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01 捨てられた赤子

 魔狼の王フレキが、自分の巨大な縄張りを一頭で歩いていると、

(む? まさか本当に?)

 大木の根元に布に包まれた生き物が落ちていた。


(……人の赤子? 人里まで、我の足でも三日はかかるぞ?)

 魔狼の王であるフレキの足で三日と言うことは、人の足では一月かかる。


(捧げ物か? わざわざ、旨くもない人など襲わぬというに)

 フレキは強力な魔物であり、人々に畏れられている。

 それゆえ、稀に捧げ物を贈られることがあるのだ。


(同族に捨てられたのであろうな。哀れじゃな)


 フレキが赤子の匂いを嗅ぐと、

「……………………」

 赤子は怯える様子もなく、じっとフレキのことを見つめていた。


「GAU」

「…………?」


 吠えてみたが、怯えない。

 フレキの声に合わせて、首をかしげているので耳が聞こえないわけでもなさそうだ。


 フレキは赤子の前に座って、考えた。


(昨夜の夢は……こやつのことであろうか?)

「…………」


 その間も、赤子は、綺麗な赤い目でじっとフレキのことを見つめている。

 赤子の割に頭髪が多いうえに、フレキと同じ銀髪だった。


(……普通の赤子ではなかろうな。仕方あるまい)

 フレキは観念して、人の赤子を包む布を咥えると、巣へと持ち帰った。


(……乳を分けてもらうか)

 ちょうど子を産んだばかりの娘狼がいる。

 とはいえ、人の赤子を狼が育てることなど不可能だ。


(どれほどもつか。……安らかに天に還ることができるよう、せめて……)

 フレキは心の中で、己の神に祈った


 ◇◇◇◇


 そして十年が経った。

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