27話
佳代は自らの行動を早くも後悔していた。
勢いにまかけて立樹の家を飛び出したは良いが肝心の声をかける相手を見誤った。
佳代が思い浮かべる理想の寄生先として御し易い男で有るべきなのは当然だ。
これで見た目や清潔感があれば尚良しだがそんなのは奇跡でも起こらなければまず無理だ。
良物件は既に買い手が付いている。
今更ありもしない物を欲しがるのは悪手だ。
仮に手に入れても大概の場合、訳アリか手垢が付いてるかのどちらかだ。
そして今回ハズレを引いたと言う根拠は相手が手垢付きだったと言う事だ。
つまるところ相手は既婚者。
如何にも人生疲れてますみたいな顔をしておいてちゃっかり結婚していたのだ、あのハゲオヤジは…。
「はぁ…ホント最悪…取れるだけ取ったら早いとこ次探さなきゃ…」
ハゲ散らかした気怠そうなおっさん。
無駄にプライドだけは高く、令和の時代で精神論を振りかざす時代錯誤な考えとナチュラルに他人を下に見た言動が相手をしていて本当に疲れた。
そのクセ甘えたがる歪んだ性癖の持ち主だ。
余っ程奥さんから普段は蔑まれてるのだろう。
年下の小娘に良い歳したおっさんが赤子の様に甘える様をおぎゃるなんて言うのをネットで見たが現実はキモいだけだ。
しかし貢がせるにはこれ以上ない物件なだけに全否定は出来ない。
「甘えさせてやればお金沢山くれそうだしね…でも…」
奥さんがいる相手とあまり関わるべきじゃない、慰謝料とか言われたらたまらないしあのおっさんにそこまでのリスクを冒す魅力は無い。
ネットで聞きかじっただけの浅い知識だけどいい歳したおっさんが歳の大きく離れた少女に赤子の様に甘える行動をおぎゃると言うらしい。
バブ味とかを感じておぎゃる?らしい。
うん、さっぱりわからないけど社会に揉まれストレスに潰されそうになってるおっさんにお金と言う対価を貰って代わりにおぎゃらせてあげる…まぁ癒しを提供してあげて代わりの対価としてお金を貰うというわけだ。
世のパパ活行為が無くならないのはこんなビジネスが実在しているからに他ならない。
そして私はそのパパ活を今からやらなければならない。
本心ではこんな事やりたくない…
やりたい訳がない…
でも立樹の家を飛び出し行く宛もない身としてはお金は絶対にいる。
「はぁ…お金だけくれないかな…」
そんな自分にだけ都合の良い事だけを考えて佳代は寝床としているネット喫茶を後にする。
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佳代は約束通り男と会っていた。
男の名は仲居。
佳代は知らない。
仲居が立樹の知り合いであると言う事を。
そしてコレも知らない。
今、自分がとある人物に監視されている事も。
「やっぱりアレどう見ても中岸佳代さんですよ…悔しいですがとても綺麗な人だなって嫉妬したくらいですし、よく覚えてますから…」
「そ…そうなんだ…」
彼女は誰かにスマホで車内から電話をしている。
通話の相手は彼女とって職場の先輩であり、想い人でもある人物だ。
「それじゃ私少し二人を尾行してみますね」
「ちょ…まて!そんなの危ないよ!」
「大丈夫ですよ〜それじゃ!」
電話を一方的に切り彼女…結城咲菜は車から飛び出す。
決定的な瞬間をとらえ少しでも先輩との仲を深める為に。
(悪いですが中岸佳代さん…貴方は先輩にとって不穏分子なんですよ…私達の幸せの為に退場して下さいよ…それに…自分から先輩を捨てた貴方に言い逃れする権利なんてありませんから…)
しかしまぁ…
あのハゲと彼女がね…ふふ…。
佳代さんも手段を選びませんねぇ〜
何故貴方がこんな行動に出てるのか知りませんし知りたくもないですが…顔をみればいやいやなのが透けて見えます…。
なのにあんなに体を密着させて媚を売って…
本当はあんなハゲオヤジに密着されるのも嫌な筈なのに……貴方が何を考えてるのか分かりたくもないですがその馬鹿な行動には心から感謝しますよ…。
これで先輩はもう貴方を匿う必要がなくなる。
そうして咲菜は二人の後をつける。
レストランみたいな所に入られたら面倒だなと思っていたがそんな懸念は杞憂に終わる。
「あらあら…これはこれは…ふふ」
その手の店は案外辺鄙な場所に建てられている事が多い。
人目を避けたい客のニーズに答える為かはたまたオーナーの趣味か…。
咲菜はドライブが趣味だ。
職場から立樹を家に送り帰りがてら軽くドライブをしていた。
山や海などに一人で向かい、景色観光をする趣味を持つ彼女はドライブで街の景色を見るのも何気に好きだったりする。
そんなおり、例の二人を目撃したのだ。
そして二人は知る人ぞ知るといった辺鄙な場所に建てられた洋館風の建物に入って行った。
あくまで洋館風…本物の洋館ではない。
本物ならこんな陳腐な作りな訳はない。
どこか安っぽい雰囲気を見る者にあたえる。
それは所々にあしらわれたピンク色の装飾のせいか…。
咲菜はスマホの写真アプリを起動させその建物に入っていく二人を撮影する。
仲居の腕にしがみつく中岸佳代。
もはや言い逃れも出来まい。
咲菜は帰り道に少しドライブをする選択を選んだ自分に強く感謝した。
こんな愉快な種を得られたのだから…。




