「ねえ、わたしってきれい…?」だと?バカヤロウ!
初めて書いて見ました。
拙い文章ですが、お付き合い下さい。
あぁ、ムカつく。
まるで世界の中心は自分たちだと言わんばかりに楽しそうに笑う男や女の学生も。
まるで世界で一番幸せだと言わんばかりの笑顔で歩くまだ幼い子供を連れて歩く夫婦も。
まるでお互いの全てを知ったかのような信頼の眼差しでお互いを見つめ合うカップルも。
何もかもが憎たらしくて仕方がない。
だから私は今日も誰かを狙っているの。
だってそうでしょう?
私だけが、こんな惨めな気持ちになっているのに周りはあんなに幸せそうなんですもの。
今日はあの男がいいわ。
あのいかにも人生満ち足りてそうな自信に溢れた顔した男。
あの男の顔が恐怖で引きつり、絶望の中で殺してやるの。
あたりには人影はない。
もう12時を待っていて街灯がぽつぽつと頼りなさげに照らしている。
カツカツカツ。
カツカツカツ。
明らかに自分以外の足音がすると分かるように音を鳴らしながら後ろから近づく。
そしてこう声をかけるの。
「ねえ、わたしってきれい…?」
男が私の声で振り向いてくる。
そして、私の方を完全に振り向ききったところでマスクを私は外した。
外したマスクの下には痛々しいまでに裂かれた口で、笑みを浮かべた口元が頼りない街灯に薄らと照らされていた。
男の目が驚愕によって見開かれる。
あぁ、その顔よ。
私が見たかったのは。
そして次第に恐怖に引きつっていく顔を見ながら右手に持ったナイフで喉元を串刺しにしてや「バカヤロウ!」 へっ?
男は怒りに満ちた眼差しで私を見つめていた。
おかしい。
あれ、ほんとおかしい。
なんで怖がらないの?
なんでそんなおこってるの?
なんでいきなり私の手を掴むのっ!?
「ちょっとこい!バカタレがっ」
なんか思ってたリアクションと違うんですけど!
なんで私を連れてどこかへ行こうとしてるのっ!?
もしかしたら聴こえていなかったのかも知れない。
見たところ年は30前後みたいだけど、その歳で難聴系主人公を気取ってるのかしら?
舐められたものね。
私だって百戦錬磨の有名な口裂け女なんだから。
この程度で臆するも思わないことね!
もう一度、今度は聞き漏らさせないように大きな、それでいてはっきり言ってやるわ。
「ね!え!わた「黙ってついて来い、まったく美人なツラが台無しだろうが。」
ぽっ。
その後の事は良く覚えていない。
俺は世界一の腕だとか。
麻酔がかかりにくいな、だが、俺の腕にかかりゃ、猛獣だろうが、宇宙人だろうが、妖怪だろうが幽霊だろうが関係ねぇ。
ころっと十秒ですやすや夢ん中だ。
傷跡なんかも跡形もなく綺麗さっぱりにしてやるよ。
そんな声を聞きながら意識を手放した。
あの頃が嘘のように鏡の前で綺麗な口元の女がじっと私を見つめている。
「なんだ、まだ鏡なんか見てんのか。だから言ったろ、お前は美人だって」
私を後ろから抱きしめてくる今では大好きな彼が優しげな瞳で鏡の中の私と見つめ合っていた。