基準は解釈で変わるもの?(タマゲッターハウス:エッセイの怪)
あなたは小説を投稿する時に、どのジャンルにするかを迷ったことはありますか。
また、他の方の作品で『あれ? この内容でなぜこのジャンル?』と疑問に思ったことはないですか。
このお話は『小説を読もう!』『小説家になろう』の全20ジャンルに1話ずつ投稿する短編連作です。
舞台や登場人物は別ですが、全ての話に化け猫屋敷?が登場します。
とある古屋敷に黒猫の獣人が住んでいました。
今夜はそこに来客があったようです。
「よくきてくれたね。まっていたよ。白猿さん。」
「お招きいただき、ありがとう。黒猫さん。で、今回は『小説家になろう』のジャンル定義の話をしたいって?」
「うん。ガイドラインにジャンルの説明はあるけど、吾輩が読んでもわかりづらいのもあった。その辺を考察しようと思うんだ。投稿するときにどれを選ぶか迷うこともあるよね」
「まぁ、ガイドラインを読んでもわからない部分は、作者達の判断に任せりゃいいと思うぜ。ガイドラインを見てなくて、勘違いで違うジャンルで投稿する人はいるかもな。ジャンルの選択で迷う時は『おすすめキーワード』も参考になるぜ」
「おすすめキーワードは、なろうのガイトラインでも『投稿する作品のメインの要素がおすすめキーワードにある場合、チェックを付けていただきますようお願いします。』とあるね。実際にチェックをつけるかは作者の任意だけどね」
「では全二十ジャンルを順に見ていこうか。これが五つの大ジャンルに分かれている。まずは『大ジャンル:恋愛』からだ。異世界と現実世界があるな」
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大ジャンル:恋愛のおすすめキーワード:
異類婚姻譚(※1)、身分差、年の差、悲恋
※1 人と人以外の存在との恋愛を取り扱った作品
異世界
恋愛を主題とし、異世界を主な舞台とした小説。
おすすめキーワード:ヒストリカル、乙女ゲーム、悪役令嬢
現実世界
恋愛を主題とし、現実に近しい世界を舞台とした小説。
おすすめキーワード:オフィスラブ、スクールラブ、古典恋愛(※2)
※2 古典文学をモチーフとした恋愛作品
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「『恋愛』は大ジャンルにもおすすめキーワードがあるね。異世界・現実世界の二つを間違える人はそうそういないよね。異世界と言いつつ、現代日本にしか見えない舞台だったり、現実世界と言いつつ奇跡がおこったりすると微妙だけどね」
「強いて言えば、異性同士の恋愛要素が全くなかった場合が怪しいか。同性での友情どまりの場合に恋愛と言えるかだな」
「ジェンダーのことを考慮すると、同性でもいいはずだよね。その場合は読み手のことを考えてキーワード設定がいるね」
「作品によっては登場人物が本格的な恋愛関係になる前に終了することもあるよな。っていうか、作者のアホリアSSは恋愛ものが苦手だから、登場人物が本楽的に付き合い始める前にお話が終わることもあるぜ」
「相思相愛ではない場合はどうだろう。いずれかの一方的な偏愛で、相手方にその気がない場合って恋愛ジャンルでいいのかな?」
「その場合は舞台設定にもよるけど、純文学かコメディー、あるいはホラーになりそうだぜ。じゃあ、次に行ってみよう。『大ジャンル:ファンタジー』を考えてみようか。ハイファンタジーとローファンタジーがあるぜ」
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ハイファンタジー
現実世界とは異なる世界を主な舞台とした小説
おすすめキーワード:オリジナル戦記
ローファンタジー
現実世界に近しい世界にファンタジー要素を取り入れた小説。
おすすめキーワード:伝奇
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「ハイファンタジーの舞台は異世界だったり、おとぎの国や童話の世界、別の星に異次元ってのがあるかな。最後の二つはSFにもなりそうだけどね。小説家になろうで一番人気のジャンルだ。その分、ランキングの競争率も高いと言える」
「ハイファンタジーは昔のヨーロッパ風の世界設定が多いかな。ナーロッパと揶揄されることもあるな。書籍のファンタジー小説やゲームなどでみられる中世ヨーロッパ風ファンタジーが元ネタだぜ。剣と魔法がでてくる世界だな」
