第七十四話
だいぶ手抜きになったテニス回
試合当日まで放課後はテニス部の練習に参加していた。
試合当日の土曜日、朝起きて学校に向かうとすでに皆着ていた。
「おはよー。」
「おはー。」
「おはよう。」
みんなまだ眠そうに挨拶をした。少し早めに来て練習試合ができるように準備をすることになっていた。
準備をしていると今日相手する相手の学校が来た。
「おー、弱そうだねー。」
相手を見た麻衣が失礼なことを言っていたが、実際に一年生が多いのか中学生のような見た目な子が多かった。
「助かるけどね。」
「そういえばこのまま試合するの?」
加奈が来ていたジャージを引っ張りながら聞いた。
「そういえばテニスウェアみたいなの来てるね。」
早霧ちゃんや凪ちゃん、相手はテニスウェアを着ていたが私たちは四人ともジャージだった。
「あー、四人の分準備できなかったからジャージで出て。」
凪ちゃんが「ごめんー」と謝りながら走ってどっか行ってしまった。
「これはかなり目立つね。」
「ダサさと弱さ極まりけりだね。」
テニスウェアの集団にジャージ姿が入ると明らかに素人感が漂っていた。「今日はダブルスだから由宇は加奈とね。」
凪ちゃんの言葉にうなずいた。
「こんな感じなんだ。」
「ねー。」
今まで運動部に入ったことがない麻衣と愛理が試合の雰囲気を楽しんでいた。
練習試合なのでそれぞれの保護者が見に来るくらいだが、二人にとっては新鮮のようだった。
「親って見に来るものなんだ。」
「どっちみち遠いから無理だけどねー」
「私は暇なら見に来るって言ってたー。」
私や麻衣みたいな寮生は親は遠くに住んでいるので見に来ることは難しい。愛理っちも忙しいそうなので必然的に加奈っちだけである。
お互い準備が終わって試合ができる状況になったので早速試合に入った。
「麻衣も愛理も頑張れー。」
「落ち着いてねー。」
一番最初は麻衣と愛理のペアだった。相手の二人は見た目的には一年生だろう。
審判をしている生徒から合図があり試合が始まった。
麻衣のサーブから始まって帰ってきたボールを愛理がホームランで返していた。
「そういえば麻衣にルールってどれくらい教えた?」
隣で見ていた加奈が聞いてきた。ちなみに早霧ちゃんや凪ちゃんはコートの周りで球拾いとタッチ際の判定をしていた。
「んー、一通りは教えたけどあんまり聞いてなかったよ。」
「だよねー。あの感じだと。」
二人とも一週間前に比べたら上手になっていたが元が残念なのでラリーがすぐ切れていた。
問題なのはそこからで、卓球と勘違いしたのか「次もサーブって私?」と愛理に聞いていた。
「愛理はルール大丈夫なの?」
「やったことはないだけで詳しいから大丈夫って言ってた。」
二人の実力は絶望的だが幸い相手も初心者なのか緊張からなのか、ミスを連発していたので以外と試合になっていた。
「意外と接戦だねー。」
「スコアだけ見ればね。」
「内容はひどいもんね。」
加奈がコロコロと笑いながら答えた。
基本的に麻衣と愛理の返球は山なりの遅いボールで、相手は普通に返そうとしているけどネットに引っかかったりコートに入らなかったりしてシーソーゲームが続いていた。
「やった。勝った。」
「やったー。」
試合が終わり麻衣と愛理がハイタッチしていた。
「まさか勝ったの?」
最後の方は私は加奈と一緒に体を動かしていたので見れていなかった。
「うん。余裕だった。」
麻衣が堂々と嘘をついてうなずいた。見ていた時もずっとシーソーゲームは続いていたので最後までグダグダだったのだろう。
「それじゃあ二人も頑張ってね。」
愛理が勝てて相当うれしかったのかすごい良い笑顔で応援してくれた。
「それじゃあ頑張ろうか。」
「まってなんか相手凄い強そうなんだけど。」
私たちの相手はさっきと同じように顔に幼さがあるので一年生なんだろうが明らかに経験者の雰囲気が出ていた。
さっきまでとはスピードが全く違う相手のサーブが来たのでまぐれで返すと勢いよくスマッシュを決められてしまった。
「ちょっと、加奈。これはむりよ。」
