報酬
旧工場の取引所。
俺とドライバーの前に現れたスキンヘッドの代理人は、冷たい笑みを浮かべていた。
「ご苦労だったな。これが報酬だ」
机の上に置かれた黒いケース。
開けてみれば、中身は十万クレジットのチップ――のはずだった。
俺の目が狭まる。
そこに並んでいたのは、偽造用の安っぽいデータチップだった。
重量も、反応も、まるで違う。
「……ふざけてんのか?」
俺が低く唸ると、代理人は肩をすくめた。
「上が判断したことだ。お前みたいな路地裏のネズミに十万も払うと思ったか?」
その瞬間、背後で金属の音が鳴る。
影から数人のガードが現れ、銃口をこちらに向けた。
完全にハメられた――。
ドライバーが小声で吐き捨てる。
「クソッ、だから言ったんだ……サーペンツ絡みの仕事は信用ならねぇって……」
代理人は机を指先で叩きながら、笑みを深める。
「ただで命があるだけありがたいと思え。金が欲しいなら、また別の仕事で証明してみせろ」
俺の胸の奥で、怒りが煮えたぎった。
死線を潜り抜け、血反吐を吐いて生き延びたのに――その対価がこれか。
銃口がさらに近づく。
――選択肢は二つ。
ここで暴れるか、それとも飲み込んで生き延びるか。