第四十二話
後期が始まって新たな科目の実習が始まった。今までのようにジャージや体操着ではなく作業着に着替えて実習場所に向かった。
「これ着るとそれっぽい見た目になるねー。」
加奈がみんなおそろいの学校指定の作業着を見て言うと
「使うのは初めてだからね。」
愛理も楽しそうにうなずいていた。
「ここだよね。」
着いた建物は他の建物と違って一階建ての平屋がいくつか並んでいて、中から独特のにおいと鳴き声がしてきた。
「めっちゃいっぱいいるじゃん。」
麻衣も驚いていてに三歩後ろに下がった。
「それじゃあ、予め指定した場所にいるか―?間違っていたら今のうちに移動しろよ。」
担当の先生がどこか気の抜けた声で指示を出した。クラスをいくつかの班に分けられたけど、五つぐらいに分けられてので私たち四人は同じ班になることができた。
「ここは見てわかる通り牛を育てているけど乳牛ではなくて食用です。注意点や作業についてはもう授業でやったと思うけど随時何かあったら言うからとりあえず作業に入ってくれー。」
先生が言うとみんな「はーい。」と返事をして作業を開始した。それぞれの場所に専門の子たちがいるので教えてもらいながら少しずつやることを覚えていった。
「牛ってわらみたいなのばっかり食べてると思ってた。」
麻衣が餌をあげながらつぶやいていた。いまあげている餌は色々な穀物を混ぜたものでエサ台に入れるとバクバク食べ始めた。あまりにも食べっぷりがいいので麻衣が「そんなにおいしいのか」と牛の話しかけていると
「これ混ぜる前ならら食べられるよ。」
と専門の子がニコニコしながら麻衣に言うと
「食べてみればいいじゃん。」
「いやぁ、さすがにこれは。こういうのは愛理の専門分野じゃん。」
「さすがにこれは範囲外だよー。」
と餌を押し付けあっていた。
「これって何が入ってるの?」
専門の子に聞いてみると
「こっちはトウモロコシの粉末とか小麦の殻とかだよ。さすがにこっち混ぜちゃうと牛用の物が入ってるから無理だけど。」
餌を作る際に色々混ぜていたけど、たしかにそれなら問題なさそうだった。
「二人ともそれほとんどトウモロコシだからおいしいかもよ。」
というと、こっちを見て固まった。
「それじゃぁ、、、」
二人とも一口なめてみると
「うーん?ん?トウモロコシと言われればそうでもない気もするしそうな気もする。」
「おいしくはない。」
と微妙そうな顔して話していると加奈が
「食べても大丈夫だけど味付けとかされてるわけじゃないからね。おいしいとは限らないでしょ。」
「えー、そういうのは先に言ってよ。」
「いやぁ、食べたそうだったから。」
「そんなことはない。」
愛理と麻衣が加奈にぶーぶ言いながら餌を返していた。
「この子たち牧草も食べるけど食べてみる?」
と専門の子が二人を見て聞くと
「「いや、さすがにいいです。」」
と見事にハモった。
その後も牛の体を洗ってあげたり、床を掃除したりたら結構作業着は汚れていた。
「これはジャージじゃ無理だね。」
「そうだね、匂いもついちゃうし。」
学校指定のものなら学校で洗濯をしてくれるので家に持ち帰って洗う必要がない。とても助かるサービスなので私たちも使う予定だった。
「じゃあ最後にこれをあの子たちにあげよっか。」
専門の子が手に持っていたのは哺乳瓶で目線の先には牛の子供たちが待ち遠しそうにこっちを見て鳴いていた。
「きゃー、小っちゃくてかわいいー!」
加奈が赤ちゃんたちを見て興奮して叫んでいた。
「この子たち近くで見るとそんなに小さくないよね。」
「まぁさっきまで大きいの見てたからそれに比べれば。」
麻衣と話しながら哺乳瓶を受け取って専門の子がやっている見本を見た。
「すごい飲みっぷりだね。」
愛理は子牛達が少しでも近づこうとぐいぐい専門の子の腕から前に出ていく様子を見て言った。
「こんな感じでこの子たちは自分たちで飲みに来てくれるから抱えて哺乳瓶を口にもっていってあげれば飲んでくれるよ。」
と教えてくれて「じゃあやってみて」と言われたので近くにいた子を抱え上げて口元に哺乳瓶を持っていくとすごい勢いで吸い付いてきた。あんまりにも勢いがいいのでたまに口から哺乳瓶がずれてしまうので口に戻してあげながら全部飲み終わった。
「すごい可愛かったぁ。」
加奈が余韻に浸るようにつぶやいた。作業着や手袋などを外して袋に入れて消毒をして洗濯室に向かった。
「子牛ってあれからどれぐらいで大人になるの?」
麻衣が無線でいた髪の毛をほどきながら聞いてきたので授業で聞いたことを思い出しながら答えた。
「たしか一般的には一歳になるまでは生産農家で育ててそのあとは肥育農家で二年ちょっと育てるんだって。この学校は全部やってるから私たちの卒業と同じ時期じゃないかな?」
「えーじゃあ食べられないんだぁ。」
「悲しいとかじゃなくて食べられなくて残念かー、麻衣らしいね。」
愛理が苦笑いしていた。加奈が出荷されるところを想像しそうになったのか頭を横に振っていた。




