第五話
「由宇、朝だよ。起きて。」
昨日と同じように朝、麻衣に起こしてもらった。今日から学校が始まるのでいつもより早くてまだ頭がぼうっとしてた。のそのそ朝ご飯を食べて準備をした。麻衣は麻衣でごろごろしていたので気づくと遅刻寸前になっていた。
「やばっ。行こ!麻衣。」
急ぎ足で向かうと何とか遅刻せずに教室に到着することができた。すでに教室の中はいっぱい人がいた。それぞれ席に着くとすぐに担任の先生が入ってきた。
最初はこれからの授業の説明や自己紹介が行われた。このコースは出身が北海道の人が多いらしいけど、学校全体でみると半分近くが道外の人らしい。
午前中はそのまま資料の配布や身体測定をして終わってしまった。お昼になったので麻衣と一緒にご飯を食べようとしたら
「ねぇ、私たちも一緒にご飯食ベていい?」
と誘われた。麻衣はどっちでもいいよという感じだったので一緒に学食についていくことにした。
話しかけてくれた子は明るそうな子で、後ろにいた子はびっくりするぐらいかわいい子だった。麻衣は美人って言葉が似合うけどその子は可愛いって言葉がよく似合っていた。その子が
「私は鳥山愛理です。よろしく。こっちが犬塚加奈だよ。」
「加奈でいいよ。」
加奈がポニーテールを揺らしながら明るい声でそう言った。
「私は由宇。こっちが麻衣。よろしくね。」
二人は学食のご飯を買ってきて四人席に座った。私と麻衣は持ってきたお弁当を開くと加奈が
「二人はお弁当なんだ。」
「そーだよ。」
「中身一緒だけど、、?」
私たちが一緒に住んでいることをまだ知らないので愛理が私たちのお弁当の中身を見て不思議そうに聞いてきた。
「私たち下宿してて一緒に住んでるんだ。」
「そっか、そうゆう人たちもいるんだよね。」
「二人はこの辺出身なの?」
「そうだよ。私も愛理も実家から通ってるよ。今度愛理の家連れてってあげるよ。温泉やってるからすごい大きいんだよ。」
「えっ、そうなの?行ってみたい!」
「そんなに広くないよー。」
「愛理はお金持ちなんだね。」
「そーそー。なんだってあの鳥山リゾートのお嬢様だからね。」
「ほんと!?」
「ほんとほんと。だからたまに急に話し方がお嬢様っぽくなるよ。」
「やめてよー。気を付けてても出ちゃうから恥ずかしいんだよ。」
鳥山リゾートは全国にある高級温泉旅館で有名な会社ってテレビで見たことがあった。愛理はその一人娘らしく正真正銘の超が付くお嬢様ということだ。今までお弁当に夢中で会話に参加していなかった麻衣も反応した。
「やっぱお母様とかって呼ぶの?」
「あっ、やっとしゃべった。」
加奈も私と同じことを思ってたようだった。
「そんな風には呼ばないよー。」
愛理が笑顔で否定するから麻衣も「そんなもんかー。」と納得しかけたところに
「お母様じゃなくて母上だよ。」
「「えっ?」」
私と麻衣がハモッた。あまりにも愛理が普通に言うので私も麻衣もそれ以上突っ込めず黙ってると、加奈が話を変えた。
「麻衣ってさっきと全然印象が違うよね。」
「うんうん。私麻衣もお嬢様だと思ったもん。」
さっき教室で自己紹介したときは完全にキャラを作っていたが、二人とご飯を食べ始めるころにはすっかりいつもの状態に戻っていた。
「あれは外用、今はオフ状態だから。」
どうやら麻衣は二人のことが気にいたらしい。二人もそう感じ取ったのか、愛理は嬉しそうに麻衣の頭をなでていた。
「そういえば二人は部活はもう決めたの?」
加奈が、また話題を変えた。
「私はまだだよ。」
「私も。」
「そっかー。私たちも決まってないんだ。どうしようか悩んでてね。」
「たしかに。いっぱいあるもんね。」
「そーなんだよ。ガチなやつと緩いやつがあるから見分けないと。サッカー部とかすごいらしいよ。人もいっぱい、練習もいっぱいで。」
そーいえば入学式の時に、学校紹介で部活の成績を話していた気がする。あんまり詳しく聞いてなかったけどちらほら全国大会って言葉が聞こえたからサッカー部もそのうちの一つなのかな。
「部活って全員入らなきゃなの?」
「そーだよ麻衣。故に私たちは困ってるのである。」
「なんで急に語尾変になったし。楽なのがいいな。」
「四月中に入ればいいらしいから吟味すればいいと思うよ。」
「そろそろ教室戻ろうか。」
愛理がそういうので時間を確認するとお昼休み終了の十分前になっていたのでみんなで教室に戻った。
午後も教科書販売や学校案内で終わった。とはいっても学校は驚くほど広いので終わったころには六時間授業を受けた時間になっていた。
「どーする、今日から部活見学できるらしいけど。」
「いや、さすがに疲れたから帰りたい、、、」
「だよね。また来週からでいいよね。」
加奈と愛理も同じようにうんうんとうなずいていたので今日は帰ることにした。
「バック重っ。」
麻衣が荷物を持ち上げて悲鳴を上げていた。今日買った教科書は全部はロッカーに入りきらなかったのでいくつか持って帰ることにしたが、学校案内で疲弊しきった体にはこの重さが地獄のようにつらかった。
「二人は正門から帰る?」
「そーだよ。加奈と愛理は?」
「私たちは西門からだよ。」
「そっか、じゃあまた来週。」
「ばいばーい。」
二人と手を振って別れ麻衣と体を引きずりながら家に帰った。




