第一話
「そろそろ到着するよ。」
気づいたら寝ていたようで運転しているお母さんに起こされた。
先日家族とこっちに引っ越してきたばかりだけど、高校入学と同時に学校の近くに下宿することにしたので今日はそのための引っ越しに来ていた。
「んー、もう着いたの?」
「ずっと寝てたからでしょ。それなりにかかったよ。やっぱこっちは広いね。」
「本当だ!こんなに寝てたんだ。」
時計を見ると思った以上に時間がたっていた。
「こんなに遠いんじゃやっぱ家からは通えなかったね。」
高校を受験するときにはこっちに引っ越すことが決まっていたのでこっちの学校に受験したのは良かったけど、引っ越し先から高校が想像以上に遠かったので急遽下宿することになった。
「明日から四月なのにやっぱ北海道は寒いね。」
「そうだね。外の景色も日本じゃないみたい。」
「本当ね。学校の近くなのにこんなに広い畑があるなんてすごいね。」
車窓からは一面何かが植えられた畑が広がっていた。反対側には民家やお店があるけど、もともといた地元に比べるとだいぶのどかな場所だった。
そんな話をしていると目的地のアパートに到着した。
「じゃあ、一緒に住む子とは仲良くね。入学式の日はまた来るから。」
「うん。送ってくれてありがとね。」
お母さんに手を振って見送ったので、アパートの入り口に向かった。入り口のドアの前にインターホンがあったので管理人に繋いだ。
「すいません。今日から入居予定の牛込由宇です。」
「はーい。ちょっと待っててね。」
返事があってドアが開いたので荷物を持って入ると奥からお姉さんがやってきた。入居の際の必要な書類を渡すと
「君が牛込さんね。はいはい、じゃあこれ鍵ね。ここは寮じゃないから特にルールとかはないけど気になることがあったら大体管理人室にいるから聞いてね。それと君は入居が遅い方だからもう部屋に同居人は来てるよ。」
「ありがとうございます。」
鍵を受け取って、さっそく気になることを聞いてみた。
「あのー、私の部屋の子ってどんな子ですかね?」
「うーん、礼儀正しくておとなしくていい子だよ。」
その言葉を聞いて安心したので部屋がある二階に向かった。
花壇を登って気が付いたけど、この建物は珍しく内廊下タイプのアパートだった。
「へー、ホテルみたい。」
このアパートは学校が管理していて、住んでいるのは生徒だけなのでセキュリティもしっかりしていた。
「えっと、ここか、」
管理人さんに言われた部屋の前に着くと表札に自分の名前と同居人の名前が書かれていた。
「えーっと、猫谷麻衣さんか。よしっ!」
気持ちを整えてからインターホンを鳴らした。さすがにいきなり鍵で入るのは相手も怖いと思ったからだ。
「あれっ?もう入居してるって言ってたはずだけど。」
もう一度鳴らしても反応がなかったのでしょうがなくさっきもらった鍵を使ってドアを開けた。
「うわっ!」
ドアを開けると女の子が奇声を上げながら猫に顔をうずめていた。
「えっ、、、、は、はじめまして。」
恐る恐る声をかけるとその子が顔を上げてこっちを見た。
「すっごい美人だ。」
「えっと、どちら様?」
猫谷さんであろう女の子は何事もなかったように、おっとりした声で聞いてきた。
「今日から入居する牛込由宇です。」
「あーそういえば管理人さんがそんなこと言っていた気もする。」
さっきまで奇声を上げてた人とは思えないほどのんびりとした話し方なのでボケっと聞いていると
「由宇も部屋に上がったら。」
と言われたので部屋に上がると部屋は物であふれていた。
「えっと。猫谷さんって入居してまだ一週間だよね。」
「うん、そーだけど。あと麻衣でいいよ。」
「そっか。じゃあ麻衣。とりあえず掃除しよっか。」




