第五十三話
作業が終わって皆が帰ってから私たちも家に戻った。
「寮に何もってこう。」
麻衣がジャージを脱ぎ捨てながら話しかけてきた。匂いに反応して猫たちがすごい勢いで部屋の奥に逃げていった。学校が始まって実習があるとお決まりの光景なので麻衣もあきらめていた。
「十一月の最初ってもう来週だもんね。意外とすぐだよね。」
「何が必要なのか全くわからん。」
「寮生活したことないうえに一週間って微妙だもんね。」
二日三日なら着替えも毎日分持って行けるし、生活用品も少ないので全然持っていけるけど、一週間分ともなると寮が多くなってしまうのえ全部持っていくのは結構ためらう。
「でもここに寮に用意されてるもの書かれてあった。」
「本当だ。結構そろってるね。」
寮には来客用の部屋があって、一週間そこに泊るのでアニメティは充実しているようだ。それでも持っていくのはそこそこある。
「とりあえず必要な物もあるから週末買い物行こうか。」
「うん。でもその間猫達どうしよう?」
一週間開けるのでさすがに家に放置というわけにはいかない。
「夏休みの時ってどうしてたっけ。」
「実家に預けてた。けど今回一週間だしわざわざ連れてくのはめんどくさいな。」
「たしかに、じゃあちょっと待ってて。」
一度部屋を出て下の階に向かった。
「管理人さーん。」
管理人室のインターホンを鳴らすとすぐに出てきた。
「久しぶりだね。どうしたの?」
「今度学校に一週間泊まり込むんで猫預かってくれません?」
「うん、いいよ。私の部屋ここの一階の端の場所だからそこに持って来て。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「いいよー。たまに他の人の動物とか預かってるからね。もし注意事項とかあったら先に連絡しておいてね。」
管理人さんにお礼を言って部屋に戻って麻衣に伝えると
「なるほど。その手があったのか。あの人なら大丈夫そうだね。」
と安心したようだった。
「それにしても寒いね。このまま冬になったらどうなっちゃうのか心配だよー。」
「これぐらいまだ普通だよ。それに寒ければ汗かかないからいいよ。」
「十分寒いよ。たまに雪降って積もってるし。」
「汗かくと匂いがつらい。ただでさえ実習あるとに追いついて猫に逃げられるのに。」
「あー、確かにね。結構慣れたけどやっぱ畜産の実習ってにおうよね。それに比べれば今はまだましな方なのかな。」
高校の牛舎などは結構匂い対策もされているので普通のところよりはましなようなのだけれども、それでも独特の匂いは結構するし自分のに染みついてしまう。
「学校にいるとどこかしらで誰かしら匂いがするから気にならないけど、家に帰るとすごい感じるよね。」
麻衣はそう言ってお風呂場に向かった。
その後学校に行って、週末に麻衣と一緒に買い物に行った後、日曜日に入寮した。
「じゃあまた夜ご飯の時ねー。」
「うん。後で。」
麻衣と部屋が違うので別れて、私が振り分けられた部屋に入った。
「由宇だ。ハロー。」
中にはすでに三人いて、加奈と早霧ちゃんとクラスメイトの子が一人いた。
「早霧ちゃんもいるんだね。」
「うん。各部屋に一人寮生が入るようになってるよ。私も普段は違う部屋に住んでいるけど、一週間はこの部屋だよ。設備とかわかんないことあったら説明するからいつでも聞いてよ。」
部屋には二段ベッドが向かい合わせに置かれていて中央に座卓が置かれていた。
「四人で勉強するには少し狭いね。」
と、加奈が言った。
「確かに。二人が限界だよね。」
「もともと来客者用だもんね。しょうがないよ。」
「大丈夫だよ。多分そんな心配もなくなるから。」
不穏なことを言った早霧ちゃんに寮の中を案内してもらった。寮の中の雰囲気は小学校の時の宿泊研修で止まったような建物で、木造で窓が多くい自然を感じられる構造になっていた。ガラス張りになっている廊下をわたって食堂に向かった。すでに多くの人がご飯を食べていた。
「ご飯の時間は基本的にみんな一緒だけど学年ごとに開始時間がちょっとずつずれてるから。多分毎回一緒に食べられると思うから大丈夫だと思うけど。」
「まぁこんだけ人数いて一斉に来たらすごい混みあうもんね。」
