試し撃ち
射撃レンジに立つ俺の背中に、リーヴの声が投げかけられた。
「腕は悪くねぇ。……ちょうどいい。ひとつ仕事があるんだ。試し撃ち程度にやってみねえか?」
俺は振り返る。
「仕事?」
「街の西区にちょっとした“ネズミ”がいてな。俺の仕入れルートにちょっかい出してくるチンピラだ。名前は《ドッグス》って連中の下っ端。頭の悪い犬どもだ」
リーヴはニヤリと笑い、机に古びた端末を置いた。
そこには標的の顔写真と位置情報。
「今夜中に始末してくれりゃ、弾薬と改造費をツケてやる。……どうだ?」
俺は写真を見つめた。
見たこともねぇ小物だ。だが、報酬は弾薬と改造――今の俺にとっては喉から手が出るほど欲しい。
「……いいだろう」
「決まりだ」
リーヴが渡してきたのは、拳銃用の予備マガジン二つ。
「好きに使え。ただし回収はしない。街に撒いた分は自分で始末しろよ」
夜の西区。
薄暗いネオンの下、崩れたビルの一角で、標的は仲間と酒を煽っていた。
ドッグスの刺青を入れた三人組。
笑い声が路地に響く。
俺はビルの影に身を潜め、冷たい拳銃を握った。
――これが試し撃ちだ。
サーペンツから奪った銃で、今度は俺が“獲物を狩る側”になる。
息を殺し、引き金に指をかける。
ターゲットの頭を狙う赤いホロサイトが揺れる。
心臓が静かに脈打つ。
「始めるか」