第五十七話
泊まり込みでの実習が終わり、またいつも通りの学校生活を過ごしていた。次の実習は少しだけ間が空くので落ち付いた日々が戻ってきた。
「いやー、なんだかんだ後期も忙しいね。」
「けっこうまとまってイベントが来たからね。」
部活を行った後、早く終わったのでみんなで教室で話していた。
「このクッキーおいしくできたね。」
「うん、おいしい。」
愛理と麻衣がさっき作ったクッキーをおいしそうに食べていた。このクッキーもほとんどの材料がこの学校で作られたものだ。
「雪やまないね。」
今日は朝からずっと降っていて今もやみそうにない。
「早く晴れてほしいわぁ。」
加奈が鬱陶しいように言った。
「えー、いいじゃん。気分上がらない?」
「由宇はまだそんなこと言ってるの?そろそろあきないの?」
「全然だよ!雨より全然いいよー。」
私が言うと三人は信じられないという感じで首を振っていた。
「雪かきとかめんどくさいよね。」
「わかる。家で手伝わされるけどしもやけになりそうだし、濃しとか痛くなるし。」
愛理と加奈が話していたけど、私からすれば雪かきも面白いので「へー」と聞いていた。
「そういえば授業中に除雪車が走ってたよ。この学校にもあるんだね。」
「うん。この学校は業者さんもよく来るから普通の学校よりかは車の行き来が多いからね。後単純に広いから人力でやるのには無理がある。」
加奈の言葉に私たちは苦笑いしながらうなずいた。この学校で雪かきなんてさすがの私も考えるだけでいやになる。
「あっ、いいところに!暇なら先生の手伝いいてくれないか?」
担任の先生が私たちを見て言った。
「どうする?」
「まぁ雪もやみそうにないからいいんじゃないかな。」
「いいですよー。」
「おおー、助かる。じゃあついてきてくれ。」
残っていたクッキーを麻衣が全部頬ぼって先生についていった。
「せんせー。どこ行くんですか?」
「普段は入らないところだよ。」
先生に言われるとおりについていくと実験棟に到着した。
「たしかにあんまり来ないけど全く来ないわけじゃないよね。」
「うん。実験があれば来るもんね。」
「ここだけどこの下だよ。」
「ん?」
先生が指さした先には管理室と書かれた部屋があった。その中にはいくつかのモニターやよくわからない機械がたくさんあった。
「こっちだよ。」
そっちには下へと続く階段があり先生に続いて私たちはついていった。階段を降り終えて目の前の扉を開けると大きな音がした。
「ここはこの学校の水を管理しいているところだ。水をきれいにしたりためたりしている場所だ。」
先生が大きな音に負けないように叫ぶように言った。
「ここで何のようなんですかっ?」
加奈も音に負けないように叫ぶように質問した。
「このまま奥に進めばわかるよ。」
それにしても地下は広くこの学校ぐらいあるんじゃないかと思うぐらいだ。
「なんかゲームだとラスボスとか来そう。」
麻衣がなんかテンション上がっているようだけど周りの音が大きくて聞こえなかった。浄水していると思われる大きな管の間を抜けるとダムのようなため池が現れた。
「ん?誰かいる。」
「熊谷先生じゃん。」
「なんで服着てないの?」
通路の先にはタオルで体を隠している先生がいた。
「いやぁ、作業してたら濡れちゃってね。誰もいないから服脱いでタオルで拭こうって思って全部脱いだらうっかり全部ここに落としちゃった。てへっ。」
熊谷先生がベロを出して言うとみんな「うわー」と言って引き返した。
「帰ろっか。」
「そだね。」
「賛成ー。」
「じゃあお疲れ様でしたー。」
「ちょっとー、まだ何もしてないよー。」
しかたなく戻ると担任の先生が
「じゃあ手伝ってあげて。僕は先に上に行ってるから。」
「先生も手伝ってくださいよー。」
「先生は戦力外通告を受けましたから。」
担任の先生が言うので熊谷先生の方を見ると
「いやぁ、下着も流されちゃってー。同僚の先生に見られるのはさすがに恥ずかしいかなぁって。」
「やっぱ帰ろうか。」
「そだね。」
「賛成。」
「さよーならー。」
「ちょっと待ってよー。」
再び先生に引き留められると、今度は担任の先生が
