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3−16.魔王の参謀さん、勇者と野営する

「ーーーーーー!」


毒の槍が迫る中、突如として現れた声に本能的に従う。


レイジの頭上を剣先が駆け抜けていくのは、殆ど同時だった。


速く、凄まじい一撃だ。


毒槍は霧散、バジリスクまで到達した斬撃は、軽々しくツワブキの最高打点を超える。


「フン、悪運の強いトカゲだ」


外皮をズタズタに引き裂かれながらも、バジリスクは唸っていた。


背後を見るかバジリスクを見続けるか悩んだが、レイジは後ろを振り返る。


「邪魔だ。下がっていろ」


その男を、レイジは見たことがあった。


以前、センテの街で見たその姿。


印象深い紫の聖剣。


一神教に属さぬ数少ない勇者の一人。


「…アーロ・イヴ・レガリス」


その男・アーロは、レイジの呼びかけが溢れる頃には既に刃を振るっていた。


「さっさと死ね」


一閃。


横凪ぎに振るわれた聖剣ナハルグラートが、バジリスクを背中と腹に分割していた。


その間、ほんの数秒。


出会って一分も経たないうちに、ツワブキとレイジが苦戦していたバジリスクは討たれたのである。


「金目当てだ。礼はいらん」


軽く刃を振り払い、バジリスクの血を飛ばすと、アーロは聖剣を納めた。


紫の瞳、銀髪。


浅黒い肌に黒塗りのプレートメイル。


筋骨隆々の鋼の勇者。


魔物よりも恐ろしげな存在である。


アーロは血溜まりとなった草地を踏みしだき、バジリスクの角を引っ掴むと、飴細工を壊すかのようにポキリと折った。


それから逆鱗のある顎下あたりを剥ぎ取る。


「なんだ、まだいたのか?」


ツワブキと並んで眺めていると、アーロは背中越しにそんな事を言う。


そっけない言葉に対して、ツワブキはにこやかだった。


「凄まじい剣技、お見事でござる」


「礼はいらんと言ったはずだが」


これ以上構うなという意思表示だが、ツワブキは引かない。


それどころか、血溜まりに浸かった旅道具を示す。


「いやぁ、野宿するつもりなのでござるが、アーロ殿くらい強い方がいてくれる方が心強いのだが」


そういうことか。


「なんせこの有り様だからね」


元々バジリスクは、コイツに追われてやってきた訳だ。


ツワブキ、コスい奴だな。


「…チィ。仕方無い、付き合ってやる」


相手の妥協点を見極めて話す技術、真似したいものだ。





日没。


血塗れ野営地を離れ、なんとか別の場所を見つけ、即席の寝床が出来上がったのは、すっかりあたりが闇に包まれてからだった。


焚き火を起こし、新たに鳴子を仕掛け、散らばった荷物からすぐに食べられる食料で腹を満たす。


「いやはや、勇者殿に野営に加わってもらえるとは、小生は幸運を使い果たしたようでござるな」


焚き火を囲む。


火に照らされる顔にはいくつもの表情が浮かぶものだが、アーロにはそれがなかった。


「…貸し借りはしない主義だ。一晩きっかりで離脱させてもらう」


単身の勇者ともなれば、そうそう人を信頼する事も無い、と言うことだろうか。


紫の瞳の奥で何を思っているのか、レイジは純粋に興味がわいた。


「質問しても?」


「どうせする事も無い。言え」


戦闘とは違って、多少は寛大になるらしい。


では、遠慮なく聞かせてもらうとしよう。


「何故一神教に与さずに勇者を?」


この世界では、勇者は酔狂な存在だ。


人助けできる程の余裕と行動力を併せ持つのは稀だからだ。


そして、アーロは一神教徒ではないらしい。


つまり、自分の意志で勇者として活動している訳だ。


酔狂には理由がある。


「オレは別に勇者を名乗った事はないんだがな」


そう思っての質問だったが、アーロは他称で勇者とされているだけらしい。


「アーロ殿の勇者は俗称でござるよ。勇者は教皇が任命するのが通常でござる」


「そういう事だ」


一神教の任命もなく、勇者を自称する訳でもない、か。


「そうすると尚の事気になるんだけど、何故勇者と呼ばれるほどの人助けを?」


他称されるという事は、少なくともそれに見合う成果は出しているはずだ。


「俺は人助けをしている訳じゃない」


「確かに先程も金目当てだと言ったでござるな」


アーロはやはり無表情だ。


「オレはただモンスターを狩っている。結果的に人が助かっているだけだ」


「実態は賞金稼ぎ、ってことかい?」


聞き返すと、アーロは沈黙した。


少し目を瞑り、それからレイジを、その後ツワブキを見て、とある名前を口にする。



「ーーーー開闢と星の魔王、イヴレイン」



「魔王、イヴレイン…?」


聞き覚えの無い名前だったが、ツワブキは知っているようだった。


「それがアーロ殿の目的、でござるか」


「かつてこの世界に突如として現れ、勇者は元より他の魔王たちすら飲み干さんとした魔王の名前だ」


開闢の星。


空から落ちてきたとされるその魔王は、異形の魔王だった。


巨大で、ギフトは不明。


意思疎通は不可能で、他者を侵食し、眷族を創り出し、一気に隆盛した。


一神教の勇者たちは果敢に挑みかかり、そして散っていった。


周囲の魔王すら駆逐し、暗黒時代の覇者となりかけた魔王。


「…しかし、それはかなり昔の話だった筈」


ツワブキが言うには、それは数百年も前の伝説だと言われているらしく、一神教がかなりの犠牲を伴って封印したと締めくくられているそうだ。


しかし、アーロにとってはそうではないらしい。


「奴はまだ生きているし、復活を望んでいる。何処かに息を潜めて、眷族を操って、な」


後書きウサギ小話

歴戦の狩人?編



「俺は人助けをしている訳じゃない」


「救難に入って効率的に素材集めしているだけだ」


「なんせ天鱗宝玉はいくらあってもいいからな」


プレイ時間カンスト系ハンター!


完!


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