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第七十三話

 今年も体育祭が近づいてきて少しづつ学校全体の雰囲気が変わってきた。

「体育祭かー。もう一年も経ってたのか。」

体育の授業で体育祭の競技の練習が始まるのでその説明を受けていると隣に座っていた加奈が言った。

「加奈は今年もお仕事?」

「そうだね。でも去年ほどかなー。後輩ができたからめんどくさいところは全部任せちゃえばいいし。」

加奈は悪そうな顔で笑いながら言うので由宇もついつい笑ってしまった。

 放課後、いつもの四人で教室でダラダラしていると部活姿の凪ちゃんと早霧ちゃんが入ってきた。

「あっ、いたいたー。」

凪が四人を見つけるなり寄ってきた。

「四人とも暇だよね?ちょっとついてきて。」

「自然な流れで暇って決めつけられた。」

麻衣がつぶやくと私は「どうせ、暇なんだしいいじゃん」と答えた。

「どうしたの?」

愛理が聞くと早霧ちゃんが答えた。

「今週末テニス部の練習試合があるんだけどインフルエンザが流行っちゃってね。人数が足りなくなったからみんなに参加してほしいなぁって。」

「この時期にインフル?珍しいね。」

私が言うと凪ちゃんが「旅行でもらってきちゃったんだって。」と答えた。

「そういえば加奈ちゃんは体育祭の仕事で忙しい?」

「うんうん。今年は暇だから大丈夫だよ。」

「それじゃあ行こー。」

凪ちゃんに連れられて体操着に着替えてテニスコートに向かった。

「あれ?想像以上に少ないね。」

愛理が言う通り周りには五人ぐらいしかいなかった。

「テニス部はもう一つあるからね。そっちは人数も多くて強いけどこっちは弱小で少人数なの。」

ということらしい。

「顧問の先生は?」

「あんまり来ないから気にしなくていいよ。今回の事も話しておいたし。」

早霧ちゃんが言うと凪ちゃんが続けて私たちに質問をした。

「みんなテニスは?」

と聞くとみんな首を横に振った。

「そっかー、まぁ相手も弱いところだから何とかなると思うよ。」

そう言って私たちにラケットを貸してくれた。

「由宇もやったことないの?」

麻衣が受け取ったラケットを振り回しながら聞いてきた。

「うん。球技はあんまり得意じゃないんだよね。特にバットとかラケットを使うやつは。」

中学の頃に卓球をやったことがあったが力加減が全く分からず全然出来なかった。

「それより愛理こそやったことないんだね。意外。」

私がそう言うと

「なんで?」

と加奈が聞いた。

「だってお金持ちって夏に避暑地とかでテニスやってるイメージがあるから。」

私がそう言うと愛理以外の三人が「あー。」とうなずいた。

「そんなことしないよー。夏休みとかは忙しいしなかなか旅行行けないし。それに私っちお父さんもお母さんもインドアだし。」

と言われ私は「そうなんだー」とうなずいた。

「まぁお金持ちが全員テニスやってたら今頃日本中テニスコートだらけになっちゃうか。」

私が冗談でそういうと加奈に「あほなこと言ってないで行くよ」とラケットで頭をたたかれた。

「いたっ。叩かれた―。」

「由宇がふざけるからでしょー。ほら凪と早霧が待ってるよ。」

「麻衣ー、加奈が冷たいー。」

私が麻衣に抱き着くと

「はいはいあ。そうだねー」

と適当にあしらわれた。

 麻衣に引きずれられてテニスコートに経つと早霧ちゃんと凪ちゃんからルールと基礎的な練習方法を教わった。

「これ大丈夫なの?」

最初に壁に向かって近い距離で打つ練習から始めた。なんせ時間がないのでとっとと形だけは取り繕うようにしたい。私は壁打ちくらいなら問題なくできたのだが絶望的なのは横の三人である。

