がたくさんいる場所だった。
「父さん。母さん・・・。」
結局迎えには来てくれなかった。あの約束は十年たった今も果たされていない。
これからずっと果たしてはくれないだろう。だってここには父さんと母さんが埋まっているから。
何もわからないボクをたった一人となった家族のおじいちゃんは死に物狂いで探してくれた。そこからはおじいちゃんの仕事のせいもあってか一人暮らしの生活だ。
しかし知らせは絶望を与えるだけではなかった。
雄たけびが静まった一瞬の後急激な突風が世界を襲った。その風のせいだと科学者たちが声を上げて調べているが未だになんの成果も得られていなかった。
当時開発していた戦闘用未来兵器 『The Last Fort Armer』通称LFAは高い性能秘めながらにして動力源がなくその開発は多くの反対もあり撤廃する予定だったが、その現れた直後テストパイロット(研究員)が機体に乗ったら起動を開始。
戦車や戦闘機を使い応戦していたがそのLFAが迎撃に向かってからは被害は格段と落ちた。同時に研究をしていた各国もLFAを起動に成功して鎮圧を行った。
世界に与えた被害は甚大だった。
日本は47都道府県のうち軍の基地が近くにあるところ以外は修復に半年はかかるのではといわれるほどの被害が出ており、鎮圧をいち早く優先した区域も被害は決して少なくない。
アジアの地域は比較的に科学技術も発達して起きた際が太陽が昇っていた時だからよかったが、夜の所は最悪だったそうだ。被害が尋常ではなく人の死亡率も群を抜いた。
その中でも一際驚くニュースがあった。アメリカ。世界で最大の力を有する国。そこを奴らも分かっていたかのような数を配備していた。その中避難シェルターを地下に機密に作ってあったのが功をそうしたのか人の非難は速やかに行われたが軍のすべてが陥落した。
アンデス山脈付近に奴らは巣を作った。アメリカは持てる最大限の核を積んで巣に落としに行ったが山の原型がなくなっただけに終わった。被害はちゃんと及ぼしていたがその作られた穴から屍を踏んで絶え間なく出てくる化け物達。アメリカはその領土を捨てなくてはならなくなった。
『ウ~~~~ウ~~~~ウ~~~~~~』
ここに来るといつもあの時からのこと長々と思い出してしまう。それほどにも5歳児のボクにとって、あの時被害を受けた人にとっては衝撃的なことだった。
「二日連続で来るなんて・・・あんな奴らボクが殲滅してやる。」
『侵略者が第四地区から第六地区に確認されました。住民の皆さんは速やかに避難シェルターに移動してください。繰り返します・・・』
「嘘!この区域に来るなんて。早く家に戻らなくちゃ。」
侵略者が二日連続で攻めてくるのも滅多にないけどこの区域に出没したのは初めての事だ。みんながちゃんと非難してくれることを祈ろう。
花束を置きすぐに出口へ向かおうとするが違和感に気づいた。この今きている霊園はドーム型になっており昼は天井が開き、夜は天井が閉まって電気をつけている。そして今もそれはつき続けていた。
普通ならば避難命令が出されたらこういう建物は自動で電気が消えるようになっているはずなのにそれが消えていなかった。
「なんで・・・。」
その呟きと同時に鈍い地鳴りがした。ドアをくぐり外に出ると昨日襲ってきた侵略者とは違う、だけど見たことのある姿をしている侵略者だった。
「あっ・・・・あ・・ああああああ。」
そこにいたのは最初に目にしたあの忌まわしき侵略者。コード α≪アルファー≫がいた。
いつもなら機体の中から画面を通してみるがこのしたから見上げる感じ、そう・・・最初に見たときの記憶がフラッシュバックしてきた。だめだ。足が震える。
〈グガがギぐがあがが〉
分からない言葉を言いながら長い首を後ろにひっこめた。狙いを逃がさないため勢いをつけるためにやる動作だ。何回も見てきたからわかることだがそれを頭で理解しても体が恐怖によって動きそうになかった。
「うっ・・・父さん・・母さん。良い子にしてたよ。ずっと待ってるんだよ。ボクを・・・迎えに来てよ!!」
いつもは言わない自分の願い。それを吐きだして目をつぶる。だけど激しい足音とともに体は持ち上げられる。
角を曲がったらすぐに目をとめるものがあった。昨日とは違う形態をした侵略者が光がドアから漏れているドーム型の前にいた。その真下には悲鳴を上げている少女。
「・・・ん。して・・・ずっと・・・。ボクを・・・迎えに来てよ!!」
その事態を素早く把握して走り出すと少女の声が聞こえる。あんなに言っててもやっぱり迎えには来てほしいのか。と、意味をはき違えながらも納得して尻餅をついてる少女を抱きその場から逃げだす。
「迎えに来てやったぞ。女子高校生。」
走りながらも少女に声をかける。力強く閉じていた眼をゆっくりと開いていきこちらと目を交差させる。訳が分からないというような顔がだんだんと理解を帯びた顔つきになる。
