一章 その7
「だのぼーっ!」
「たのもーっ!」
翌日、僕と大山は肩を並べて登校した。
胸に秘めたる思いは違えど、目的を同じくする戦友として我らの結束は海よりも深く山よりも高い
……結束が深いってどんな感じだろう?
まあ、いい。要するに程度が甚だしいということだ。
その程度が甚だしい結束によって結ばれた僕らは、えいやっと教室前方の扉を開き、
「「……」」
星野ひかりが教室にいないことを知った。
職員室で、僕らは担任に詰め寄った。
「本人から電話があってね、用事が入ったから今日は休むと」
「用事って?」
対人コミュニケーションは僕の役割だ。大山語では正確な意思伝達を行なえない可能性がある。
「それが、家庭の事情ですって言って一方的に切られてしまったよ」
そう言って、初老の男性教諭は遠い目をした。
「最近の子供は何を考えているかがわからん……そもそも伝える気がないようだ。私の若いころは生徒というものは本音で教師にぶつかってくるものだったのだがな……私はどうすればいいのか……」
そんなことを僕に言われても困る。
「ところで、君たちは星野さんとは仲がいいのかい?」
「ええと、まあ、はい」
適当に答えておくことにする。
「じゃあ、これ届けてくれるかな。今日配布したプリントだ。で、住所がここ」
なんだか思いがけない展開になってきた。
担任はプリントとメモを手渡し、疲れ切った表情で最後に、
「彼女のことを、頼んだよ……」
もちろんですとも。