第七十一話
授業が終わって家でゆっくり過ごしていた。
「由宇は個人の研究何するか決まった?」
麻衣が制服も着替えずに床でごろつきながら聞いてきた。
「特にかなー。料理関係とか考えたけど研究することでも無いから。」
「私も決まらない。やっぱそこの畑関連が楽そうだけど。」
「まぁ加奈の話だとグループ組んでやってもいいっぽいから何とかなるでしょ。」
「でも同じ内容じゃダメなんでしょ。」
この前加奈から研究について教えてもらった時にグループで研究していた人がいたという話を聞いた。もちろん一人ひとり内容は違うのだが、それでも一人でやるよりは気持ち的にも手間的にも楽そうだった。
「めんどくさいなー。」
「テストが少ない分ここで評価されるだろうね。」
「どっちがいいのかな?テストもめんどくさい。」
「どっちもどっちだよねー。成績そんな気にする必要もないからどっちでもいい気がする。」
高校受験の時は成績はかなり気にしていたけど大学受験ではそれほど気にすることでもないのでそれほど気を張る必要もなかった。推薦とか特に狙っているわけでもないので気は楽だった。
「さっきから何見てるの?」
話しながら熱心に携帯を見ていたので聞いてみた。
「この辺にバイトないか探してる。」
「バイトするの?」
「うーん、まだ迷ってる。親から暇ならすればって来たんだよね。」
「うちの学校ってバイトオッケーだっけ?」
「学業に支障が出ない程度ならいいって書いてあった。」
「そうなんだね。それで何かいいのあった?」
「特に。今度町にでて探してくる。」
「それじゃあ私もついてく!」
「由宇もバイトするの?」
「うーん。忙しくなるのは嫌だからわかんないけど、麻衣がいかがわしいお店で働かないか心配だからついてく。」
「そんなお店行かないよ。ってか高校生働けないでしょ。」
「ちょっとでもえっちぃ制服とかだったらアウトだよ。」
「まぁついてくればいいよ。」
話しながら猫と戯れていたせいで汚れた麻衣の制服を受け取って話を終えた。
次の日、授業終わりに放課後でそのことを話した。
「そうなんだー。でも私今日病院に行かなきゃだから行けないんだよね。」
「私は今日は先約があるんだよ。」
「そっかー。それじゃあまた明日ねー。」
「決まったら教えてね。」
加奈と愛理は用事で早霧ちゃんと凪ちゃんは部活なので二人で行くことにした。
学校をでて家に帰らずそのまま最寄り駅に向かった。
「学校帰りに町に出るのは久しぶりだね。」
「うん。特に用事もなかったからね。」
町に出る理由と言えば映画を見に行ったり、ショッピングなので放課後より休日に行くことが多い。
「何個かお店見るの?」
「二つだけ。」
電車にのって数駅移動して降りて目的のお店に向かった。
「最初はここ。」
駅ビルを抜けて大通りの一つ横にそれた道にあるカフェだった。
「いらっしゃいませ。」
「すごっ。めっちゃおしゃれだ!」
中は暗めで落ち着いた雰囲気でおしゃれな音楽が流れていた。
「制服もかわいいじゃん。」
「うん。いい感じ。」
一階と地下があり、いい会派テラス席があり、地下は座敷の席があった。
「ここのお座敷ベットみたい。」
「冬は炬燵になってるらしい。」
お座敷は固い地面ではなく、柔らかいマットレスみたいな感じになっていた。見た感じも清潔そうで不快感とかは全く感じられなかった。
頼んだ商品を受け取って空いていた席に座った。
「由宇は何にしたの?」
「カフェラテとクロワッサンサンド。一口食べていいよ。」
「ほんと!?じゃあちょうだい。」
嬉しそうに口を開けるので差し出すとおいしそうにうなずいた。
「おいしい。」
「それじゃあ私も。、、うんおいしい。おしゃれだしおいしいしめっちゃいい場所だね。」
「うん。もうここでいいかも。」
「もう一つはどんなところなの?」
「焼肉屋さん。ここからちょっと奥に行ったところにある。」
「あぁ、あの一人焼き肉ができるところ?」