「ここの水は浄水後に再び学校に使用される水になります。動物や野菜たちのためにも水が汚染される前に拾ってあげてください。」
とお願いしてきた。
「たしかにずっとあったら汚いですもんね。」
「たしかに水が汚いのは嫌だもんね。」
「それはすぐに回収した方がいい。」
「じゃあすぐやりましょう。」
「はい。ありがとうございます。ここに回収用のたもがあるので使ってください。」
先生から柄の長いたもを貰って作業に取り掛かった。
「えっ?私の服そんなに汚くないからね。それにここの水は使われる前にもう一度浄水されるからねー。」
「先生うるさい。早く仕事して。」
「うー。私先生なのにぃ。」
ここの水は一度浄水されている水が溜まっているとはいえ底が見えるほどきれいではないのでたもですくっては確認する作業を繰り返した。
「これ底に沈んでいるんじゃない?」
「たしかに。これだけ探しても見つからないからそうかもね。」
「途中まで浮いてたんだけどね。それにここは循環してるから下にあっても浮いてくると思うんだけど。」
みんな作業がめんどくさくなってきた感じだった。
「下は確認したんですか?」
私が流れの先を確認しながら言った。
「ううん。下は怖いから行ってない。」
先生が笑顔でそういうので引っ張って
「じゃあ行きましょうか。」
と言って連れていくことにした。
「ううー、行くならそこにあるポンチョを着ていくといいよ。」
みんなでおいてあったポンチョを着て下に行く階段を降りた。
「すごい迫力だ。」
上のため池から流れ出て滝になっている下は水しぶきで前が見えずらく、上より大きい音がした。
「あっ、あれじゃない?」
麻衣が指さす方を見ると布切れがいくつか浮いていた。
「あったー。ありがとうね。」
たもですくいあげて渡すと先生は水を絞って渡してきた。
「じゃあ上で乾燥機にかけてきてくれる?お願いね。」
先生が頼むと加奈が「はぁ」とため息をつきながら服を受け取った。さすが加奈は優しい。私も麻衣も全く受け取る気はなかった。
「そういえばなんで先生はここにいたんですか?」
「先生たちは交代でここに来て異常がないか確認するんだよ。ここは水をためてるのと発電もついでにしてるからこの学校では重要な役割をしているからね。」
「へー、知らなかった。」
「まぁ危ない場所だからね。」
「それじゃあ上に行ってきます。」
「はいはーい。待ってるよー。」
服を乾燥させるためにさっき来た道を戻った。
「おっ。見つかったのかお疲れさま。今度何かお礼するよ。」
「やったー。」
「せんせー。あの先生をあそこの当番にするの危険じゃないですか。あそこ重要な場所なんですよね。」
加奈が言うとみんな神妙な顔をしてうんうんとうなずいた。そんな私たちを見て担任の先生は笑って
「確かになー。あの人天然だからな。」
「天然で済まない気が、、、、」
「まぁ、今回はイエローカード渡しておくよ。」
「それはレッドカードになるとどうなるんですか?」
「罰金か、別の仕事増やすかなー。普段はちゃんとした人だから大丈夫だと思うけど。」
「すぐレッドになりそうだね。」
「せっかくだから今度先生に何かおねだりしな。そうすれば先生も反省するでしょ。」
担任の言葉に私たちはうなずいて洗濯室に向かった。
「あんな場所があるなんてね。」
乾燥できるまで暇なので話していた。
「ここで出る水ってたしかに普通より汚れてそうだもんね。直接処理した方が楽なんだろうね。」
「それにしてもあの先生はいつかあそこで溺れそうだね。」
「ありえるわー。あの人がフリーの理由を垣間見た気がするわ。」
「あの見た目で相手がいないのには理由があるとは思ってたけど。この前も昼間から酒盛りしてたし。」
「私たちが卒業するまでは確実に結婚は無理だろうなぁ。」
愛理の言葉にみんなついつい笑ってしまった。話していると乾燥が終わったので服を取り出して外に出た。
「雪やんでる。」
「本当だー。とっとと渡して帰ろうか。」
「せっかくだし早速何か買てもらおうよ。」
「じゃあケーキ食べたい。」
「いいねぇ、この前近くにできたケーキ屋さんにしよ。」
「賛成ー。」
「じゃあ行こうか。」
先生が待っている実験棟までみんなで走っていった。




