邪神転生~日本の邪神が異世界に転生したが勝手に戦えよ的な話
「大変だ。邪神が転生したと託宣が出ました」
「何!緊急会議だ。陛下にも申し上げよう」
ここは王都の女神教会だ。最近、邪神が転生したと騒がしい。
我はここで食客として学ばせてもらっているダークエルフの僧にして転生者だ。
齢は750年を超える。前世は僧侶、鎌倉幕府と人は言う立正安国を目指した世は既にないと聞く。
つい最近まで忘れていたが、我の名は・・・
思い出した。
我は日の本の僧、日『クシュン!』!この世界ではダークエルフに転生した。
今はこの異世界で勉学の最中だ。女神は天照大神、魔王はダイバダッタ、釈尊の弟子にして釈尊を殺そうとした者、転じて仏教の敵になった者だ。
それなら妙なる法はいずこにあるのか日々探求している。
「サリーよ。我は日『クシュン』であった」
「クシュン!クシュン!」
「どうしたサリーよ。風邪か?」
「花粉症なのだからねっ!」
桃色の髪の聖女サリーも転生者だ。しかし、年号平成の時代から来たそうだ。
帝の世はまだ存続しているのか。めでたいことだ。
彼女の時代にも我の教えを受け継いでいる者がいるそうだ。嬉しいことよ。
我の事を誤解しているが、本当は伊勢神宮にも行った事がある。
本日は異世界に転移した我が教団の教えを受けついで異世界で我の教えを広める者に会いに行く予定だ。
「サリーよ。行こう」
「案内するのだからねっ」
王都内にその教団はあった。名は『東京大戦果報告会』である。
本部長と名乗っている青年、山本真一郎殿に会った。
「よろしくお願い申す」
「はい、ダークエルフの坊主ですね。仏教対話をしましょう」
坊主、言い方が気になる。
真一郎は笑顔だ。それに従う信徒もこれまた笑顔だ。
何だ。何か気味が悪い。
教団内部を見ると・・・垂れ幕がある。
‘‘シンイチロウと奥様の健康と長寿を祈念しよう‘‘
と書かれている・・・まあ、良い。それだけ信徒に慕われているのだろう。
「我はこの地に来てから法華経非仏説の学説を聞いた。歴史学から法華経は釈尊が唱えた物ではないようだ。これからどう学説をつなぐ」
我のいた鎌倉殿の世では、仏の教えは釈尊が入滅後3000年で仏教の救いがなくなるとの学説が常識であった。
だから、我は末法の世でも法華経だけは滅しないと主張した。
法華経によって釈尊は久遠に、永遠に衆生を救い続けるのだ。
故に法華経だけを信じ。庶民は題目を唱えるべしと主張したのだ。
しかし、とんでもないことを言う。
「我が教団では日『クシュン』が本仏ですね。大聖人が末法の本仏になるお覚悟を御書の中でしておられます」
「な、何だと、我は教主釈尊と尊敬していたが・・・」
「それ、文底秘沈です。『クシュン』蓮大聖人は自らを教主釈尊に置き換えていました」
「な、何だと!我が我を尊敬していたと言うのか?とんだ増上慢じゃないか?」
・・・日本の仏教諸派の中で宗祖の名が宗派名になっているのは二つある。
一つは黄檗宗だ。
もう一つはこのダークエルフの前世の名を冠した。日『クシュン』宗である。
更に『クシュン』蓮宗の分派には日『クシュン』自体を拝んでいる宗派がある。
更にその宗派の檀家集団が、大戦果報告会である。別組織で政治団体『功徳実現党』を持っている一大勢力ではあるが、正確に言うと仏教ですらないのだ。
あえて言えば『クシュン』蓮教である。
ダークエルフは対決を申し出た。
「分かった。なら、どちらが正しいか現証で勝負しよう。祈雨対決だ!」
すると真一郎はやれやれと手を振った。
「とんで邪教ですね。それは魔の通力です」
「何だと!我は真言宗の相承を受けている!」
日蓮は祈祷対決をしたとの逸話もあるが・・・
「クソ坊主!この邪教の坊主をたたき出せ!」
「「「はい、本部長!」」」
「「「「出て行けクソ坊主!」」」
「やってやる!」
「ダメだからね。逃げるのだからねっ!」
我は魔法で瞬殺しようとしたが、サリーが止めた。
会談は失敗だったが、それから大戦果報告会は我に攻撃を始めた。
機関誌で我がサリーと良い仲になっている破戒坊主であるとか。
まあ、下品な下ネタばかりだ。
「邪教ダークエルフを野垂れ死ねまで追い詰めろ!」
「「「オウ!」」」
己、我を尊敬しているとか言ってちっとも尊敬しないではないか?
「サリーよ。やり返すぞ」
「大丈夫だからねっ」
サリーの話だと、もう一つの一派が来てるそうだ。
「埼玉破邪顕正会も来ているのだからねっ」
「また、うっとうしい集団がいるのか?」
王都に支部があった。
行ってみると劇をしていた。
「もらえもん~、どうしよう。皆、信心しないよ~」
「ノラタ君、そんなときは仏罰発動装置、これは信心のない人に仏罰を下す装置なんだよ」
「分かったよ」
何やら変な劇をしていた。
主張も。
「大聖人を信じないと外国に侵略されるぞ!」
とこれも法華経に書かれている他国侵逼難だ。
教えの一部を強調している。
すると、大戦果報告会の奴らが埼玉破邪顕正会に突入してきた。
「オイ、クソ坊主を追っていたら、やっぱり邪教の信者だったか?」
つけていたのか?いつのまに、それに邪教とお前が言うなよ。
「あ、先生から逃げ回っている。褒賞狂いの大戦果か」
「「「やっちまえ」」」
喧嘩が始まった。
「さあ、行くのだからねっ。これから勝手に戦ってくれるのだからねっ」
「うむ。正に三六計逃げるにしかずだな」
女神教会に帰った。
ここも邪神騒動で大騒ぎだ。
「さあ、これから邪神封じの祈りを行います。ダークエルフ殿も是非ご参加を」
「うむ」
サリーと共に大勢の神職者と祈る。
すると、苦しくなってきた。
「ウグ、グハ、気分が悪い」
「先生~、ダーエル君が具合悪いから保健室につれていくのだからねっ」
「そうしなさい・・・先生って何よ」
「大丈夫?」
「気分が悪い・・」
そこでふと思い付いた。
「なあ、サリーよ。奴ら我らを本仏として拝んでいた。気持の悪い奴らだ」
「そうだからねっ」
「仏は日の本では神に垂迹される。つまり仏=神と言っても良い・・・」
つまりだ。邪神とは我ではないか?
女神教会の祈りが強くなると我が苦しくなる。
いや、宿業が我を苦しめているのだ。不肖の弟子を作った我への罪業を滅する炎か?
「なあ、サリーよ。邪神の名は『クシュン』蓮ではないか?」
「ダーエル君は寝てなきゃダメだからねっ」
サリーに濡れたタオルを額にあてられた。
我はこの苦しみを受けようと思う。
最後までお読み頂き有難うございました。