「そう。ずっと良い匂いがしそうだし、賄いもおいしそう。」
「じゃあ今日の夜ご飯はそこだね。」
「そうだね。」
「そうだとしたらちょっと食べすぎたかもなぁ。」
「私は全然大丈夫だけど。」
そういう割には麻衣はアイスティーとメロンパンとパフェを食べていた。
「私が無理。せっかく来たんだからここでゆっくりしたらちょっと買い物しよ!」
「だねー。」
飲み物が飲み終えるまではゆっくり話していて、そのあとは洋服屋さんで服を見たり本屋に行ったりして時間を過ごした。
焼肉屋さんに行くと時間的がちょうど夜ご飯のせいか外まで並んでいた。
「人気なんだね。」
「楽しみ。」
少し待ってお店に入るとお肉の良い匂いが広がっていた。
「それじゃあまずはタンとハラミとカルビを三人前ずつで。」
麻衣がメニューを開いて注文用のタッチパネルに入力し始めた。
「なぜに三人前?」
「二人前じゃ少ないけど四人前だと由宇が食べられなさそうだから。」
私が一人前で麻衣が二人前で合わせて三人前とのことらしい。お初にあれだけ食べたのによく食べることで。
「じゃあサラダも頼んどいて。」
「はーい。」
麻衣はあんまり興味無さそうにサラダも選んでくれた。
しばらくするとサラダとお肉が運ばれてきた。
「意外と学生もいるんだねー。」
「部活帰りとかなんじゃない?」
大人の人が多いのかなと思っていたけど学生のグループもかなりいて驚いた。中には私たちみたいに女の子だけのグループもあった。
「よく食べるねー。そのテーブルとかすごくない。」
女の子二人の席があるけどすごい勢いでお肉が運び込まれてテーブルの上にいっぱい置かれていた。
「あれってあの二人じゃない?」
「あっ!」
麻衣が言うのでよく見ると先日挨拶に来た私たちのお隣さんの陽葵ちゃんと優香ちゃんだった。
「やっぱあの二人相性いいのかな。」
陽葵ちゃんが大量に網にお肉を乗せているのをみて慌てて優香ちゃんがひっくり返して何か陽葵ちゃんに言っていて陽葵ちゃんは笑っていた。おそらく「乗せすぎだよぉ」と言われて「大丈夫だよ」みたいなやり取りをしていたのだろう。
「見た目とか性格は見るからに真反対なのにね。」
「私の言ったとおりでしょ?」
麻衣がどや顔で言うのでいらってきたので焼いていたお肉を取ると「あっ」と声を上げた。
「ひどい。私のお肉だったのに。」
「どや顔がむかついた。」
「ぶー。どうする話しかけてくる?」
「んー、二人で楽しそうだから今日は院じゃない。」
「だねー。」
せっかく二人で仲よさそうに話しているのでこっちに気を使わせるのもかわいそうなのでそっとして置くことにした。
「ってこっちも頼みすぎだよ。」
二人を観察している間に大量にお肉が運び込まれていた。
「大丈夫。全部食べるから。」
「それじゃあどんどん焼いてこうか。」
そういって私たちもどんどん食べ始めた。
それから数日後、
「そういえばバイト先どっちにするか決めたの?」
「うん。カフェにした。」
「なんで?」
「焼肉屋さんであの匂い嗅ぎながら我慢して仕事するなんて無理ってよくわかった。」
「なるほどねー。」
確かに麻衣があの食欲を掻き立てられる匂いを嗅いで我慢できるとは思えない。
「それじゃあ面接とかあるの?」
「もうやった。」
「え?いつの間に。」
「昨日言ってきた。」
「それで昨日放課後用事あるっていってどっか行ってたのか。随分早く帰ってきたから気づかなかった。」
「なんか電話して行きますって言って行ったらすぐオーケー出た。」
「あー、なるほどね。」
見た目はぴか一なのでこれが面接に来れば即オーケーなのだろう。
「来週あたりから行ってくる。」
「どれくらいで?」
「週一か二。」
「わかった。たまに様子見に行ってあげるよ。」
「えー、まぁいいけど。」
「いいんだ。」
「別に隠すことでもないし。」
「それじゃあ今度みんなで行くよ。」
「はいはい。」
どうせ断っても来るのだろうと麻衣は思い苦笑いしながらうなずいた。




