3−14.魔王の参謀さん、森をゆく
「ーーーー金目当てだ。礼はいらん」
そう言って、その男は剣を納めた。
目の前にはモンスターの死体。
凄まじい実力を見せつけられる形となって、ツワブキもレイジも一瞬言葉を失う。
森の中、血なまぐさい草を踏みつけ、男は賞金首の証明としてモンスターの一部を剥ぎ取る。
その男は、勇者と呼ばれる存在だった。
アーロ・イヴ・レガリス。
鋼の勇者とよばれる、この世界の頂点に立つ勇者。
その男との出会いに至るまで、時は少し遡る。
*
グリムソルガの守りをグレインに預け、レイジとツワブキはドミナスを目指していた。
勝手知ったるレソルガ樹海ではあるが、流石に隅々まで知り尽くしている訳でも無く、ましてや転生者とはいえ人の身。
一日で走破と言う訳にもいかないので、野宿装備での旅である。
「レイジ殿、もう少し進んだら野営地を探すでござる」
森の景色は、つぶさに見ていても代わり映えがしない。
都市から離れた場所では、レイジも注意深く探さなければ、ウェアウルフたちの道標を見失ってしまう。
それを見逃さず、先頭をすいすい進むツワブキは、やはりすごい奴だった。
「…ここまででどれぐらい進んだかな?」
「そうさなぁ…。だいたい街まで6、7日かかる想定でござるが」
正確な距離は定かではないが、先達の転生者によれば、都市間は約50km程度だそうだ。
ドミナスとグリムソルガは斜めに2街区なので、おおよそ140kmになるはずだ。
「ってことは、ようやく半分進んだくらいか」
時速にすると2kmくらいかな?
これが森の中での移動速度として速いかどうか、レイジには判断しかねる。
「ケイオスビーストを借りてこれば良かったかもしれないでござるな」
「森の中では影すら追えないからね」
ケイオスビーストの背中だが、意外と乗り心地は悪くない。
長距離だと大変とはいえ、それでも倍の速度は出るだろう。
転生前の科学文明社会が懐かしいところだ。
「あれはカルシャ殿の功績でござるからな」
そんな中でも楽しくやれているのは、間違いなくカルシャさんのおかげだろう。
「カルシャさんが味方で良かったとつくづく思うよ」
未だにいつか裏切るつもりも無くはないが、今となっては考えづらい選択肢だ。
「魔王としては甘いが、アレで意外と容赦ない所もありますからなぁ」
最近では板についてきた感もあり、損得計算が働いているとスッパリやる。
「最初は割と小心者だった筈なんだけどね」
生き残るために足掻いていた頃は、レイジと同じような実力で、ギフトが多いだけのモンスターだったはずなのだが。
「人は経験によって変わっていくものでござる」
やはり聖女を倒したり、街を作ったり、一神教に喧嘩を売ってきて、少々のことではビビらなくなったのだろう。
でなければ、ケラスの街の襲撃のような無茶などするはずが無い。
「まぁ彼女はウサギなんだけど」
単純に人間ではない、と言ったつもりだったが、ツワブキはカルシャさんについてこう評した。
「モンスターは獣と同じで無茶はすまいよ。そういう意味では、カルシャ殿は最早ヒトに近い考え方をしているでござる」
確かにそうかもな。
色々な経験と知識のおかげで、カルシャさんは人と変わらない思考をしているように見える。
聖女の復讐だって理解しているだろうし、ジラムの心を読んでいるように誘導した。
改造で種族が簡単に変わるこの世界では、人間という種族であることには大きな意味はない。
力と思考力。
序列はシンプルだな。
そんな会話をしているうちに、ツワブキがちょうど良さそうな場所を見つけた。
「む、ここらが良さげでござるな」
辺りに獣道もなく、拓けすぎてもいない。
適度に平らで、雨が降っても水没しなさそうだ。
そうなれば、あとはやる事は決まっている。
「よし。テントと焚き火は僕が準備する。鳴子は頼んだよ」
ここ2、3日で固まった役割だ。
まさか鳴子を現実で見ることになるとは思わなかった。
「うむ。任されよ」
コイツ、本当に出自が謎だよな…。
後書きウサギ小話
ニンジャの実力、編
「ツワブキ。鳴子以外にも忍道具的なのはあるのか?」
「あるでござるよ?例えば…クナイや手裏剣は持ち歩いているでござる」
「へぇ。中々古典的だな」
「あとは…火縄銃、忍刀、煙玉、爆薬、妖精糸ワイヤー、スタンガン、麻酔薬、他にも色々あるでござるよ」
「その装備の何処に隠し持ってるんだ…?」
「禁則事項、で、ござるよ」
シノビの秘密は謎だらけ!
完!