前衛の位置にいた加奈のジャージを引っ張り言うと加奈も真っ青な顔をしてうなずいた。
「私あんなサーブ取れないよ。」
私たちがおびえるように話しているとすでに試合を終えた二人が「まだ言ってんだよー」「私たちが勝てたんだからかってねー」と呑気に声援を送っていた。麻衣に関しては寝転がってこっちを見ているのかよくわからない姿勢だった。
「さっきと全然違うじゃーん。」
「まぁ初心者がさっきの二人だけだったんだよ。」
「どうしようか。」
「まだ由宇の方が戦える可能性があるから由宇を中心に戦おうか!」
「う、うん。」
加奈の気迫に押されてなんの自信もないけどうなずいてしまった。
「やったー。勝ったね。」
「うん。おつかれー。」
ハイタッチをして喜んでいる二人を私と加奈は座り込んでで眺めていた。
「おつかれさま。」
「二人ともだらしないなー。」
試合を見ていた二人が近づいてきて感想を伝えてきた。
この二人がした試合の半分くらいの時間で私たちはぼろ負けした。
「あー、強すぎだよー。」
「ごめんー、私なんもできなかったー。」
「そんなことないよ。あれは無理だよー。」
すぐに次の試合があるので私たちはコートをでて邪魔にならないところに移動した。
「それよりお昼ご飯にしようよ。おなか減った。」
「今動いてたから無理。」
私が答えると麻衣が脇腹をつついてきた。さんざん振り回されてずっと走っていたので体が動かなかった。
結局麻衣に押されてお弁当を取り出した。
「やったー。サンドイッチだー。」
四人分準備したお弁当を広げてお昼ご飯にした。
「いただきまーす。」
「これおいしい。」
「全部この学校のものだよ。」
「このパンも?」
「うん。小麦粉貰って焼いてみた。」
「すごーい。」
運動したおかげでみんな食欲がすごくてパクパク手が進んでいた。
「凪ちゃーん。」
「早霧ちゃんもがんばってー。」
コートでは二人が強そうな相手と戦っていた。私たちの試合の三倍くらいの速さでボールがコートを行ったり来たりしていた。
「テニスってやっぱこうだよね。」
「私たちがやってたのは温泉卓球のようなものだった。」
「すごいねー。」
コートでは試合が繰り広げられ、その周りには審判や球拾いをしているチームメイトがいて保護者は応援や写真を熱心にとっていた。
「ここだけピクニックみたいだねー。」
「たしかに。」
加奈の言葉にしっくり着てうなずいた。麻衣に関してすでに試合に興味はないらしく目の前のご飯の夢中だったし愛理も体力を使い果たしたようで加奈に寄りかかっていた。
「テニス部のみんなには悪いけどもう私たちは使い物にならないねー。」
「十分頑張ったよ。後は応援してよ。」
「そうだね。」
そう言ってお弁当を食べながら応援していた。
「みんなー。」
「もしもーし。」
声を掛けられながら体を揺さぶられるので何事かと思って顔をあげると凪ちゃんと早霧ちゃんがいた。
「おはよー。」
「よくねてたね。」
「え?」
よく見ると私の周りに三人がぐっすりと眠っていた。どうやら私も眠っていたようだった。
「あれ。もう終わっちゃった?」
そういいながら周りを見るとすでに日が傾いていた。
「あー、ごめんね。」
「うんうん。いいよー。みんなが来てくれたおかげで今日試合で来たから。」
「そうそう。四人がいなかったら多分中止になってたし。」
二人がそう言ってくれるが、すでに片付けも終わってるようだし少し申し訳ない気持ちになった。
「あれ?」
私たちの会話の声で三人が目を覚ました。
「いつのまにか寝てたー。」
「みんな疲れてたんだよ。」
「んー。体痛い。」
「コンクリートの上で寝るからだよー。」
凪ちゃんと早霧ちゃんがたのしそうに話しているのを見て改めていい子たちだなー、と思いつつ未だに寝転がっている麻衣を引っ張り起こした。
「なにするんだー?」
「みんなでお疲れ会やるんでしょ。」
「そうだった。」
「それじゃあ由宇たちの部屋だね。」
「れっつごー。」
みんなで何を食べたいかを話しながら私たちの家に向かった。




