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3−14.魔王の参謀さん、森をゆく

「ーーーー金目当てだ。礼はいらん」


そう言って、その男は剣を納めた。


目の前にはモンスターの死体。


凄まじい実力を見せつけられる形となって、ツワブキもレイジも一瞬言葉を失う。


森の中、血なまぐさい草を踏みつけ、男は賞金首の証明としてモンスターの一部を剥ぎ取る。


その男は、勇者と呼ばれる存在だった。


アーロ・イヴ・レガリス。


鋼の勇者とよばれる、この世界の頂点に立つ勇者。


その男との出会いに至るまで、時は少し遡る。





グリムソルガの守りをグレインに預け、レイジとツワブキはドミナスを目指していた。


勝手知ったるレソルガ樹海ではあるが、流石に隅々まで知り尽くしている訳でも無く、ましてや転生者とはいえ人の身。


一日で走破と言う訳にもいかないので、野宿装備での旅である。


「レイジ殿、もう少し進んだら野営地を探すでござる」


森の景色は、つぶさに見ていても代わり映えがしない。


都市から離れた場所では、レイジも注意深く探さなければ、ウェアウルフたちの道標を見失ってしまう。


それを見逃さず、先頭をすいすい進むツワブキは、やはりすごい奴だった。


「…ここまででどれぐらい進んだかな?」


「そうさなぁ…。だいたい街まで6、7日かかる想定でござるが」


正確な距離は定かではないが、先達の転生者によれば、都市間は約50km程度だそうだ。


ドミナスとグリムソルガは斜めに2街区なので、おおよそ140kmになるはずだ。


「ってことは、ようやく半分進んだくらいか」


時速にすると2kmくらいかな?


これが森の中での移動速度として速いかどうか、レイジには判断しかねる。


「ケイオスビーストを借りてこれば良かったかもしれないでござるな」


「森の中では影すら追えないからね」


ケイオスビーストの背中だが、意外と乗り心地は悪くない。


長距離だと大変とはいえ、それでも倍の速度は出るだろう。


転生前の科学文明社会が懐かしいところだ。


「あれはカルシャ殿の功績でござるからな」


そんな中でも楽しくやれているのは、間違いなくカルシャさんのおかげだろう。


「カルシャさんが味方で良かったとつくづく思うよ」


未だにいつか裏切るつもりも無くはないが、今となっては考えづらい選択肢だ。


「魔王としては甘いが、アレで意外と容赦ない所もありますからなぁ」


最近では板についてきた感もあり、損得計算が働いているとスッパリやる。


「最初は割と小心者だった筈なんだけどね」


生き残るために足掻いていた頃は、レイジと同じような実力で、ギフトが多いだけのモンスターだったはずなのだが。


「人は経験によって変わっていくものでござる」


やはり聖女を倒したり、街を作ったり、一神教に喧嘩を売ってきて、少々のことではビビらなくなったのだろう。


でなければ、ケラスの街の襲撃のような無茶などするはずが無い。


「まぁ彼女はウサギなんだけど」


単純に人間ではない、と言ったつもりだったが、ツワブキはカルシャさんについてこう評した。


「モンスターは獣と同じで無茶はすまいよ。そういう意味では、カルシャ殿は最早ヒトに近い考え方をしているでござる」


確かにそうかもな。


色々な経験と知識のおかげで、カルシャさんは人と変わらない思考をしているように見える。


聖女の復讐だって理解しているだろうし、ジラムの心を読んでいるように誘導した。


改造で種族が簡単に変わるこの世界では、人間という種族であることには大きな意味はない。


力と思考力。


序列はシンプルだな。


そんな会話をしているうちに、ツワブキがちょうど良さそうな場所を見つけた。


「む、ここらが良さげでござるな」


辺りに獣道もなく、拓けすぎてもいない。


適度に平らで、雨が降っても水没しなさそうだ。


そうなれば、あとはやる事は決まっている。


「よし。テントと焚き火は僕が準備する。鳴子は頼んだよ」


ここ2、3日で固まった役割だ。


まさか鳴子を現実で見ることになるとは思わなかった。


「うむ。任されよ」


コイツ、本当に出自が謎だよな…。



後書きウサギ小話

ニンジャの実力、編



「ツワブキ。鳴子以外にも忍道具的なのはあるのか?」


「あるでござるよ?例えば…クナイや手裏剣は持ち歩いているでござる」


「へぇ。中々古典的だな」


「あとは…火縄銃、忍刀、煙玉、爆薬、妖精糸ワイヤー、スタンガン、麻酔薬、他にも色々あるでござるよ」


「その装備の何処に隠し持ってるんだ…?」


「禁則事項、で、ござるよ」


シノビの秘密は謎だらけ!


完!

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