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3−12.復讐聖女さん、最弱ウサギさんを冥府へいざなう

「世界の裏側、タルタロス…ねぇ」


いきなり怪しい単語が出てきたなぁ。


「ま、なんの事やらって思うわよね、普通」


ライナは肩をすくめた。


「タルタロスは湖や山の底から深く深く潜った先にあると言われている、言わば冥界よ」


世界には魂の眠る地が深く深く潜った先に存在し、人々の魂は一生を終えるとそこで眠りにつく。


神が創った安寧の地。


一神教の教義の中でもすでに廃止された、偽典とされる一節に書かれている隠世のことである。


「それは知ってる」


「博識ね」


「いいから、続き」


もったいぶるなよ。


面倒だろうが。


「タルタロスは迷信とか噂じゃなく、実在する」


読み漁った古書の知識に、行き帰りの方法でも書いてあったとかか?


確かに昔の強靭な人々や魔物であれば、辿り着いていても疑問はない。


「到達も帰還も難しいから誰も信じないだけで、世界各地に点在する湖や山の底の洞窟からたどり着く事ができるのよ」


やはりその手の伝記や手記でも紛れていたのだろう。


それが検証に足る内容だからこそ、この共闘は成立するのだから。


で、その場所は何処なの?


そう問いかける前に、ライナはこう言った。


「おかしいと思わない?なんで湖が溢れないか。河は湖に流れ込むけど、その分の水は何処に消えてると思う?」


なんだ、唐突に。


湖?


確かに大量に水は流れ込んでいるけど…。


あぁ、そういう事。


「答えは地底大河」


カルシャが答えに辿り着くと同時に、ライナが答えを明かす。


各地の河はやがて湖に流れ込み、そこで途絶える。


河と湖はそういうものだと認識していたから、今まで疑問にも思わなかったが、確かに貯まり続ける水が溢れない理由などない。


それが地下に流れ込み、バランスか取れているだけなのだ。


「地底大河の先にはこの世界の原初の姿が残されていて、その中にアデルカの墓所もある」


原初の姿、か。


人がいなければ獣にとっては楽園だろう。


「原初の世界には強靭なモンスターが多数残っていて、世界のモンスターは定期的に原初から補充される」


ライナ曰く、原初の世界すらアデルカの創り出したもので、この世界のバランスを取るためのシステムの一部なのだろうという事らしい。


魔物が滅びず、人も滅びないのは、世界の創造者の意図に沿っているためで、一神教が魔王を駆逐できないのも少なからずそれが影響しているから。


「…アンタが共闘を持ちかけたのも、その原初のモンスターたちのせいって訳だ」


世界の裏側で生存できない個体が表に這い出る。


つまり表では強いと言われるレベルが、裏側の普通という構造だ。


「察しが良くて助かるわ」


カルシャの推測は正しかったらしい。


「原初とやらの強さは?」


「不明。少なくとも賞金首レベルでしょう」


まあそうだろうな。


でなきゃ表ですら淘汰される。


その辺はもう気合入れるしかないだろう。


「アデルカの遺産については?」


「詳細は不明。けれど、魔術を教授するようなモノ、強力な武器や防具、知識が存在するとは言われている」


その情報は文献に無かったのね。


ま、仕方ないか。


「場所はわかってるの?」


「写してきた地図はあるわ」


場所がわかるだけマシか。


「スタート地点は?」


「レソルカルト湖」


…ゲッコウの神殿、壊さなけりゃ楽だったかも。


「オッケー、決まりね」


さて、方針は決まったわね。


そんなタイミングで、神妙にしていたエイリちゃんが呟く。



「ふむ…つまり、お姉さまたちはデートに行く、と」



「「…はぁ?!違うし!」」


あ、思わずハモってしまった。


「アンタ、ちゃんと話聞いてた?」


狂犬で駄犬とか目も当てられないわよ?


「もちろんですよ!」


やけに自信満々じゃない。


「じゃ要約してみなさいよ!」


話を聞いてなかったのか曲解したのか、これでハッキリするわ。


「地底世界に、宝探しに、二人でいく」


合ってるって事は、ちゃんと聞いてたのね。


で?


「それのどこがデートなのよ!」


そう指摘すると、エイリちゃんはテーブルに勢いよく手を付いて立ち上がる。


「見知らぬ世界に二人でお出かけ、の、どこがデートじゃないんですか!?」


すごい剣幕だった。


「あれぇ?私なんか間違ってるぅ…?」


思わず自分の方が間違ってるような気がすらしてしまう。


「ウチの目が黒いうちは、無断外泊なんて許しませんからね!」


オカンかよ!


狂犬が吠えていると、その横で駄犬がため息。


「さっきから勝手して、黙っちゃいられないっすね…」


「エリス…」

 


「そんなの、僕が付いていくしか無いじゃないっすか!」



「アンタに期待して損した!」


駄犬はやはり駄犬であった。


期待して損した。


バカは死んでも治らないっていうけど、ホントに治らないのね。


エリス、残念な娘…!


「ズルいぞ、駄犬!?それならウチも付いていきますぅ!」


あー、こっちも死んでも治らなさそう♪


「一回黙れこのバカ犬ども!」


一喝する。


ライナの前で何晒してくれてんだ、このバカ者どもめ!


「まぁまぁカルシャ殿。遺産とやらを運ぶ者は必要でござるよ」


「そりゃそうだけど…」


ツワブキ…アンタちょっと甘いんじゃない?


鍛錬で厳しい分、ちょっとバランス取ろうとしてない?


そこへさらにレイジが援護射撃。


「良いんじゃない?僕とグレイン、ツワブキが居残るなら問題無いだろうし、二人を連れていけば」


「それに、二人を鍛えるには丁度良い機会でござろう」


くっ…!


重鎮二人の意見が揃うと、私も強く言いづらいじゃない…!


「まぁ、アンタたちがそう言うなら、それでも良いけど…」


…仕方ない。


今回のお供はバカ犬どもにするか…。


全く気は進まないけど…。


そしてそんなやり取りを黙って見ていたライナが半笑いで言う。


「貴女のとこ、随分騒がしくなったわねぇ…」


「放っとけ!」


後書きウサギ小話

魔王と聖女のお戯れ、編



「ふむ…つまり、お姉さまたちはデートに行く、と」


「「当たり前じゃない」」


「なんですとぅ?!」


「まさかのハモったっす?!」


「デートじゃないと、いつから錯覚していたのかしら?」


「フフン、これは魔王と聖女の愛の逃避行よ」


「貴女たちはそこで私達の愛を、指でも咥えて眺めてなさい?」


「くっ…!ボケをボケで返された!」


「諦めるっすよ、今回はカルシャ姉が上手だったっす」


以心伝心、ボケ殺し!


完!

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