「ハイファンタジーは西洋風で、ローファンタジーは日本風が多いかもね」
「和洋折衷の世界で、金髪や銀髪のカタカナの名前のキャラと、黒目黒髪の漢字の名前のキャラが混在している場合はどっちだろう」
「その場合は、『ハイファンタジー』『ローファンタジー』のどっちでもいいかも。書き方によっては外国を舞台にしたローファンタジーもあるかな」
「悪霊や妖怪を退治する退魔ものとか、未確認生物UMAがでるのもローファンタジーかな」
「内容によっては、ホラーやSFでもよさそうだね」
「次は『大ジャンル:文芸』を見てみよう。これはサブカテゴリが七つもあるな」
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純文学
芸術性に重きを置いた小説。
ヒューマンドラマ
人と人との交流、人の一生、人間らしさ等を主題とした小説。
おすすめキーワード:日常、青春、ハードボイルド、私小説、ホームドラマ
歴史
過去を舞台にした小説。時代小説、タイムトラベルものを含む。
おすすめキーワード:IF戦姫、史実、時代小説、逆行転生(※3)
※3 現代に生きていた人間が死亡後、歴史上の人物等の過去の人物に生まれ変わる作品
推理
事件等を推理し、謎解きを行う過程を主体とした小説。
おすすめキーワード:ミステリー、サスペンス、探偵小説
ホラー
読者に恐怖感を与えることを主題とした小説。
おすすめキーワード:スプラッタ、怪談、サイコホラー
アクション
戦闘描写、アクションシーンを主体とした小説。
おすすめキーワード:異能力バトル、ヒーロー、スパイ、冒険
コメディー
読者を笑わせることを主題とした小説。
おすすめキーワード:ラブコメ
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「『純文学』ジャンルがわかりづらいね。おすすめキーワードもない。そもそも小説に芸術性って、どう説明するかね」
「まずは小説を『大衆小説』と『純文学』の二つに分けて考えてみよう。前者は娯楽小説とも言って、読者を楽しませるような書き方だ。多くの人が想像する小説のイメージはこっちだろうな。起承転結をいれて、話にメリハリをつけることも重視されるぜ」
「後者はどうだろう。起承転結がないから、淡々とした文章になるのかな」
「純文学は読者に媚びずに、書き手が『優れた文章』『美しい描写』で書くんだ」
「観光名所のような景色を題材にするのかね」
「『美しい風景』や『美しい音』『美しい心』などを題材にすることもある。汚い題材で『美しい書き方の文章』も該当するぜ」
「美しい文章って誤字脱字がないとか、読者が引き込まれるような魅力のある展開とかかね」
「ちょっと違う。純文学では、本来はストーリーの良しあしや面白さは重視されない。題材は『〇〇とは何か?』『あなたはどう思うか?』という問いや、社会問題などを扱うことが多いかもな。主人公自身がどう思っているかをハッキリとは書かず、いろいろな解釈ができることもある。逆に登場人物の繊細な心理描写の変化で美しさを表現することもあるぜ。まぁ、大衆小説と純文学の両方に当てはまる小説もあるけどね」
「うーむ。なんだか難しい内容になるのかね」
「書籍での純文学は、多くの読者にとっつきにくいぜ。明治時代の日本の作家が『読者に媚びない小説』として書かれ始めたのが純文学だ。作者と読者の考え方に大きな開きがあるとする。作者の方から歩み寄って読みやすくしたのが大衆小説。読者が歩みよらないと理解できないのが純文学って考え方もあるぜ」
「だからと言って、『難解な小説』が純文学というわけじゃないんだよね」
「純文学の場合、書き方や表現方法が斬新だった場合に芸術的とみなされる場合もあるぜ。書籍での純文学では、作者の身の回りのことを描いた『私小説』も含まれる。ただし、単なる身の上話じゃなくて、芸術性が感じられる前提だな。おすすめキーワードの『私小説』は、純文学じゃなくてヒューマンドラマに入っているし」
「純文学って、実際にあったノンフィクションが主流かな」
「フィクションでもいいぜ。さっきの『私小説』がノンフィクションってだけだ。アホリアSSの書いた純文学もフィクションだったぜ」
「『純文学』ジャンルに投稿されている作品って、大衆小説と区別されているのかな」
