第0話 俺が死んだ日
昔から
弱い自分が嫌いだった
だからあの時
俺はその事実に抗おうとしたのかもしれない。
俺は何にも取り柄はなかった。昔から苛められていた。だけど仕返しも出来ないし誰かに相談する勇気もなかった。一番嫌いだったのは何も変えることのできない自分自身だった。
高校に入ってからは頑張った。自分を偽って明るくした。友達も出来た。俺は一体何がしたいのだろう。
現実から目をそむけていた。俺はこのまま何も変わらないで命が尽きてしまうのだと考えていた。
俺は学校の休日を生かして本屋に来ていた。とくに買うものもなくふらつくだけのただの暇つぶし。店を出ると雨が降っていた。傘なんて持っていないしどこかで雨宿りをする気にもなれなかった。
躊躇せずに雨の中を歩きだした。別に家に急いで帰る予定もないのだがなぜか足が動く、まるでどこかに導くように。そのうち一つの信号で赤になり足を止める。
「だ、だれか!!!!」
青になっている隣の横断歩道から女性の悲鳴とも聞き取れる声が聞こえた。俺以外の人たちも一斉に注目する。濡れている道路に足を滑らせたのだろうか子供が倒れていた。猛スピードで車が迫ってきているので誰も助けに行けないようだ。
俺に勇気があれば・・・。
黙って見つめていた。けっこうな人がいる中で誰も動けなかった。誰も自分を責めるものはいないだろう。子供の泣いてる顔が目に入った。
誰かが泣くのは嫌いだった。自分も悲しくなってしまうから。
『─────────────ドンッ。』
持っていたカバンが地面に落ちた。なんで俺は走っているのだろう。全力で走るなんていつ以来だ。
間に合うか?俺は助かるのか?今の自分がわからない。
泣いている子供に笑顔を見せた。泣きやんでくれただろうかだけどまだ頑張ってくれ。一気に子供を弾き飛ばして射程距離から逃がす。間に合った・・・。今震えだした足はそこから動いてくれずに膝をつく、真横に車が見えた。
「俺はこの日のために生まれてきたのかな・・・。」
誰も答えてくれる人はいない。目を閉じた。想像を絶する痛みが体中を走った。意識は閉ざされた。
よろしくお願いします。
m(_ _)mゞ