3−15.魔王の参謀さん、死を覚悟する
夕闇が大地に迫る。
異変が起きたのは、野営地がようやく整った頃であった。
カランカラン!
断続的に鳴子が危険を告げる。
「敵襲でござる!」
ツワブキの一声と同時に剣を取る。
鳴子の音の鳴る方へ目線を向ける。
バキバキと木々をなぎ倒す音。
これは思ったより大型だな…!
「来るでござる!」
突進してくる襲撃者、その正体は。
「ブルルルルウウウ!!!」
猛進する地竜、赤銅色の外皮を持つバジリスクだった。
厄介な奴がきたな…。
突進を躱すと、野営地を蹂躙してバジリスクは停止する。
デカい。
それに通常のバジリスクとは様子が異なる。
巨大なトカゲのようだが、外皮は硬く、牙には毒。
翼がないだけでれっきとしたドラゴンだ。
しかし、通常とは違ってユニコーンのような一本角がある。
それに通常だと体表は灰色のはず。
特殊個体…賞金首かもしれない。
ツワブキはともかく、僕には手強い相手か。
「ーーー《恩恵透かしの魔眼》」
ギフトを盗み見る。
数は3。
毒の槍、毒ブレス、再生。
中々隙のない構成だな。
「ツワブキ、敵のギフトは毒ブレスと槍、再生だ」
「承知!」
言うが早いか、ツワブキが躍り出る。
黄昏に煌めくは忍刀。
切先は寸分違えずバジリスクの眼を狙う。
しかし、巨体は見た目に反して機敏だった。
「チィ!ならばこうでござる!」
一本角に払われたツワブキは、その角を掴んでバジリスクの背中側へ。
「《射殺す鉄雨》ーーー!」
下方に向けた掌、その中心から放たれるギフト。
その名の通り散弾銃のように鉄片を放つギフトだ。
もちろん、十や二十ではない。
まるで巨大な滝の如き音をたてながら降り注ぐ鉄に、硬い外皮をもつバジリスクとて流石に悶絶する。
「む?再生ギフトか!」
だが、見た目ほどダメージはなく、それも再生ギフトによって修復されていく。
そして、お返しとばかりに、着地直後のツワブキにテールスイープが見舞われる。
「ぐはっ!」
死にはしない。
だが、連続で攻撃を受けされる訳にもいかない。
「ーーーー《剣の処刑台》」
作り出すのは竜殺しの剣。
確定された逸話などなく、しかしそのように在れと願われた路傍の刃。
しかし、それもバジリスク相手になら牙を剥く。
「《地鎮の刃》、僕のとっておきだ!」
斬りつけると、竜特効で切れ味の増した刃が外皮を切り裂く。
再生こそされるが、なんとか陽動くらいにはなりそうだ。
身体能力もギフトも劣るなら、弱点を狙うしかない。
剣の複製はこれを使うと一本が限界。
後もなく、油断など不要。
2回斬りつけたら離脱。
攻撃などもらう訳には行かない。
死んでたまるか。
「どうしたトカゲ、かかってこいよ!」
のたうつように暴れ迫りくるバジリスク。
横に転がり回避すると、背後にあった木がへし折れた。
あんなの、一撃必殺じゃないか。
後方のツワブキもなんとか体勢を立て直し、連携して刃を向ける。
「かたじけない」
「油断するなよ」
2人なら回避も比較的容易だ。
が、決定打はない。
あぁ、悪戦苦闘もいいところだ。
ツワブキが初めに放ったギフトが最高打点だろう。
再生さえなければどうにか出来たかもしれないが、僕とツワブキではどうにも出来ない。
「まずいでござるな…」
「なんだ、随分余裕そうな発言だな」
「そんな事はないでござるよ、ただ、攻めきれない…!」
斬りつけ、蹴り飛ばし、何度もギフトを撃つが、やはり再生を上回る事が出来ていない。
劣勢からの逆転劇はなく、ついにはバジリスクも僕の方が狙い易い事に気付いたらしい。
攻撃はより激しく。
ツワブキの攻撃など無視して、執拗に僕を狙う。
つくづく嫌になるな。
最強に拘るつもりなんて無いが、弱肉強食で淘汰されるとは。
カルシャさんなら逃げの一手も打つことだろう。
…それ以前に、バジリスク程度に遅れをとったりはしないか。
毒の槍が放たれ迫る最中、死を覚悟した。
背後から冷徹な声が響いたのは。
「ーーー死にたくなければ伏せろ」
そんな時だった。
後書きウサギ小話
忍のギフト、編
「そいえばツワブキがギフト使ってるとこ、見たことないっすね」
「アイツのことだからギフトも直接戦闘向きじゃないのかもね」
「いやぁ、案外味方を巻き込むような自爆系なんじゃないっすかね?死ににくいって言うくらいだし」
「はっ、もしかして」
「わかったんすか?」
「自動的に人から胡散臭いと思われるような精神汚染系のギフトなのかも…?」
メリット無しギフトという神のイタズラ!
完!




