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11話

俺は今結城さんと職場近くのショッピングモールに来ていた。

なんでも服を見るのが趣味らしく買わなくても見てるだけで幸せになれるのだそうだ。

見てるだけで幸せになれる。

こういう所は女も男も同じなんだなと変に納得してしまう。

俺も買わずとも、見てるだけで満足してしまう事は多い。

漫画やラノベにアニメの円盤やフィギュア…まぁ買うものが互いに理解の外なのだが…。

しかし彼女はオタ向けのゲームを嗜んでいる。


もしかしたら割とそっち方面にも明るかったりするのだろうか?

美人でオタクに優しい。

まさにオタクに優しいギャルである。

いや、結城さんはギャルではないが…。 

どちらかと言うと地雷女感が今でもそこはかとなくしている。


敵に回したく無い…そういうタイプだ。

こうして彼女が服をニコニコ笑顔で見ているのを隣で眺めながらどうか下手に逆鱗を刺激しませんようにと密かに神頼みしている。

神頼みしてる暇があるなら彼女の機嫌をそこなわせない様に努力しろよとお叱りを受けそうだが女友達(など)いない身としてはもう神に縋るしかない訳だ。


そんな無駄とも言える事を考えていると彼女がいきなり話しかけて来た。


「野村さんはこの服とこの服、どっちが良いと思います?」


「え?俺にきいてるの?」


「もお!先輩以外に誰がいるんです?」


「確かに…俺しかいないな…」


「でしょ?で?どれがいいです?」

彼女の手には白いワンピースと露出度の高そうな黒い服。

どちらも方向性が異なるが美人の彼女はどちらも卒なく着こなす事だろう。


とゆーかだ…。

これはアレだ。

 

これではまるでデートではないか!?

彼女の服選びを彼氏がやる。

デートでのお約束イベントの一つにこんなのがあったはずだ。

彼女の扱いに長けたイケメンならこう言う時も卒なく最大火力のナイスな発言を捻り出せるのだろうが俺は彼女に飽きられ浮気された過去すらある駄目男だ。


こんな状況でナイスな判断を導き出せる程の語彙力はない。

       

ゆえに欲望に従う事にした。


「こっちかな。」


「そうですかぁ〜先輩の好みはやっぱり清楚系ですかぁ!」


「でもあくまで個人的趣向に基づいて述べるなら結城さんはこういう服装が似合うと思う。あとコレとコレも揃えてくれたらとてもナイスだね!」


「え?え?あ……え?」


「結城さんは何処かミステリアスでありながら無邪気な所があるよね……だからこういう服装も似合いそうだと…………はっ…ちがっ…いや、違わないけど…え……と」



俺は先程から目をつけていた衣服を彼女に勧めてみていた。

黒いシャツにはピンク色のリボンがいくつかあしらわれている。

同じくピンクのチエック柄のスカートは短く、身に着ければきっと彼女の白い太ももを良い具合に引き立ててくれるだろう。


黒にピンクのラインの入ったニーソックスも忘れない。

コレに黒いパーカーを羽織ればさらにイメージ通り。 いや、小さな黒い肩掛け鞄も捨て難い。

そう、俺は自分の好みの行くままに彼女に地雷系ファッションを勧めるという暴挙に出ていた。


ノッていた。

自分かやばい事をしている自覚がありながら性癖の奴隷となっていた。 

どうやら欲望に素直になり過ぎたみたいだ…。


もうあれだ…グッバイ世界って奴だ。



「……ふーん…これ…地雷系ファッションってヤツですよね?」


「あ…その…ごめん…ちょっとしたジョークみたいな?その…冗談だから…さっきの白いワンピースが良いと思うよ?」


「ふーん…」


彼女は俺の手の中の地雷系衣装一式を奪い取るかの様に分捕るとそれを買い物カゴに叩き込んだ。



「え?買うの?」


「取ってつけたみたいにワンピース選ばれても買いたい気分になりませんからね〜。ここはこの地雷系ファッション買っとく方が面白いでしょ?先輩はこういうのがお好みみたいですし?」


「いや…結城さんの買い物なんだから結城さんの好みの服を買うべきでは?」


「………。いいんですか?そんな事をいって?」


「え?……いいとは…?」


「例えば……この服を着た私の自撮り画像とか……みたくありませんか?」


「自撮り……だとっ!?」


「ふふ…めちゃくちゃ良い反応ありがとうございます♪じゃ、買ってきますね?」


「あ…お…おう」



わからない…

本当にわからない。

彼女の考えが…



彼女の行動の端々に俺の好感度を上げたいという意思みたいな物を感じるがそんな事がありえるのか?

俺みたいな底辺アラサーサラリーマンに彼女みたいな高嶺の花が?

ありえない…普通にありえない…。



それはそれとして…彼女の言う自撮り写真にはそれなり以上の興味…いや、期待をしている欲望に正直な自分がいるのだった。


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