「書いた人によって、純文学の解釈が異なっているかもな。書籍の『純文学』でもいろいろなパターンがあるし、現在は『純文学』『大衆小説』の区別があいまいだ。『小説家になろう』の場合は、読みづらい小説はあまり読まれないだろうし、読んで面白くない小説には評価もつきにくい。なろうでよくある『ライトノベル』は大衆小説をさらに読みやすくしたものだ。ライトノベルで芸術的な表現や書き方の独自性を出したものが、なろうでの『純文学』になるかも。じゃあ次、『ヒューマンドラマ』ジャンルを見てみようか」
「『ヒューマンドラマ』は分かりやすいね。人と人との交流を書けばいいんだよね」
「ヒューマンドラマは映画や舞台で使われた用語で、本来はシリアスな内容になりがちだぜ。人の半生や成長の軌跡を描くこともあるな。ほのぼのした『ホームドラマ』だと別のカテゴリでもいいかも」
「おすすめキーワードにホームドラマがあるから、ほのぼの系でもいいよね。それと、ヒューマンと言っても、主人公がロボットや動物、亜人でもよさそうだね」
「次は『歴史』ジャンルを見てみよう」
「『歴史』は時代小説かな。サムライの出る時代劇とか昔の有名人の伝記とか」
「通常は現実世界の過去が舞台だな。たまに異世界とか他の星の歴史が書かれることもあるけど、歴史ジャンルと言えるかは疑問だ。他に『製品の歴史』とか『ファッションの歴史』のように特定の事項について紹介する場合もあるな。現代が舞台で、登場人物が歴史的な出来事を会話する小説もあるぜ」
「過去って、どのぐらい前が許容範囲かな。十代の主人公が自分の人生を顧みる……というのは歴史と言えるか」
「その当人にとっては長い『歴史』だろうけど、十~二十年前までだと苦しいかもな。明確な基準はないけど、親世代の話題も少し入れた方がいいかも」
「過去の日本が舞台で、鬼とか妖怪を退治する場合はどうだろう?」
「怪物が出るとローファンタジーになりそうだな。過去への転生や転移だとファンタジーやSFになりそうだけど、『小説家になろう』では歴史ジャンルでもいいんだな」
「過去に転生して歴史改変するお話も定番だね」
「転移した場合は、主人公がその時代で受け入れられるのは難しい気がするぜ。現代人の日本語が通じない可能性が高いし、当時の日本人から見れば現代人は骨格からも外国人のように見えると思うぜ。まぁ、作り話にそこまでつっこむのは野暮だな。次は『推理』ジャンルを見てみようか」
「『推理』はナゾトキのお話だね。わからない『謎』があって、それを解明する小説だね」
「犯罪事件などを探偵役が解決することもあるし、日常の謎を調べる話もある。いなくなった人やなくしたものを探すとか、過去のできごとの真相を考察する話とかもあるな」
「アホリアSSは、なぞなぞを入れることもあるけど『推理』といえるかは微妙だね。おすすめキーワードにミステリーってあるね。だけどミステリーって推理小説という意味の他に、神秘や怪奇という意味もあるよね」
「たまに推理ジャンルで、推理じゃない方のミステリー作品をみかけるけど、いいのかなぁ……。次は『ホラー』ジャンルを見てみようか」
「読み手を怖がらせる小説だね。呪いや幽霊とか超常現象をともなうことが多いかな」
「ファンタジー要素やSF要素がなくても、登場人物+読者が恐怖を感じる話もあるぜ。『怖い人間』や『怖い事故』が扱われることもあるな」
「お化けや妖怪が笑いをとるホラーコメディーが、『ホラー』ジャンルでいいかは議論の余地があるね」
「タマゲッターハウスもホラーコメディーだ。そこはつっこまないでおこう。次は『アクション』ジャンルだな」
「『アクション』は戦闘シーンがある小説かな。ヒーローものとかチャンバラとか」
「危険からの脱出シーンとか、登場人物の動きが主体ならOKだぜ。武道や格闘技、あとはスポーツものもOKだな。では、次は『コメディー』ジャンルを見てみようか」
「『コメディー』は読者を笑わせるお話で、ギャグ小説だね」
「大笑いじゃなくて、クスッとなるとか、ニヤリとなるのでもOKだぜ。キャラクターのギャップを持たせて意表をついたり、大げさな事象がおこったり、登場人物のズッコケで笑いを取る例もあるか」
「このジャンルは他のジャンルとも共存しそうだね。おすすめキーワードでラブコメがある。コメディー要素のある恋愛ものは、大ジャンル恋愛よりコメディーの方がいいかもね」
「次は大ジャンル『SF』を見てみようか。四つのサブカテゴリがあるぜ」
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大ジャンル:SFのおすすめキーワード:近未来、人工知能、電脳世界
VRゲーム
VR技術を利用したゲームが主体となる小説。
