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2話

「君真面目にやってる?しっかりしてよね?もういくつよ?その年齢で適当な仕事しか出来ないならここで君が働く必要ないんだよ?他でもそんなんだとドコ行っても同じだよ?ここしか君が働ける場所なんてないんだから真面目にしてもらわないと困るんだよ?」



眼の前でネチネチと小言をいってるオッサンは俺の先輩にあたる上司だ。

見た目は50代の細身のオッサンだ。

小さな事をネチネチと大声でまくし立てるのでこっちは精神を摩耗させ気力がそがれていく。

どうでもいいがそれがコイツの正論パンチの威力を個人的に底上げしてる理由の1つだと思う。

誰もが最初から仕事が出来る訳では無い。


無論コイツにも素人だった期間があるはずだが人というのは自分より使えない奴を見るとそれを喜々として叩きにかかる。


言い返されないからコイツには何を言っても良いと正論を交えて口撃するのだ。

もっとも言い返す度胸も体力も気力も俺にはもはやない。

ただ定時を迎えるまでの8時間を無心で過ごすだけの毎日だ。

まぁ…定時を迎えてからは低賃金の残業に切り替わるのだが…。



「今日もメタクソに言われてたっすね?先輩」


「聞いてたんなら助けろよ」


「いやっすよ、ターゲットが俺に移るじゃないすっか?」


「はぁ…俺はお前の盾になったつもりはないんだけど?」


「俺も先輩を盾にしてるつもりなんかないっすよ、アイツが先輩をタゲってるだけっしょ?」


「はぁ…面倒くさいわ、辞めていい?俺」


「駄目っすよ〜先輩がいなくなると回らなくなる仕事どんなけあると思ってんすか?」


「俺がいなくなるだけで回らなくなる仕事がある今がどんなけヤバいか実感して欲しいわ」


「あはは〜、あっ!俺今日も彼女とデートなんで残業出来ないから定時で帰りますね?」


「ハイハイ」


「先輩も彼女とか作れば良いじゃないっすか?」


「お前なぁ…俺がモテないの分かってて言ってるだろ?糞な性格してるよな。」


「いやいや割とマジで言ってますよ〜?」


「女とかどうでもいいわ。独り身が一番楽」


「あははは!枯れてるぅ〜」



まぁ…もっとも同棲してる女はいるのだがな。

そんな事をコイツに馬鹿正直に言う必要は無いだろう。

高校時代の忌むべき記憶。

黒歴史と言われる(たぐい)の思い出。

この日本という他国と比べても狭い島国の中でいったいどれだけの少年が彼女を教師に寝取られたなんて稀有な体験をした事があるのか…正直想像もつかない。

まぁ少ないのは間違い無いだろう。

と言うよりもだ…こんなのが多くあってたまるものか!



昼休み

俺は今日も残業だと言う事を簡素にラインに記して送信する。

直ぐに既読がつき


「了解〜たっちん頑張ってね!」


と返信が来る。


「良妻気取りなんだろうか?なんだかな…」



職場でスマホを睨んでいたのがイケなかったのだろう、例の上司が絡んできた。



「ここは携帯を触る場所じゃないだろ?そんな事もわからんのか?君は?」


「今は休憩時間ですが?」


「そんな事は関係ない、ここは仕事をする場所だ。携帯を触る場所ではないんだよ!君みたいにルールを守らずいい加減な仕事をしている者がいるから後輩にも示しがつかなくなり社内全体にそういう空気が広がるんだ!わかってるのか?」


「はぁ…」


「なんだね?その態度は!!」


「………すいません。」



ここで休憩時間スマホをいじっているのは何も俺だけではないしそんなの今に始まった事ではない。

もっと言えばそんな事今日はじめて言われたしそれまで言われた事は無かった。

この男は先程まで会議に出ていて何かそこで言われたのだろう。

その鬱憤を俺で晴らしたいのが見て取れた。

うんざりだ。



「まったく、君ここに勤めて何年だね?会社から給料貰って生活してるならしっかりとしてくれなきゃ困るんだよ?僕もねこんな事いいたかないんだよ?解るだろ?言う方もいわれる方も疲れるんだよ?だったらしっかりしてくれないと困るんだよ?」



本当にうんざりだ…

言いたくないなら言わなければ良いだろうが。

示しがつかないとかなんとかいってただウサを晴らしたいだけなんだと誰もがわかってるのに…。

自分を正当化したいだけの言い訳に過ぎないのだ。



「本当に申し訳ありませんでした…」


「まったく」



上司はそのまま出て行った。はぁ…と疲れてイスにもたれかかると椅子はギシっと嫌な音を出す。

5年前から俺の相棒として俺に尽くしてくれている椅子君だけれどここ最近は座り心地が悪くそのせいか肩こりが気になる様になって来た。

5年来の相棒だけれども早々に買い替えたい気持ちもある。

会社の予算で椅子を買い替えたいがまぁ無理だろう…。

ケチなこの会社が態々社員の為に予算を削ってはくれ無いのだ…、例え椅子を買う程度の事でも…。

しかし改めて思う。

この会社のブラック企業っぷりはなんとかならないものかと…。

まぁ直属の上司があれでは望み薄だろう。

言うだけ無駄なので結局この相棒を使い続けなければならない。



そんな感じで今日も定時を大きく超過して現在20時。

いつもより一時間も早く退社出来た事に俺は無上の喜びを感じていた。

例の糞上司はしっかり定時上がりだ。

無論俺より給料は倍近く高いのだから世の中狂ってる。




「おかえりたっちん、今日は早いね?」


「たまたま今日は早く終わったんだよ」


「いつもこのくらい…てゆーかもっと早くても良いと思うけど?」


「会社に言ってくれ…」


「辞めたら?そんな会社。」


「辞めれたら苦労しないよ。」


「じゃ辞めたがってはいるんだ。」



なんだよその目は。

ジトッとした目で俺を見てくる

家に帰れば今日も今日とて彼女は晩御飯をちゃんと作って待っていてたのだがこの時間でもしっかり作られていると言う事は彼女はもっと早い段階で作って待っているのだろうか…。


まぁ…どうでもいいか…。

向こうが勝手にやっている事だしこっちも勝手にするだけの事だ。


「ねぇたっちん…私…」


「なんだよ…?」


「私とやり直す気とか…ない?」


「はい?」




やり直す…何が?


コイツは今更何を言ってるんだろうか?



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