子守唄
「姫。もうお眠りになって下さい。明日も早いので」
「でも、眠れないの。頭の中で妖精さんがお喋りしているみたい」
「そうですね。分かります。私もそうなる事が時々あります。では、子守唄でもいかがですか」
「お願い」
「分かりました、ではとびっきりのをご覧に入れましょう」
あるところにお姫様がいました。お姫様は大変元気がよくお転婆で好奇心旺盛でした。ある日、いつものようにお城を探検していると小さな小さな妖精が部屋の隅の窓辺で日向ぼっこをしているのを見かけました。わあ、なんてかわいらしいことでしょう。そう思った姫はすかさず声を掛けようとしましたが、耳元で『シー』とささやく声がします。横を見るとこれまた小さな妖精が口元に人差し指を添えて浮かんでいるのが見えました。『いまちょうどいいところなの。今少し寝かせておいてあげてくれないかしら』と妖精は優しい声で言いました。『うん。そうするわ』と姫は答えました。『代わりにと言っては何だけど、あなたもいっしょにお昼寝してはどう。きっといい夢がみられるよ』と妖精は言いました。姫は妖精に出会えたことに興奮しており余り眠くありませんでしたが、静かに目をつぶっている妖精をみている内に段々と眠くなってきました。『さあ、このふかふかのベッドに横になって。そしたら目を閉じて。私が特別なおまじないをかけてあげる』と妖精は楽しそうに言いました。姫は目を閉じ柔らかな陽光に包まれつつ眠気に身を委ねました。『アピタス、ナフリムラプス、タピレミス』と妖精は自信満々に言いました。姫は何だかヘンテコな呪文に笑いそうになってしまいました。薄目を開けて妖精の様子を伺うと、不安そうにこちらを見ていました。姫はますますおかしくなってしまいましたが、妖精も隣に潜り込んできてすやすや一緒に寝始めたので姫も眠ることにしました。おしまい。
「その後は、その後はどうなったの」
「それは眠ってからのお楽しみですよ、おやすみなさい、姫」
「おやすみなさい、妖精さんもおやすみなさい」
「ふふふ、良い夢を」