第五十二話
畑を作ってからは毎朝学校前と放課後に様子を見に行くのが習慣になっていた。放課後は毎日見に行っているけど朝は結構気分で、行ったりいかなかったりしていた。愛理と加奈も放課後よく来ているけど朝もたまに来ていた。水やりは最初の方は大事だけどしばらくしたらたまにでいいと先生が言っていたので毎朝様子を見に行く必要はなかった。
今日は様子を見に行こうと思っていたので起きると、珍しく麻衣がまだ寝ていた。結構寒いなぁと思いながらも先にお弁当の準備をしていた。あまりにも寒いのでカーテンを開けて外を見ると今年初めて雪が降っていた。
「ねえ、麻衣見て。雪降ってるよ!」
「んん、、どうしたの?」
「雪だよ!雪!」
「もう十月も終わるから降るよ。」
麻衣は眠いのか興奮している私にも反応が薄かった。
「うわー、すごーい。」
窓を開けると冷たい風が部屋の中に入り込んできた。
「由宇寒い。」
「すごくない?雪だよ。」
「すごくないよ。こっち来た時にもあったでしょ。」
麻衣が寒くね目が覚めたようで起き上がって言った。
「雪は残ってたけどもう降ってはなかったから降ってるのを見るのは初めてだよ。」
「すぐ見飽きるよ。」
ずっと静岡に住んでいた私からすると初めての経験なので写真を撮ったり手で触ってみたりした。
「ほら、今日畑行くんでしょ。準備しなよ。」
「雪の時って傘さす?」
「ささないよ。こっちの雪ってサラサラだからさす必要ない。」
「そうなんだー。」
一つ一つにテンションが上がっている私を珍しいものを見るような目で麻衣が見てきた。
準備をすまして、畑の様子を見に行ってから学校に行った。加奈や愛理にも雪のことを話すと
「そんなに盛り上がるの?邪魔なだけだよ。」
「すごいよ、初めて見たもん。」
「そっか、由宇の地元は全然降らない場所だもんね。」
二人も麻衣と同じような反応で雪が降ってもテンションがさほど上がっていなかった。
「ホームルーム始めるから席つけー。」
先生が入ってきたので自分の席に座った。
「今度一週間寮に止めってもらって朝と放課後に実習してもらうから。」
といってプリントが配られた。寮の部屋の振り分けと実習の振り分けが書かれていた。
「今度ってどれくらいですか?」
加奈が聞くと「十一月の最初の週だ。」と先生が答えた。
「二年以降になるとこういう実習をやらない生徒も出てきちゃうから、一年で経験しておくのが目的だな。実際に専門コースの人たちがどんな生活をしているのか経験しておけー。」
ということらしい。確かに二年生に上がると実習が完全に別れるので選ぶものによっては外より実験室にこもることが多い方にこともあるのでいいかもしれない。
ざわざわが収まってから授業が始まって、放課後にいつもの四人い加えて凪ちゃん早霧ちゃんを加えた六人で畑に向かった。
「こんなところでこんなことしてたんだー。」
凪ちゃんが畑を見渡しながら言った。
「そういえばあんな実習があるなんて知らなかったよ。」
早霧ちゃんが畑の土をいじりながら言った。
「私も知らなかった。」
「加奈も知らなかったんだ。」
「うん。まぁ何か用意するとかないからいいんじゃない。」
こんなイベントだから知っていると思っていたから意外だった。
「寮ってどんな感じなの?」
麻衣が寮暮らしの二人に聞いた。
「ご飯の時間が決まってて、お風呂も共同だよ。時間も大体決まってる。」
「それに外出できる時間も決まってるよ。」
「それだけ聞くと大変そうだね。」
「でも他は結構緩いよ。中はきれいだし。」
たしかにテレビとかでみる寮生活は軍隊並みに管理されているイメージがあるのでそれに比べれば緩いかもしれない。
「学校のなかだからぎりぎりまで寝てられるし、移動距離も短いからいいのかな。」
麻衣がまぁそれならという感じでつぶやいた。
「でもそれは普通に寮生活したらの話だもんね。」
加奈が寮生活の二人に聞くと二人は激しくうなずいた。
「そうなんだよ。毎朝五時位に人が動く音が聞こえて、ひどい時には四時には話し声が聞こえてくるんだよ。」
「しかも帰りも夜ご飯の時間よりも後の時間に帰ってくるんだよ。下校時刻は決まっているけど、なんせ寮は学校内にある。つまり労働時間は無限なんだよ。」
「朝も時間の決まりなんてないからね。やろうと思えば何時にでも集められるってわけよ。」
二人がぶるぶる震えながら言った。それを聞いた私たちも体がぶるぶる震えてきた。
「そんな中部活してるなんて皆すごいねー。」
愛理が能天気に言うとまた二人が答えた。
「運動部が多いからね。皆体力あるんだよ。」
「それにみんな家でも同じような作業してるから慣れてるんだよ。」
「でもたまに廊下に疲れきった人落ちてるよね。」
早霧ちゃんの言葉をイメージすると思わずぞっとした。
「それにしてもいきなりここ放置しちゃうことになったね。」
加奈が畑を見渡しながら言うと加奈が答えた。
「一応家の人に頼んでおいたから大丈夫だけど心配。」
「まだまだ土地も余ってるけど何かやるの?」
凪ちゃんが畑を見ていった。
「そっちも畑をやるか、何か育てるか考え中。」
「いいねー。そういえばあれは何なの?」
凪ちゃんの指さす方向には半球状の物がいくつか並んでいた。
「あれはねー、お楽しみだよ。」
「えーー、気になるじゃん。」
私と加奈はなんとなく予想がついたけど他の子たちは見当つかなそうなので黙っていた。




