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第三十一話

 「いやぁ由宇の相手はみんな速そうだね。」

仕事終えて麻衣と合流した加奈がにやにやしながら言っていた。

「もうこっち来ていいの?」

「まあね。それに由宇の応援をしたいし。」

「ふーん。」

「つめたいなー。別に由宇のこと取ったりしないよ?」

加奈が面白そうがりながら麻衣のほっぺたをぐりぐりするので麻衣はむくれて

「別にそんなこと思ってないよ。由宇は私のだから。」

と反論した。

「おー、由宇は気づいてるの?」

「なにが?」

「いやー、だから麻衣の好意に。」

「別にそんなんじゃない。」

「いやぁ、さすがにねバレバレだよ。あれだけべたべたしてたら。」


加奈は「さすがに出会ってまだ数か月とは思えないもん。」と苦笑いしていた。

「付き合ったりしないの?」

「いや、告白したら「私も好きだよー。」って笑顔で勘違いされそう。」

「まぁ由宇はそういうところ鈍そうだもんね。絶対友達としてとか思いそう。」

「うっ、それは想像できる。そして言われたらもう言えない。」

「まずらしく麻衣が弱気だねー。」

「そういう二人はどうなの?」

「私たちは積み上げてきた時間が違うからねー。その辺の心配はありませーん。」

「別に付き合ったから変わるわけじゃないし。今も一緒に住んでるし。」

「まぁ急ぐ必要はないからねー。」

加奈が「難しいところだよねー」とうなずいていた。

「そろそろ由宇の番だ。」

グラウンドを見ると由宇がスタート位置についてぴょんぴょんしていた。

 前の組がだいぶ速かったのでかなり心配になってきた。タイムまではわからなかったけど後ろから見ている限り勝てなさそうだなぁと感じた。他の人達は仲いいのか楽し気に話していた。

 「由宇ってどれくらい速いの?」

「うーん、あんまり知らない。もう走るからわかるよ。」

二人で話していると号砲が鳴った。二人で「いけー。」「がんばれー。」とか叫んでいた。

「まって、めっちゃ速いんだけど。」

由宇はあっという間に一位でゴールしてしまった。

 二人がリレーを走り終わって戻ってくるといきなり話しかけてきた。

「由宇めっちゃ速いじゃん。」

加奈が興奮しながら言っていた。いつの間にか合流していた愛理もうんうんとうなずいていた。

「おつかれ。」

「うん。麻衣も頑張ったね。」

「由宇ってもしかしてすごい選手だったの?」

加奈が興味津々に聞いてきた。

「そんなでもないよ。でも三年生の時に全国大会に出れたよ。」

「すごいんだぁ。」

愛理が変な言葉で感心していた。

「なんかたまたま私の代が穴の代だったから出れたんだよー。」

先輩たちの代が強かった反動のせいなのかかなりレベルが下がっていた。例年なら私は全然出れない実力だったけど運よく出れてしまった。

「いやぁついつい応援に熱が入ったよ。」

「ありがとうね。久しぶりに走ったけど楽しかったよー。」

午前の種目が終わったので四人で少し端に移動してお昼ご飯にすることにした。教室は開いてない代わりに体育館が開いているらしいけどすでに混んでいたので階段状になっている段差に座ってお弁当を開いた。

「いやぁすごいね。」

大きいお重のようなお弁当箱にみんな好物をいろいろつめたのでみんなどんどん食べていった。

「本当由宇は料理上手だね。将来うちで働く?」

「本当?じゃあ将来困ったら行くわー。」

愛理の家で働く料理人なんてみんなすごい人たちだろうから入り込む余地はおそらくないだろうけど、嬉しかった。

「それにしてもカオスだ。」

麻衣が唐揚げを加えながらグラウンドを見てつぶやいた。

「はたから見たら絶対運動会ってわかんないよね。」

さっきまで私たちがいたグラウンドには多種多様な動物たちが走り回っていた。

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