23話
「何故よ……どうしてよ…」
たっちん……立樹が帰って来なかった。
金曜日の夜…
女と一緒に何処かに消えた立樹はそのまま土曜を過ぎて日曜日になっても帰っては来なかった。
頭の中で最悪な妄想ばかりが過ぎっては通り過ぎて行く。
まさかあの女に鞍替えする気か?
私は?
私はどうなる?
今の私には立樹しかいない。
もう何処にも私に居場所なんてない。
なのにアイツはそんな私を見捨てて何処の誰とも知れない雌ガキに盛っているのか…?
「クソ!クソ!クソ!クソクソクソクソクソクソクソぉぉ!!!」
結局アイツも他のクソ男と同じだ!!女は若くないと意味がない!
三十路のババァに興味ないとか言ってくる他のクソ男共と同じ。
女を表面的なステータスでしか見れないのだ!
毎日毎日ご飯作って甲斐甲斐しく待ってやってるのにその見返りがこんな仕打ちか!?
ありえないでしょ?ふざけやがって!!
もう駄目だ…
潮時だ…
中岸佳代は理解していた。
どの道自分の居場所はここにはない。
野村立樹に自分を幸せにする気はないと理解していた。
それでも立樹に縋ったのは彼がかつての恋人で幼馴染だから。
あいつの未練に漬け込んだのだ。
幼馴染という情に依存したのだ。
利用出来ると思ったのだ。
でも無理だった。
そんな事最初からわかってた。
アイツは壊れていた。
私がどれだけ迫っても煩わしそうにするだけ。
手を出すどころか欲情すらしてこない。
男として完全に劣化していた。
最初は我慢しているのだけかと思った。
私に良い所を見せようと毅然と振る舞ってるのかと思った。
でもそうじゃない。
あれはそう言うのではない。
完全に私を異性として見ていない。
異物か何かだと思っている。
だから色仕掛けに意味なんて無いとわかっていた。
昔はあんなのじゃ無かった…
短いスカートをはいただけで赤面していたし少し胸元を強調してやればわかりやすく狼狽えた。
でも今のアイツは駄目だ。
男として完全に終わってる。
だったら幼馴染としての情を利用しようと思った。
これはある程度の意味がある様に思えた。
でも絶対じゃない。
今が良くてもいつかはここを出ていかないといけない。
掃除をしても料理をしてもアイツが私に依存する決定打にはなり得ない。
しかもあんな女が出てきたらいよいよ私の居場所はない。
「どうしょう…ねぇ…どうしたらいい?たっちん……ねえ…」
彼女がいつも最終的に縋るのはいつだって幼い頃の野村立樹だ。
高校の頃の…中学の頃の…小学校の頃の…。
頭の中で回帰するのはあの懐かしくも安心する時間に満たされた日々。
矛盾しているかも知れないが彼女にとって昔の立樹こそか真の立樹であり、男として終わった今の立樹ではないのだ。
あの頃の立樹は私を女として意識していた。
あの頃の立樹は今の立樹のように異物を見る様な目で私を見ては来なかった。
満たされた日々。
満たされた時間。
あの時間に帰れたならどれだけ良いか…。
気付けば私は夜に外の街を彷徨い歩いていた。
あれ程怖かった筈の外の世界が今は何とも思わない。
もうどうでもいい。
そう思うと怖いと思う意思すらもどうでもよく思えてくる。
そもそも私が外の世界を怖がっているのは何故か?
また彼奴等に出会ってしまう可能性を恐れたからだ。
幼かった私を言葉巧みに欺き利用した糞教師
散々私で◯欲処理して飽きたら捨てたクズ男共。
またコイツ等と再会してしまうのが嫌で私は外の世界を遠ざけていた。
でももうどうでもいい。
どうでもいいのだ。
むしろ誰か私を拾って欲しい。
誰か私を見つけて欲しい。
誰か私を必要としてほしい。
「………あ……!」
当て所なく歩いているとなんとも見窄らしい印象のハゲおやじを見つけた。
歳の頃は50くらいか…?
疲れ果てた顔付きでただでさえハゲてるのにもっと髪が抜け落ちそうな印象をうける。
正気がまるでなく生きる事に絶望してそうなそんな印象。
決めた。
このおじさんにしょう。
「ねぇねぇ…そこのおじさ〜ん」
「え……?」
「私の事……飼ってよ〜」