「べっ別に君に迎えに来てほしかったわけじゃないよ!!!」
「そっそうなのか。そりゃなんか悪かった。」
少女は顔を真っ赤にさせて言ってくるので一応謝ると今度は黙ってしまう。
「いや・・でも・・・・うれしかったよ。ありがとう。」
顔をこっちに向けずボソボソと言う少女。その行動と言葉にこんな緊迫した場面の中でも和んでしまったのは不謹慎だった。
「それでこれからどうするんだ?家に戻ったほうがいいか?」
「そうだね。そこを右に曲がって霊園を一周するように回っていこう。」
指示に従い家に向かって走り出す。化け物は電気のついてある霊園の方が気になるのかそっちに意識を持って行ってくれた。場所が近かったせいかすぐに家についた。玄関の所ではミツキが待っていてくれた。
「ユウヤ!また現れたんでしょ。軍に行かないと。」
「そうだな。」
「まって二人とも。二人はここに残っていて安全のはずだから。ボクのロボットはこの家の地下に収納されてるからボクが出てくる。」
玄関の端に掛けられていた軍服を上から着てすぐに向かおうとする。
「そんな危ないぞ。」
俺は肩に手をやり押しとどめるが少女はこちらを向き笑顔で言う。
「大丈夫。ボクこう見えても強いからさ。ボクを信じてくれると嬉しいな。」
「でっでも「じゃあいってくるね。」」
壁にあるスイッチを押して地下につなぐ階段が現れた。あんなことを言われたらどうしようもないけどもしもの場合がある。俺は少女に続いて地下に行こうとするがミツキにとめられる。
「ユウヤは私と一緒にお留守番でしょ。どこに行こうとするの。」
「ミツキは!!・・・あの子が心配じゃないのか?」
俺は少し声を張りながら止めたミツキの方を向く。ミツキは少女の消えた階段をずっと見ていた。
「あの子の言ったこと嘘じゃないわ。私も見えるから分かるあの子の凄まじい心の力≪メイド≫の量が。」
ミツキの真剣な顔。その言葉を信じて俺達は家で待つことにした。
それから二時間後避難命令は解除された。さっきまでしていた轟音は静まり返ってはっきりと終わりを告げていた。ミツキも一日の疲れが出たのか安心してソファで横になったまま寝てしまった。
俺はキッチンに足を運び残っているもので少しの料理を作っておく。全然食べないで出て行っちゃったからな。っとあの少女の事を思いつい笑ってしまった。
「何を笑っているんですか?」
「うっ!!!」
声にならない悲鳴を上げながら後ろを振り向く。そこには先ほどと変わりない顔をした少女がいた。どこもけがはしなかったようだ。
「俺は鳴海 優哉。君の名前を聞いてもいいかな?」
「そういえば言ってなかったね。ボクの名前は笹間ミーナ。世間でいうハーフだよぉ。」
「そっか。じゃあミーナ・・・おかえり。」
ミーナの目を見て優しく言う。俺の言葉にきょとんっとするがすぐにぱあっと顔を明るくして答える。
「ただいま!!」
夕飯を二人で仕切り直しで食べていると過去の事や侵略者のことを俺に話してくれた。その時のことは聞くだけでも壮絶だった。ミーナは体の割にはそういう人生経験が豊富なんだと感心した。
「ぐわっ」
「今失礼なこと思ってたでしょ。」
はたかれた頭をさすりながらすぐさま謝る。あって一日もたっていないが順調には仲良くなっているようだ。今日は空いてる部屋で敷布団を三枚敷いて寝るとのお達しをもらい三人川の字で仲良く寝たのも思い出の一つとなった。
君がボクを助けてくれた。ボクの言葉に答えてくれた。
ボクが出撃するときに感じる視線は機体のまなざし。早く退治してほしいっていうみんなの願い。悪気はないと思うんだけど、心配よりも先にその感情をボクに送ってくる。
わかってる。ボクがしっかりしなくちゃ昔のようなことが起こってしまう。だけど初めて真剣な顔で直接ボクのことをはっきりと心配してくれた君のこと。ボクはすごいと思うしかっこいいとも思ったよ。
「ねぇなんで初めて会ったボクを体を張って守ってくれたの?」
横で寝ている君は何も答えてくれないのは分かってるけど言いたくなる。
侵略者はボクが行った時すでに霊園を壊してたよ。あそこには侵略者に食われてしまった人たちや殺されてしまった人が祭ってあるんだよ。二回もあいつらに居場所を無くされた人たちは悔しいだろうね。
母さんや父さんも二回アイツらに殺されたことになる。今までのボクなら耐えられなかったよ。君たちが今日来てくれたおかげだね。
帰ってきた家はとっても温かかったよ。本当に温かかった。
「今日はありがとう。これはボクからのご褒美。」
そっと頬にキスをする。
「これは高いからね。だから余った分君のそばで今日は寝させてね。」
震えていた体を摺り寄せて眠りについた。その時のユウヤの顔が赤かったのは本人しか知らない内緒の事だった。
よろしくおねがいしまうぅ~~!!