第二十八話
実習の時間、麻衣は愛理たちと一緒に畑の横のスペースで盛られた土を道具を使って混ぜていた。
「あぁ。疲れた。」
「腕に筋肉ついちゃいそうだね。」
愛理が腕を曲げて「ふんっ!」としたけど麻衣でも簡単に折れそうだったので「どこがだ。」とつっこんで作業に戻った。
「体育祭ってどこでやるの?」
「砂のグラウンドだよ。」
麻衣の質問に愛理が答えた。この高校はサッカー場や、陸上トラックなどもあるので、選択肢はいくつかある。避難訓練の集合場所なんかはグラウンドではなくサッカー場だったりする。
「芝生がよかったな。」
「体育があそこだからね。それにグラウンドの方がそれっぽくない?」
「汚れるじゃん。」
「そうだけど。動物も出てくるし、しょうがないよ。」
「いまだにあれがよくわかんない。」
さっきとは別の土に落ち葉や、食べ残しのごみとかを混ぜてまた混ぜ始めた。さっきからずっと思い農具で湿って重くなった土を混ぜているので腕が痛くなってきた。
「それにしてもこれ重すぎない?」
麻衣は先ほどから使っている鍬をにらみながら言った。
「これでもだいぶ軽いやつみたいだけどね。」
「心なしか最初より重くなってる気がする。」
「重くなったんじゃなくて麻衣が弱ってきたんだよ。」
この鍬は持ち手も先端部分も軽い素材でできている、らしいけどずっと使っていれば腕に乳酸がたまって鍬が鉛でできてるんじゃないかと勘違いしそうなほど重く感じてきている。
「これ毎日は絶対無理。」
「農業クラスに入らなくてよかったねー。」
班の農業クラスの二人が「私たちはもうなれたよ。」「私は小さいときから家で手伝ってたから。」と苦笑いしながら「がんばろうー。」と麻衣を励ましていた。
「それより楽しそうだよね。子豚のレースとか、ウサギの早つかみ。」
愛理がさっきの運動会の話を再び持ち出した。
「愛理はあれ出るんでしょ。ポニーのレース。しかもなんで馬じゃなくてポニーなの?」
「小さいころ家族で何回か乗馬したことあるからね。いくら広いとは言っても馬が走れるほどは広くないから、ポニーでちょうどいいんだよ。」
麻衣は「さすがお嬢様だ。」といいながら腕に限界が来たので素直に農具を置いて休み始めた。
「体育祭が近いから加奈は忙しいね。」
「そーだね。でも体育祭は結構楽だよ。そこまで準備することがないから。」
私と加奈はほぼ成長したじゃがいもたちを見て回り花がついていたら摘み取り、虫がついていないか一つ一つ確認していた。
「この体勢つらい。」
「腰がかたまりそうだよね。」
ずっと座り込んでいるので、たまに立って伸びをすると腰がぼきぼきなった。
「当日とか何か仕事あるの?」
「うーん、得点しゅうけおでちょっとお手伝いするぐらいかな。あと前日のテント張り。前日はいつでもお手伝いウェルカムだよ。」
「いいよー。手伝う手伝う。」
結構イベントは準備から楽しむ方なのでそういうお手伝いは大歓迎だ。
「愛理と麻衣は来るかわかんないけどねー。でも助かるよ。当日とか運営は結構部活で担当したり体育祭の委員会の人がやるんだけどね。」
ちなみに体育祭の委員会は二年生だけらしい。
「この時期にやるのって珍しいよね。普通は秋のイメージ。」
「こっちは遅くなると雪降る可能性あるし、梅雨が遅いからね。」
「そういえば麻衣に教えてもらったんだよね。普通の梅雨とはちょっと違うって。」
話している時に加奈が葉っぱの後ろに虫がいるのを見つけて回収した。こういうことをそつなくこなすあたりが加奈らしい。
「北海道は虫が少ないという割には普通にいるよね。」
「ゴキブリはいないってよく聞くよね。」
再び座り込んで作業に戻った。




