表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺とお前のくだらない日常  作者: あき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

カラスってさ

救急医の俺と、水族館で働く獣医師、山下。二人の取りとめのない雑談を描く日常ストーリー。

「カラスって、人の顔覚えるらしいよ」

 夜勤明け、コンビニ前でゼリー飲料を啜りながら、山下が突然そんなことを言った。

 空は薄曇りで、昨夜の雨がまだ道路の端に残っている。通勤途中らしいサラリーマンが、缶コーヒー片手に無表情で横断歩道を渡っていった。

 朝は食欲が湧かない。

 せめてカロリーを取ろうと糖分たっぷりのエナジードリンクを喉に流し込みながら答える。

「車にクルミ割らせたり、賢いよな」

「この前、水族館の裏でずっと見られてた」

「カラスに?」

「うん。なんか監視されてる感じした」

 山下は飲み終えたゼリー飲料の空をビニール袋に放り込みながら、少し肩をすくめた。

 水族館は魚の匂いがするから、カラスも集まるのだろうか。

「餌持ってると思われてんじゃないの」

 山下は笑った。

「あ、」

「なに」

 山下の視線の先を追う。

 駐車場をトコトコと器用に歩きながら、カラスが横切っていく。

 やけに近い。

 朝の薄い光の中で、濡れた羽が青黒く光っている。随分デカくて、綺麗なカラスだと思った。都会のカラスは妙に艶がある。

「いた」

「いるな」

 カラスはじっとこちらを見ていた。

 偶然なんだろうが、こうして話題にした直後だと、どうにも気になる。

 山下が小声で言う。

「絶対聞いてた」

「自意識過剰だろ」

「いや、今のタイミング怖くない?」

「たまたまだって」

 そう言いながら、俺もちょっとだけ気味が悪かった。

 カラスは首をかしげる。

 その動きが妙に人間っぽい。

「なんかさ」

「うん」

「救急外来でも、たまにあるんだよな。こういうの」

「こういうの?」

「今日ヒマっすね〜、って言った瞬間、救急の電話鳴るの」

 山下が笑う。

「だいぶインフル減ったな、とか言った翌日に発熱外来が地獄になるとか」

「あるある」

 興味を失ったのか、あっさりと飛び去ったカラスの後ろ姿を見送り、エナジードリンクを飲み干した。

 通勤の人波が増え、眠そうな街が少しずつ動き始めている。

「さ、帰るか」

 歩き出したところで、後ろからガァ、と鳴き声がした。

 振り返ると、さっきのカラスがコンビニのゴミ箱の上に止まっていた。

 じっとこちらを見ている。

「……やっぱ覚えられてるって」

「まさか」

 そう言った直後、カラスが器用に嘴を動かし、ゴミ箱から肉まんの袋を引っ張り出した。

「俺たちより、あいつの方がちゃんと朝飯食ってるな」

「……モーニングでも食って帰るか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