おすすめキーワード:VRMMO
宇宙
宇宙を舞台とした小説。
おすすめキーワード:スペースオペラ、エイリアン
空想科学
実在、非実在を問わず、何らかの技術・理論の要素を含む小説。
おすすめキーワード:サイバーパンク、スチームパンク、ディストピア、タイムマシン
パニック
天災・汚染・大事故・侵略等の危機的状況下を舞台とした小説。
おすすめキーワード:怪獣、天災、バイオハザード、パンデミック
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「『VRゲーム』は仮想現実ゲームのお話だね。別世界に入ったように錯覚できるレベルで、肌ざわりや食べ物の味まで再現されるお話もあるね。ファンタジー的な話も多いけど、未来の技術だからSFの一種になるんだね」
「VRゲーム中の主人公は、現実世界ではヘッドセットをつけて寝ている設定がよくあるぜ。いわゆるログアウトによる現実世界への帰還ができない場合は、『異世界転移』のキーワードの対象になるかもな」
「VRゲームのプレイ中、あるいはエンディングシーンから異世界に召喚されたり、ゲームと思ったら異世界だったというネタもよく見るね」
「んでは次は『宇宙』ジャンルを見てみようか」
「『宇宙』はわかりやすいかな。未来の世界で地球から外の天体へ生活圏を広げたものもあるし、地球とは無関係な別の星の場合もあるね」
「地球が舞台のお話で、その世界の人物が宇宙旅行するネタが入っている場合もあるぜ。現実世界が舞台で、未来の宇宙旅行の話をするだけの場合は、どうだろう?」
「その中の『宇宙旅行の話』が作中作のSF小話の場合は『宇宙』ジャンルでもいいと思うね」
「んでは次。『空想科学』ジャンルにいってみよう」
「『空想科学』は一般的なSFかな。未来の世界とか、異星人・異世界人からもたらされた超科学が登場する作品だね。おすすめキーワードのサイバーパンクって、コンピューターとかネットワークーが発展した未来の話だね。ネットワークに入りこむ電脳世界ってVRMMOに似ているかな」
「VRMMOは体験ゲームだな。サイバーパンクでの電脳世界は、業務や趣味でネットワークの世界に入り込んで情報を調べる内容だと思う」
「おすすめキーワードのスチームパンクはどうだろう。蒸気機関の時代で電気があまり使われていない、ある意味で時代遅れの世界なのかね」
「蒸気機関が主要な動力源だけど、それが発展した未来の世界だ。ガソリンエンジンより高機能な未知の技術の蒸気機械がでてくるな。歯車やアナログ機械を身体に埋め込んだサイボーグなんかもでるかも」
「おすすめキーワードのディストピアはどんな世界かね。理想郷という意味のユートピアとは逆になりそうだね」
「科学を発生させ過ぎて滅びかけている世界とか、コンピュータに支配されて人権が脅かされているのが多いぜ」
「魔法とかお化けが出る場合でも、超科学の道具などが出てれば『空想科学』ジャンルと言えるかもね」
「日常でのちょっと不思議な体験の場合は『空想科学』『ローファンタジー』のどちらでもいいかも。じゃあ次。『パニック』ジャンルにいってみよう」
「『パニック』は群衆が逃げ惑うイメージがあるね。そうなる手前の何かの事件・災害などでも終わらせてもOKかもね」
「火山や津波、伝性病など現実にありそうな事件の場合もあるし、ゾンビなどのモンスター被害や怪獣災害も『パニック』になるな。異世界が舞台で、モンスターの大氾濫を描く場合でも該当するかも」
「群衆ではなく一人の登場人物が、落ち着きがなくなって混乱している場合はどうだろう」
「個人のパニック発作やパニック障害はこのジャンルとは無関係だぜ。群衆が混乱するパニック映画からきているものだ。じゃあ次。大ジャンル『その他』にいってみよう。サブカテゴリは五つだ。この大ジャンルには、おすすめキーワードがないな」
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童話
幼年、児童に向けた内容の読み物。
詩
言葉に美と響きを乗せて想いを表現している作品。
エッセイ
個人的観点により思想や物事を論じている作品。
リプレイ
TRPGのプレイ結果を文章にて記録したもの。
その他
上記ジャンルに該当しない作品。
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「『童話』は子供向けに書かれたものだね」
「そうだけど、子供の定義をどう考えるかだな」