加奈が言うように、座る席は十分にあれどご飯を受け取る場所はそこまで多くないのでそこの混雑を避けるシステムなのだろう。
「おおー、豪華だねー。」
「うん。おいしそう。」
トレーを受け取ると定食になっていて、種類も量も多かった。
「ん、さっきぶり。」
席に座ると隣に麻衣たちがいた。麻衣は愛理と凪ちゃんとクラスメイトと同じ部屋で先にご飯を食べ始めていた。
「ご飯おいしいよ。」
奥から愛理が教えてくれたので早速私たちも食べ始めた。
「本当だ。おいしい。寮のご飯っておいしいし、量も多くていいね。毎日こんなご飯食べられるのかー。」
さすがに毎日自炊しているとたまに手抜きになってしまう日があるけど、寮ではこのレベルの料理が毎日食べられると思うとうらやましく感じた。
「でもたまに寮のご飯以外も食べたくなるけどね。」
ご飯を食べて、そのあと部屋で少し時間をつぶしてお風呂に向かった。こっちも時間はある程度決まっているけど、ここも相当広くかなり快適だった。
「大きいお風呂っていいね。」
「うん。銭湯みたいでいいよね。」
今日は特に何もしていないので疲れがあるわけじゃないけど、体がほぐれていくようだった。
部屋に戻ってから四人で消灯時間まで話していた。
「明日から実習かー。」
「うん。五時には起きたいよね。」
「朝ご飯が七時すぎでしょ。おなかすいて倒れそう。」
「お菓子でも食べてけばいいよ。」
早速明日から朝と放課後に実習が始まるのでそのことについて話していた。
「雪が降らないといいね。」
「建物の中で作業とはいえ降られるのは屋だよねー。」
「雪かきとか増やされそうだよね。」
「あり得る。」
話しているとクラスメイトの子が話を変えた。
「そういえばさ、三人とも付き合ってる人いるの?いつも一緒にいる人いるけど?」
おそらく、私と麻衣、加奈と愛理、早霧ちゃんとなぐちゃんのことを言っているのだろう。
「私は付き合ってないよ。凪とは仲いいけど、部活が一緒だから一緒にいる時間も増えてるって感じかな。」
「私もー。」
「私と愛理は付き合ってるわけじゃないんだよなー。友達以上恋人未満って感じかな。」
「そうなんだー。皆仲良しでずっと一緒にいるからつい。」
意外という感じで答えた。
「実際に付き合ってる人っているのかな?」
噂では聞いたことあるけど実際に女の子同士で付き合ってる人が身近にいないのであんまり想像が着かなかった。一番近いのは加奈と愛理だけどさっき言った通りなのでそれも何か違う気がする。
「いるよー。先輩たちとか結構聞くよ。」
「確かに部活の先輩同士も付き合ってるし。」
三人とも知っている人が付き合っているらしく、予想していた藩王とは違った。
「でも女の子通しで付き合うってどんな感じなの?」
「そりゃあ、デートしたりキスしたりじゃない?」
早霧ちゃんが顔を赤らめながら言うとクラスメイトの子もうんうんとうなずいた。
「そっかー、そうなんだね?」
「どうしたの?」
「いやぁ、友達同士でもしないこともなくない?一緒に出掛けたりするし、そのときに手つないだりするし。」
麻衣とはしょっちゅう手をつなぐし、一緒にお風呂に入ったり、寝たりしているのであんまりピント来なかった。
「まぁ女の子同士だと結構友達でもするよね。」
と加奈が言って、小さい声で「麻衣も苦労しそうだなと。」とつぶやいたけどうまく聞こえず「うん?そうなのかな?」と答えておいた。
「でも気持ちの問題だよね。同じ行為でも友達と恋人だと感じ方が違うというかなんというか。」
「早霧ちゃんは恋愛マスターだね。」
「やめてよー。恥ずかしいこと言っちゃった。」
加奈にからかわれて頬を真っ赤に染めて手で押さえて恥ずかしそうにしていた。
「でも無理に帰る必要はないよね。今も楽しいわけだから。」
「でも私も恋人欲しい―。彼女でも彼氏でもいいから。」
クラスメイトの子がうらやましそうに絞り出しながら言うので三人とも思わず笑ってしまった。
「彼氏は学校だと作れないけど、彼女ならできるかもよ。」
「ううー、たしかに。まずは彼女からかなー。」
話していると消灯時間になったのでみんなベッドに入って眠りについた。




