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マリヤ 其の一

彼女はカマキリと話すことができた。


だが、そんなことがどうして可能なのだろう?


すべては一匹のカマキリから始まった。後になってわかったことだが、カマキリは人間のほうから話しかけないかぎり、決して答えようとはしない。もっとも、それすら本当の始まりではなかった。本当は、村の一人の老女が死んだときに、すべてが動き出したのだ。


ちょうどその頃、一匹のカマキリが、丘の同じ場所で何日も跳ね続けていた。その土地は、墓地を広げるために選ばれたばかりだった。マリヤの村では、生きている者よりも死者のほうが多かった。彼女は昔から、その「もう一つの村」――死者の村に強く惹かれていた。そこは重く、生者の村よりも現実味を帯びて感じられた。墓や石が、空気そのものに重みを与えているかのようだった。


彼女はよく思った。最後の墓はどれになるのだろう、と。どの石が丘を崩し、死者の村が生者の村を呑み込む引き金になるのだろう、と。


そのことを、夢に見ることもあった。夢の中では、丘は溶けるように崩れ、濁流のように滑り落ち、人々を新しい世界へと押し流していく。母は自分の夢を予言だと言っていたが、マリヤの夢には取り合おうとしなかった。似たような夢を見て村を救った人々がいることを、マリヤは本で読んだことがある。だが、自分は違う。自分の丘は、誰も救いはしない。ただ、毎日向き合うしかないのだ。


やがて老女は埋葬された。


カマキリはなおも跳ね続けていたが、それに気づいたのはマリヤだけだった。墓穴を掘っていた男が、その場所にスコップを突き立てた瞬間――


地面が崩れた。


丘は崩落し、墓地の半分が闇へと滑り落ちた。葬儀は延期された。まずは遺体を探し出さなければならなかった。そうしてからやっと再び埋葬することができる。


「何日もここで跳ねてたんだぞ! こうなるって言ったじゃないか!」


マリヤは凍りついた。


カマキリが、彼女に話しかけていた。


その声は奇妙だった。男とも女ともつかず、どちらかといえば若い男のようにも聞こえた。それが現実だと受け入れてしまうと、驚く気力すら湧かなかった。もともと彼女には、そういうことに使う力があまりなかったのだ。彼女の心は、空想のためにだけ力を温存していた――それだけが、この村で生きていくのを耐えられるものにしていたからだ。


村そのものは、小さく、壊れかけていた。古びたトラクター、崩れかけの壁、土埃、山羊の糞。空き家がいくつかに、まばらな茂み。そして墓地。道はそこで途切れていた。まるで、その先へ進む術を誰も知らないかのように。


マリヤは逃げ出したかった。たった一度だけ見たことのある、大きくて人の多い街へ――その中に溶けて消えてしまいたかった。


両親は懸命に働いていたが、稼ぎはすべて、海外――オランダにいる兄につぎ込まれていた。なぜ兄がオランダなんかに住んでいるのか、皆わかっていたが、それを口にしたのはマリヤだけだった。すると兄は彼女を罵り、母は何も言わず、父は静かに兄に同調した。


その国の人なら特に不思議に思わない、麻薬の話だった。


兄が警察沙汰になったときでさえ、両親はそれを誇らしいことのように思った――まるで、それが彼の男らしさを証明しているかのように。母などは、近所の人々にその話をするとき、どこか楽しんでいるようですらあった。


この村の誰もが、それぞれのやり方で、逃げ出そうとしていた。


崩落のあと、カマキリたちは話し続けた。


一匹が口を開くと、他のものも次々に話し出した。マリヤはほとんど眠れなくなった。大半は愚かで、想像どおりの存在だった。だが一匹だけ――彼女がゲオルグと名づけたその個体は違っていた。賢く、話も通じやすかった。


彼女は彼に親しみを覚えた。自分と同じく、どこかこの世界に属しきれていない存在のように思えたのだ。


崩落は、彼女の中の何かを変えた。恐れの一部を洗い流した。そして一年をかけて、彼女は家族と衝突しながら、村を出る許しを勝ち取った。


両親は条件つきでそれを認めた。


第一に、神学校に入ること。


それは受け入れられた。信仰の問題ではないことくらい、彼女にもわかっていた。彼らが見張れないところに、どうやって彼女の「貞節を守る」かが問題だった。


第二に、「シマおじさん」のもとで暮らすこと。


問題は――そんな人物は元来いなかったということだ。彼女はこれまで一度もその名を聞いたことがなかった。


問いただしても、両親はただこう言うばかりだった。


「何言ってるの。知ってるでしょ」


その説明をしたのは、ゲオルグだった。


「僕が作ったんだよ」カマキリは言った。「退屈から救ってくれたお礼くらい、しないとね」


マリヤは考えた。


つまり、カマキリは現実を作り出せるのだ。


だとしたら、この世界は、亀の上に乗った象たちなんかが支えているわけではないのかもしれない。


たった一匹のカマキリの上に、成り立っているのかもしれない。

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