3−11.復讐聖女さん、悪夢の魔王さまに共闘を持ちかける
私のメリット、それは魔術だ。
「アデルカの遺産は、アデルカが人知れず作った自身の墓所にある」
魔術師アデルカは、その存在こそ認められているものの、死んだという事実も、その墓所が見つかったという事実も存在しない。
それは一神教が事実を葬った結果であり、アデルカ自身が秘匿した結果である。
「その中にはアデルカの知識を収めた魔導書もあり、受け継いだ者には魔術師の力の一端が与えられると言われているわ」
まことしやかに囁かれる民間伝承と言うやつだ。
廃れて久しいカビの生えた伝承だが、そこまでライナが言うからには、おそらく具体的で検証すべき情報を持っているのだろう。
そして、それを見つける事が出来れば、晴れて魔術を手に入れる事ができるかもしれない、という事だ。
「私としても、一神教と戦うのに魔術は欲しい」
ライナはそれを手に入れて、一神教と対峙するつもりなのだ。
さて。
どうしたものか。
話としては悪くないが、コイツを信頼していいものだろうか。
途中で裏切られて背中をバッサリ、なんて展開は御免こうむる。
それを防ぐには、まず先にこの聖女サマの行動と理由を確認するべきだろう。
「…一つ聞くけど、アンタが一神教を潰す理由は?」
「復讐」
即答か。
ニコリとするなよ、怖えだろうが。
「ブレないわねぇ」
復讐の種に目覚めると、こうも炎みたいな精神になるのだろうか。
クソほど厄介だな。
私が復讐対象である以上、裏切りの可能性が消えないので、全く意味のない問答になってしまった。
これだけメラメラしてんなら、むしろ上手いこと欺いて燃え尽きる方向に持ってけないかしら。
「純粋に興味から聞くけど、アンタ仮に復讐が終わったらどうすんの?」
大きな復讐対象である一神教と私。
それを消した時、ちゃんと燃え尽きるのか。
燃え尽きるのであれば、ちょっと方針変えてみるか?
「さてね。人助けで魔物狩りでもしようかしら」
だが、カルシャの予想とは違って、ライナは復讐だけに染まっている訳じゃではないらしい。
「意外と冷静ね。燃え尽きるタイプかと思ってたけど」
「復讐が終わっても死ぬ訳じゃあるまいし、ましてや今や不死種よ?身の振り方はそのうち考えるわ」
そりゃそうか。
死なない事は解ってるんだもんな。
3回も死んでりゃ達観もするか。
「一神教は私を好き勝手使い倒した。それだけで潰す理由は十分よ」
そりゃ気に食わないだろうよ。
そういう相手に対して、今現在それなりに力があって、実際に潰せるのなら、私でも検討くらいする。
結果、この聖女サマは、単独ではなく共闘という手段を選んだ訳だ。
「それに貴女が必要だから、こうして共闘を持ちかけた」
敵の魔術が存在する以上こちらにも魔術を扱う駒が必要で、私がその一つとして動くことを期待しているらしい。
「敵の敵は味方って訳?私が頷かない場合はどうするつもりよ?」
「貴女はモンスターだけど、そこまで愚かではないでしょう」
よく解ってるじゃない。
私は共闘しても良いと考えている。
「…いいわ。背中預けるには物騒だけど、共闘はしてあげる」
どうあれコイツの復讐対象にはなっているが、私を欺いて殺すだけなら、今この時間にでもやれるだろう。
苦労はするし、失敗する可能性も高いが、こんなに長々と話をする必要はない。
少なくとも、一神教にライナ単体で勝てる状況になるまでは、コイツは裏切らない。
激情に流されない限りは。
「良い判断ね」
この笑顔。
いまいち信用できないが、用心するしかないだろう。
それに、仲間が多いほうがいいのはコチラも同じ。
「アンタの危険性を差し引いても、あのクソ司祭は面倒だもの」
「それには同意するわ」
強い駒に対しては、弱い駒がいくらあっても仕方ない。
特に今回は、例えばケイオスビーストが100体いたとしても大勢は変えられないのだ。
特別司祭エストには、カルシャですら勝てないのだから。
結局、魔術を扱えるような強い駒を揃える事が大事なのだ。
さて。
共闘すると決めたら、あとは具体的な情報だ。
「で、具体的な話をしなさいよ。何か知ってるんでしょ?」
そう問うと、ライナはとっておきを明かした。
「魔術師アデルカ・クロトの墓所は、世界の裏側…タルタロスにある」
後書きウサギ小話
最凶最悪の魔王・・・?編
「純粋に興味から聞くけど、アンタ仮に復讐が終わったらどうすんの?」
「さてね。人助けで魔物狩りでもしようかしら。それか、貴女みたいに魔王になるのもアリかもね」
「アンタが魔王ですって?」
「私が魔王になったら、ゲームみたいにコテコテの魔王になろうかしら」
「具体的には?」
「弱い段階で勇者を殲滅、各都市の指導者クラスの暗殺、夜襲奇襲からの殺戮焼き討ち、人類全奴隷化、徹底的にやるわ」
「魔王の私がひくくらい極悪非道じゃない…」
祝え!最凶最悪の魔王の誕生である!
完!