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1)小学校入学前の子に大人が読み聞かせるもの。幼年文学。
2)小学校低学年(一・二年生)が自力で読める話。
3)小学六年生以下が読むことを対象にしたもの。児童文学。
4)十代の青少年に読ませるもの。ティーンズ文学。
5)アンデルセン童話やグリム童話、世界昔話などの作風で大人向けのもの。大人の童話
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「なろうの定義では1)~3)になりそうだね。実際にはそれより大きい子を想定しているような小説もみかけるけど」
「未就学児とか小学校低学年が自力でパソコンやスマートフォンで『小説を読もう!』『小説家になろう』にアクセスする可能性は低いだろうな。だからといって、小さい子が読めないとか理解できないお話を『童話』ジャンルにいれるのはどうかと思うぜ」
「親が子供に読み聞かせるとか、親がスマホを子供にかしてあげて自力で読めるような内容を想定した方がいいね」
「アホリアSSが童話を書くときは『漢字チェックサイト』をつかって、小学校では習わない漢字にはルビを振ったり、やさしい文章に変えているらしいぜ。対象学年は小説によって違っているみたいだけどね」
「そうだね。でもアホリアSSの童話って、前半だけ童話パートで後半は日常パートのものもあるね。これが『童話』ジャンルと言えるかは怪しいけど」
「次は『詩』ジャンルを見てみよう」
「『詩』は作者が自然や日常生活で受けた感情や感動をリズムのある言葉にしたもの、かな。一定のパターンで複数行を並べるものと、各行が自由でバラバラに書かれたものがあるね」
「パターンにはまっていれば定型詩で、ばらばらだと自由詩かな」
「定型詩で、『韻を踏む』という手法もあるね。言葉の子音が同じものが繰り返すものだね。句読点……文の最後の点や丸は、詩ではつけないことが多いかもね」
「『句読点はダメ』ってルールはないぜ。ただ、日本語の短歌や俳句が句読点がない時代につくられたから、詩でも使わないって人もいるな」
「句読点の代わりに三点リーダ……や長音--で代用することもあるね」
「次は『エッセイ』ジャンルに行ってみよう」
「『エッセイ』は自由な形式で、気軽に自分の意見などを述べた文だね」
「このジャンルでなろうの問題定義を話題にすると、注目度が高まることもあるぜ。まぁ、会員登録している人の興味を引くネタだからな」
「エッセイでフィクション小説を書くのはどうだろうね」
「その小説が、作者の意見を代弁するようなものならありだと思うぜ。単なる娯楽小説なら別ジャンルだし、社会問題をフィクションで訴えるなら純文学の方がいいと思う」
「我々がやっているような。キャラクターの掛け合いの場合もあるね」
「んでは次。『リプレイ』ジャンルにいってみよう」
「『リプレイ』はテーブルトークRPGのプレイ記録を文書にしたものだね。このジャンルに投稿された作品群は『ジャンルの意味を間違えているのでは?』っていう割合が一番高いと思うね」
「おいらも子狸くんに教えてもらったけど、このジャンルは創作小説じゃなくて、作者が遊んだ記録だな。市販のTRPGを利用した場合は、投稿時にどのルールを使ったかのチェックを入れる必要がある。一覧にない市販シナリオでのプレイ記録は、版権の問題で投稿できないぜ」
「リプレイを元にした小説や、オリジナルのTRPGルール紹介もあるね。アホリアSSは架空のTRPGルールでのリプレイ風小説を投稿しているよ」
「このジャンル、投稿された小説の半分以上が『テーブルトークRPGと無関係』みたいだな。書いている作者が『テーブルトークRPGって何? そんなものは知らない』って場合もあるかも」
「リプレイはランキングに載らないから、間違った投稿が多くても目立たないみたいだね」
「んではラスト、『その他』ジャンルだ」
「『その他』は、これまで紹介した十九のジャンルの『どれにも該当しない』ものだよね。該当しそうなジャンルが複数あって迷う場合は『その他』でもいいのかな」
「ほのかな恋愛要素に軽いギャグって感じで、これまでの十九ジャンルの要素が薄いなら『その他』でもいいと思うぜ。童話っぽいけど子供向けじゃないとか、ホラーのつもりだったけど怖くない場合は迷うかもな。誰が見てもはっきりと特定できるジャンルがある場合はそっちだと思うけど」
