ネズミ狩り
標的の頭を狙い、俺は引き金を絞った。
――パンッ!
乾いた銃声が夜の路地に響く。
一発で仕留めるつもりだった。
だが銃口がわずかに跳ね、弾丸は標的の肩を撃ち抜いただけ。
「う、がぁぁっ!」
奴が絶叫し、仲間二人が即座にこちらを振り向いた。
「テメェっ! 誰だ!」
銃口が閃き、弾丸が飛ぶ。
コンクリート片が頭上で砕け散る。
俺は本能的に地面に身を伏せ、転がるように裏路地へと退避した。
――クソッ、まだインプラントを入れてねぇ肉体じゃ、反応速度で奴らに勝てねぇ!
息を荒げながら、壁際に身を寄せる。
足音が近づく。
「撃ち返せ! 逃がすな!」
奴らは慣れてやがる。犬の群れに追われる獲物の気分だ。
俺はポケットからマガジンを抜き、急いで装填。
銃口を壁の隙間から突き出し、無理やり反撃した。
――パン、パンッ!
一発は外れ、一発は敵の脚をかすめた。
「ぐっ!」と悲鳴が上がり、追撃の足が止まる。
その隙に、俺は裏路地を駆け抜けた。
肺が焼けるように痛む。
改造をしていない肉体はすぐに限界を訴え、脚が重くなる。
背後から怒号と銃声が追ってくる。
「逃がすな! あのネズミをぶっ殺せ!」
――違う。
俺はもう、ただのネズミじゃない。
胸ポケットの拳銃を握りしめながら、俺は必死に夜のネオンの中を走り続けた。