佳代編 1話
ファミレスでの話し合いから数日後。
あれから私は実家に強制的に帰る事を命じられた。
勿論お父さんから命じられて…。
約10年ぶりに帰宅して私に親達が与えたものは強烈な痛みを伴うびんたと怒鳴り声だった。
突然いなくなった私を心配して両親は手当たり次第に私を探し回ったらしい。
でもその努力も虚しく私を見つける事は出来ずそのまま10年以上の月日が流れた。
両親のなかで私は死んだ者と扱われたがそれでも親が子供を諦めきれるものでは無いらしく探偵やらを雇っては探し回っていたらしい。
それが突然野村立樹の元で保護したなんて話にもなれば驚きもするだろう。
たっちん…野村と親の間で私を引き渡す話が一度は浮上したけど今更どの面下げて親の元に帰れと言うのか?
私は家には帰れない!帰りたくないと駄々を捏ねて野村の家にしがみついた。
野村もそんな私を気遣い…いや辟易としながらも無理矢理引き渡せばソレまでに何をするか分からないと危惧して私の意見を聞き入れたのだろう。
両親には私の気持ちの整理が付くまでと言う条件で私は野村の家に居着く事を許された。
両親もそれに同意したけども…
しかしそんな両親の気遣いは無駄に…徒労に終わる。
血眼になって探し回ってようやく見つけた娘が援交に手を染めているのだから親達はさぞかし絶望しただろう。
その絶望を怒りに変えて親は私に暴力を振るう。
その暴力には…
罵声は…
お前を心配していたんだと…
なのにこんな馬鹿げた事をしてと…
後悔やら怒りやら様々な感情か入り乱れているのだろう。
しかしそれが何だっていうのか?
こんな物で人の考え方や価値観が変わるなら苦労なんてしない。
痛みで人を従わせるなんて前時代的だ…ダサい行為だ。
怒られる事で人は反省し、自身を顧みると言うがそんな物はある程度歳を取った大人には無縁の事…。
大人にはソレまでに生きて来た価値観がある。
怒られて反省する。
そう言うのは子供の特権だ。
怒鳴られ、殴られ、泣かれたからと言って価値観がひん曲がった私には反省なんて今更も良い所だ…。
まぁ……そもそも…私は自分が大人だなんて思っちゃいないのだけどね。
私の心はずっと高校生の時のまま止まっている。
甘ったれたガキのまま初体験を済ませて甘ったれたガキのまま男達の玩具として回されて…
言ってしまえば体だけ大きくなっただけで中身はガキのままの女…それが私だ。
所謂逆コ◯ン君だ…。
それから私は家の中に閉じ込められている。
自由の外出は許されていない。
実家に自由はない。
親達の監視のもと私は酷く不自由で息の詰まりそうな生活を送らなければならない。
自由に外出なんて許されない…かと言ってダラダラする事も許されない。
家の何かしらの手伝いをやらされたりしてたけどそんな生活も長くは続かなかった。
親達は私にある提案……という名の命令をして来たのだ。
「佳代…貴方…働きなさい。」
「へ…?働く?」
「そうだ…バイトでもパートでも何でもいい…兎に角働け。」
親達は私に働く事を強制して来たのだ。
「む…無理よ!私今まで働いた事なんてないもん!」
「だからよ!」
「俺達だっていつかは死ぬ…俺達がいなくなった後、お前はどうするんだ?いざと言う時貯蓄どころか働いた事もないでは生きて行くどころの話ではなくなるのたぞ?」
「だから今の内に働きなさい!」
「そんな…」
結局私は働く事を義務付られた。
拒否権は完全に無しだ…。
嫌だけど理屈は分かる。
私だって今のままでいい訳ない事くらい理解している。
だから気は進まなくても働かなければならない。
頭の片隅で真面目に働かなくても私なら適当な男から……と思ったけどそれで痛い目を見たのはこの私自身なんだ…。
それに時間は無限では無い。
30を越えてお客が取りづらくなっているのは実感済だ。
働くのは……嫌だけど仕方ない…。
親達は既に私が働く場所にもめぼしを付けていたらしい。
私みたいな問題児でも働ける工場で女の人も沢山働いてるらしい。
工場なんて…力仕事なんて私に出来るのか…ひたすらに不安しか無い…。