「どのジャンルにするか迷うこともあるよね。例えば『ファーブル昆虫記』みたいなのはどのジャンルかな」
「昆虫に関する意見や研究成果なら『エッセイ』でも『純文学』でもいいと思うぜ。はっきり特定しづらいから『その他』でもいいかも」
「根本的な話だけど、小説の内容と無関係のジャンルで投稿するのって、よくないのかな」
「それをやると『カテゴリエラー』とか『ジャンル詐欺』などと呼ばれることもあるぜ。違うジャンルで投稿したとしても、なろうの運営からの警告などはなさそうだけどね」
「ふむ。禁止事項ではないってことかね」
「ガイドラインでは『全年齢作品の投稿の場合、該当するジャンルを選択してください』となってて、小説にふさわしいジャンルを選ぶように書かれている。ガイドラインを見てもわかりづらいとか判断に迷う場合は別だけど、明らかに違うジャンルに登録するのはどうかと思うぜ。せめて、おすすめキーワードに該当するネタを小説内に入れてほしい」
「書いた小説が複数のジャンルに該当する場合はどうだろう。一番近いジャンルを選ぶのかな」
「前に子狸くんとも話したけど、A・B・Cの三つのジャンルに該当していて、Cの要素が一番少ないとする。この場合は少しでもジャンル要素があればCでも問題なさそうだぜ。特定のジャンルに作品が集中しすぎるのを防げるかも」
「オチのネタバレを避けるために意図的にジャンルを変えている場合もあるよね。序盤はSFと見せかけてラストでファンタジーにするとか」
「それはアリだと思うぜ。ただし、他ジャンルと思わせて実はホラーだったりすると、読者に怒られるかもしれないけどね」
「ジャンルに合わない小説が多数投稿されて、ジャンルに見合った小説が埋もれることもあるよね。たとえばリプレイとか」
「季節ごとに開催される公式企画でも、ジャンルが怪しいのが散見されるな。アホリアSSもジャンルの要素が弱いのを公式企画で出すこともあるけどね」
「純文学はどうだろう。白猿さんの説明だと、本来の純文学って読みづらいものだよね。だとすると純文学は評価が低くなり、純文学ではないものがランキングにでるかも」
「純文学ジャンルで高ランキングのものは純文学じゃない……とは言えないな。それに読みづらい小説が読まれないってのは、Web小説サイトの宿命だしな」
「小説家になろうでは、『純文学』でも読みやすさや面白さも必要ってことかな」
「Web小説ではない、原稿用紙に書かれた小説があるとする。その内容が良作で、もし出版社でのコンテンストに出せば上位になりそうなレベルだとしよう。でもそれをWeb小説サイトに投稿したとしても、高評価になるとは限らないぜ」
「小説サイトの読者に合わないとか、題名の長さや書き方が違うとかかな」
「それもある。あとはPCやスマホのWebブラウザで横書きでも読みやすいか。書籍化するなら縦書きにも対応した書き方でないといけない。その小説サイトでの流行りに乗っているか。なろうで名前が知られていて『逆お気に入りユーザー』が多数いる場合と、全く無名の場合を比較すると、評価ポイントの付き方に天地の開きがあるぜ。小説サイトはライトノベルが合ってて、従来の意味での純文学は合わないものと考えた方がいいかも」
「つまり純文学ジャンルに投稿する時でも、なろうの読者に合わせた方がいいってことかな」
「読者を置いてけぼりにする純文学を書くなら、Webで投稿してないで芥川賞にでも応募すりゃいい。理解されないものを投稿するのは作者の自由だけど、どう評価するかは読者の自由だぜ。読者を無視した小説は、評価もPVもつきにくいかもね」
彼らが話しこんでいると、使用人らしき少年?が茶菓子を運んできた。
その子はなぜか涙目になっている。
「おや、ティアくん。きみも小説を投稿してたらしいね。どのジャンルだっけ?」
「ボクはかなり前に投稿したから『ノンジャンル』なんだもん。でもボクの書いた小説の評価ポイントは、みーんなゼロなんだもん」
ジャンルが異なるとおぼしき投稿を見た場合でも、その作者への指摘はしない方がよいと思います。
(よほど仲のいい相手なら別ですが)
ここで書いたジャンルの説明も『絶対に正しい』というものではなく『こういう考え方もあるよ』という程度です。
全二十ジャンル制覇を謳っているタマゲッターハウスで、アホリアSSがどういう考えでジャンルを選んでいるかという参考情報になるかも?
『タマゲッターハウス』シリーズの別作品や、以前に書いた『ジャンル違い』についてのエッセイはこの下の方でリンクを張っています。