「えいっ」

「あれ?」

「ほー」

とそれぞれ奇声をあげながらラケットを必死に振っている。しかし聞こえてくる音はラケットが空を切る音だけで肝心なボールは真下へ落ちて言っていた。

「この三人やばいかもー。」

その様子を見ていた凪ちゃんが頭を抱えて叫んでいた。

 結局十分ほどやった時点でみんなばてて休憩になった。

「こっちの二人はともかく加奈もだめかー。」

私が言うとすでに方で息をしている加奈が

「テニスってこんなに難しかったんだね。」

と驚いたように言いながらラケットをいじっていた。

「そっちの二人は?」

「なんかボールが動いてる。打とうとしたらいつの間にか視界から消えてる。」

「ねー。落ちるボールの軌道を予測しながらラケット振って当てるなんて頭がパンクしちゃう。」

二人が意味不明なことを言っているのでスルーして練習に戻った。

「打つ時はコートに入れることよりネットを狙った方がいいよ。」

「ネット?」

「うん。ネットのギリギリ上を狙うと著度入ると思う。」

早霧ちゃんのアドバイス通りやってみるといきなりきれいに相手コートにボールが入った。

「おー、入ったよ!」

「流石呑み込みが早いね。」

あぎりちゃんとハイタッチをして喜んでいると後ろから相変わらずラケットにボールが当たらない三人に凪ちゃんがつっこんでいた。

 練習が終わるころには三人は十球中三球くらい当たるくらいには成長していた。

「あー、疲れたー。」

麻衣は完全にエネルギーゼロで地面に寝っ転がっていた。その横には同じように愛理と加奈が転がっていた。

「試合大丈夫かなー?」

私が言うと着替えていた凪ちゃんが答えた。

「まぁ、練習試合だから勝敗はどうでもいいよ。相手も素人の一年とかいるって言ってたから。」

凪ちゃんの言葉にこの人たちはそれ以上にやばそうだけどなー、と持ったけどそう言うならと黙っておいた。

「うー、もう動けない。」

「ほら、帰るよー。」

下校時刻も迫っているので全く動く気配がない三人を無理やり引きずり起こした。三人ともよくわからない言葉を発しながらも着替えて帰る仕度を始めた。

 家に帰ってからも麻衣はずっと呻き語をあげながら寝転がっていた。

「麻衣うるさいー。」

由宇が勉強している横でずっとうなっているので言うと麻衣は「うーん。」と返事をした。

「なんで由宇はそんなに元気なの?」

「私?それは普段から動いてるからだよ。」

「え?いつも私と一緒にいるじゃん。」

麻衣が不思議そうな顔をするのでノートから顔をあげて答えた。

「お掃除と勝手結構体力使うんだよ。それに麻衣がバイトでいない時にたまに走ってるんだよね。」

「知らなかった。」

「言ってないからねー。」

麻衣がバイトに行くようになって時間が空いたので何をしようか考えていていた。その時に自分の体重の変化に気が付き走るようになっていた。

「確かにちょっと丸くなったもんねー」

私の言葉に麻衣が「この辺とかー」と言って頬や脇腹をつまんできた。麻衣も細いが私ももともと陸上をやっていたおかげで今まで贅肉とは友達になったことはなかったけど明らかに最近出会う頻度が上がっている。

「私はこれくらいが気持ちよくていいけどねー。」

と麻衣がまださわってくるので

「やだー、すっごい体重増えてたんだよー。ちょーショックだった―。」

「気にしなくていいのにー。」

と言うが私としてはそうもいかなかった。気になるものは気になるのでとりあえず走り始めたことで元に戻ってきているので良しとしている。

「麻衣といるとついつい食べすぎちゃうからね。」

「でもやせるとここ減っちゃうかもよ。」

と言って服の中に手を入れてきて触ってきた。上の方で私も胸をもみながら言うので慌てて逃げて反論した。

「そんなことないもん。私結構おなかから減っていくタイプだもん。」

「そうなの?」

麻衣がきょとんとした顔で言うのでそのほっぺたを引っ張ってやった。

「それより体痛いんでしょ。マッサージしてあげる。」

「本当?嬉しい。」

私の言葉に麻衣は喜んで近づいてきた。

「硬った。」

マジは十何からと思って足を広げさせて背中を押したがピクリともしなかった。

「こんなことある?ちょっと君たちもおいで。」

私は近くで遊んでいた猫二匹を麻衣の背中の上に重しとして置いた。

「うー、重いよ。」

それでも少し沈むだけ麻衣の背中はそれ以上動かなかった。

「痛いー。これ以上動かない。」

「想像以上だー。」

私も麻衣は体硬いんだろうなーと思っていたけどこれは想像以上だった。

 その後も柔軟とマッサージをしてあげると麻衣は少し体が楽になったようで起き上がった。

「あー、気持ちよかった。」

「一日でこれかー。」

「やばいね。」

麻衣が他人事のようにつぶやいた。

「あれだね。これはご褒美でも用意しないと頑張れないやつだね。」

麻衣がこの感じなら愛理も加奈も今頃こんな感じになっているのだろう。

「本当?何にする?」

「それじゃあ考えておいて。加奈と愛理と一緒に決めよう。」

私の言葉に麻衣は「やったー、何がいいかなぁ」とつぶやきながら早速二人に連絡し始めた。

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