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3−13.居残り組、話し合う

「じゃ、ちょっと行ってくるわね」


「魔術師になって戻ってくるわ」


ライナ来訪から数日。


旅立ちの準備はつつがなく整い、カルシャたち4人はタルタロスへと出発する。


エリスもエイリもフル武装かつデカイ荷物もち。


二人にとっては鍛錬兼ねての旅路である。


「お姉さまと外泊…!」


が、エイリちゃんは見当違いの方向に気合が入っているようである。


「心の声がダダ漏れっすよ、狂犬…」


隣のエリスも呆れ気味だった。


そしてエイリの腰に下がるゲッコウがやれやれと呟く。


「エイリちゃん淫乱やからなぁ」


「うっさい、妖刀」


そして鞘をぴしゃりと叩かれる。


「えぇー、事実やん…」


コレ、上位者じゃない皆には、エイリちゃんが刀としゃべるヤバイ奴に見えてるんだよなぁ…。


ーーーま、いっか、狂犬だし。


さておき。


「留守の間は頼んだわよ」


カルシャの目の前には、並ぶ臣下たち。


最前列は忍、傭兵、改造狼に秘書。


「指揮はツワブキ、レイジ、グレインの中で相談して決めてちょうだい」


ニーフェは指揮官には向かないから、3人に任せよう。


「了解でござる」


ま、実質はツワブキがまとめるだろう。


「じゃ、さくっと行ってくるわ」


「ご武運を」


こうして、魔王と聖女の遺物探索が始まったのだった。


ただ、これより先、カルシャたちに多くの困難が待ち受ける事を、カルシャたちはまだ知る由もなかった。





カルシャたちが旅立って数日。


御所にて。


「では、担当者会議を始めるでござる」


ツワブキ主導の元、カルシャ不在の間の方針を決めるために居残り組が集まっていた。


「まずはニーフェ殿、進捗を」


「都市外壁の拡張ですが、カルシャ様の承認を得た図面で測量と基礎工事を始めました。時折モンスターは出ますが、警備隊で十分対応可能ですから問題ないですね」


カルシャは出立前に、いつも以上に物事を決めてからでかけた。


そのため、今のところは意思決定も特に必要なく進んでいる状態であり、建築に関しては進捗確認だけで十分だった。


ツワブキは頷く。


「ふむ。建築は予定通り、でござるな。引き続き頼むでござる」


ニーフェ殿はそれなりに長い間都市の建築を見てきているし、こちらの方面はお任せで大丈夫でござるな。


「次に食料庫。グレイン殿、報告を」


さて、問題はここである。


「食料庫については順調…と言いたい所ですが、ケイオスビーストが増えたことで、貯蓄分は目減りしていますね」


やはりと言うかなんというか、改造で身体が大きくなった分、明らかに食料消費は増えていたのでござる。


日々の食事を見ても明らかだったが、グレイン殿から具体的に数字を聞くと、かなり深刻な減り方の様子。


「畑を増やす前に、何か手を打たねばならんでござるか」


ウェアウルフたちは完全な肉食ではないが、穀物で補うにしても限度がある。


せっかく貯蓄してきたものを消してしまっては、軍備を強化できても意味がないでござる。


「農家を雇うなりして効率化するか、狩りの回数を増やすか、そのあたりでしょう」


グレインの言うとおり、今ある畑の収穫量を増やしたり収穫回数を増やすか、狩りの獲物を増やすかがわかり易い手段だがデメリットもある。


農業に関してはすぐに効果はでない。


狩りに関しては捕りすぎれば枯渇する。


さて、どうしたものか。


すると、ここで新たに発案があった。


「短期的には買い出しで補充でも良いんじゃないかな」


買い出しか。


外貨は十分にある。


時間的余裕もまだある。


大量に買い込むのは怪しまれるだろうが、検討すべき提案でござろう。


「ふむ。レイジ殿の意見も一理あるな。奴隷や雇用も兼ねて街にでるのは検討すべきでござる」


奴隷、農家、酪農家、産業に通じる技術者。


欲しい人材確保も兼ねて、街にでるのは良い策に見える。


「この件は一旦保留として、先にレイジ殿の報告を聞くでござる」


だが、まずは他の報告を聞いてから判断すべきでござるな。


「僕からは転生者たちの状況だね」


ツワブキから振られて、レイジは報告を始める。


「転生者たち30名ほどは戦闘訓練の他に、適性を見つつ各部に派遣、手伝いをしてもらっているよ。現場からは…概ね高評価を聞いてる」


確かに戦闘訓練だけでは穀潰しにもなろう。


働けるのであればその方が良い。


「建築では戦闘用ギフトも上手く扱って手伝ってもらっていますね」


「農業、酪農も同じですね」


ニーフェ殿、グレイン殿からも高評価のようだ。


さすが異世界人。


適応力が高くて助かる。


「あと、改造志願者が何人かいるけど、どうする?」


ほほう。


ウェアウルフたちだけでなく、異形に魅入られた者が出たか。


「あとでリストを貰おう。カルシャ殿が戻ってきたら判断してもらうでござる」


「用意しておくよ」


さて、戦力強化に繋がると良いのだが。


戦力強化といえば、この場にも大きく強化された御仁がいたでござるな。


「ところで本筋からは逸れるが、改造後の調子はどうでござるか?」


カルシャ殿は、出立前に怒涛の勢いで改造を施していった。


それが食料不足にも繋がってはいるのだが、戦力強化の面では凄まじい伸びにはなっている。


そして、グレイン殿は凄まじい伸びを牽引する頂点なのである。


「すこぶる良いですよ。ケイオスビーストが人気なのも頷けます」 


元々族長であり、身体付きには恵まれたウェアウルフである。


それがケイオスビーストを超えるような特別な改造を施されており、今のグレイン殿は破格の強さを手に入れた。


変身にとどまる程度の改造であるにも関わらず、カルシャ殿と同じ黒い表皮を纏い、雷光の魔眼を宿し、体内に竜骨の剣を潜ませる。


ケイオスビーストとは呼ばれず、カルシャ殿はナイトハウンドと呼んでいたが、軽く手合わせしただけで判る。


今のグレイン殿はこのグリムソルガで3番目に強い。


それ故。


「それなら、小生が買い出しに出ても大丈夫でござるな」


「あぁ、そういう事ですか」


察しが良くて助かる。


買い出しで小生が居なくとも、グレイン殿とケイオスビースト軍、転生者がいれば、余程の敵でなければ被害など出ない。


「そうさな…。レイジ殿には鑑定ギフトがある故、同行してもらいたい」


「了解」


この居残り組だと、小生かレイジ殿くらいしかまともに買い物できないでござるからな。


(誤解がないよう補足すると、がめつい商人相手に、である)


いつの間にやら巾着を軽くさせる小生と、鑑定ギフトで情報を確認できるレイジ殿が適任なのである。


「では、小生とレイジ殿で奴隷と技術者の調達、食料買い出しに出るでござる。随伴はなし、食料は買った奴隷で運ぶ事にしよう」


「留守の間は私が指揮するという事で良いですね?」


これほど心強い指揮官はいないでござろうよ。


「勿論、グレイン殿にお任せするでござる」


「出立は明日の朝。今日はこれにて閉会でござる」


後書きウサギ小話

新たな人気者?編



「グレイン殿、魔眼が使えるようになったそうですな」


「ええ、この通り」


「目からビーム!」


「わー、もっかいやってぇ!」


「カッケェ!スゲェ!」


「わー!わー!」


「子供にすこぶる人気でござるな…」


魔王臣下の癖にヒーロー感!


完!

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