28話
俺は朝一番、結城さんに呼び出されていた。
場所は俺の家のリビングだ。
今は出社前の一時だが話題が話題なだけにおっとりと微睡んでいられる様な余裕は無い…当然だ。
今日集まったのは昨日の件に関する物なのだから。
「これは…」
「はい…」
彼女が差し出して来たのは彼女が使ってる私用のスマホ…
その中に彼女か昨日捕らえた映像と画像がある。
仲居さんと佳代が二人でラブホに入っていく…そんな内容だった…。
「私としてはこれであの二人を攻めれば後はトントン拍子だと思いますよ?」
「……それは流石に…出来ないよ…」
「?…何故ですか?こんなの明らかな裏切りじゃないですか?」
「裏切り?それは違う…俺と佳代は付き合っていないんだ…アイツが何処で何してようと俺には実際関係ないんだ…だから裏切りだとか言ってアイツを責める資格は俺にはない…」
「だからって…なんとも思わないんですか…?勝手にこんな事されて…」
「何とも思わ無いって事はない…ただ…」
「ただ?」
「佳代はどうでも良いが中岸のおばさんやおじさん達には昔色々と世話になったからな…あの人達には迷惑をかけたくない…」
「だからって…」
「まぁもう佳代との同棲は限界だと思う…こんな事を勝手にされて流石の俺も肝が冷えたしね…」
「なら…どうするんですか?」
「その画像を盾に中岸家の人達に佳代の面倒はもう見れないって話すつもりだよ…」
「そうですか…でも動くなら早い方がいいですよ?」
「それはどうして?」
「佳代さんの行方ですよ、今は仲居さんと会ってるってわかってますが仲居さんは既婚者です、まともな考えが出来る人なら既婚者相手に援交なんて持ちかけないと思います…まぁまともなら最初からこんな事しませんけどね」
「え…と…つまり?」
「佳代さんが次のターゲットを見つけたら仲居さんから離れると思います…そうなったらもう私達には佳代さんを見つけるのは難しいです…それこそ探偵でも雇わないと無理ですよ」
「な…成る程…」
彼女は本当に冷静に物事を見てくれてる。
心強い限りだ。
改めて思う…彼女が味方で良かったと…俺一人でこんな状況に追いやられていたらどうしょうもなかった。
つくづく自分の頼りなさを痛感させられる。
「それなら今日は会社を休んで中岸さん所に行って来るよ…」
「それなら私も同伴します。」
「いや、流石にこれは俺一人で行くよ」
「そ、そうですね…流石に私がいるのも変ですもんね…」
結城さんには悪いが中岸家に行くに辺り彼女を同伴させるのは明らかに不自然だ。
中岸家の人達は恐らくあわよくば俺に佳代の面倒を永久に見て欲しがってるはずだ、それは結婚とかも視野に入れてると見ておいた方が良い。
そんな人達の所に行こうと言うのだ、結城さんの存在は確かに心強いが今回に限っては彼女の同伴はどう考えても下策だ。
結城さんと俺がくっつきたがっているから佳代が邪魔になったと邪推でもされたら厄介だからな…。
まぁ俺は結城さんと結ばれたいと思っているのだから邪推でも何でも無くただの真実な訳だが…。
「結城さんは会社で仲居さんの事を監視しておいて欲しい…でも危ない事はしないで欲しい、何かあったらじゃ遅いからね。」
「はい、わかりました」
そうして結城さんは会社に向かって行った。
俺は体調不良と言う事にして会社に有給の申請をして休んだ。
会社を仮病で休むのはいつ以来か…
真面目に通勤していただけあって上司は疑いもしなかった。
こんな時仲居さんが直属の上司で無くなっている事に強く有り難みを感じた。
多分こんなに簡単に休みが取れたりはしなかったろうからな…。
さてと…行くか…。
適当に菓子折りを買い電車を数駅乗り継いだ距離に佳代の実家はある。
おじさんも定年で今は家に居るはずだ。
俺は緊張する体に無理矢理ぐっと力を入れて中岸家はの道を歩む。
この感じは嫌いだ。
腹がきゅ〜と痛みだす。
逃げ出したい衝動に駆られるがここで逃げては後々厄介な事になる。
例えどんな結果になろうとも話して置かなければならない。
そんな事を考えていると中岸家の家の前に辿り着いていた。
インターホンを押すとピンポ~ンと言う電子音が家の内側から聞こえる。
ややするとドアが開き初老のオバサンが出てきた。
「あれ?立樹くんかい?」
「どうも…ご無沙汰してます、おばさん」
「どうしたの…?まさか佳代に何かあったの?」
「ええ…その事でお話があって、急だとは思いますが伺わせてもらいました。」
「取り敢えず上がって、主人も中にいるわ」
「ありがとうございます。」
俺は中岸家に上がった。
そのままリビングに通され、おばさんとおじさんに対面する形で対話を始める事となった。




