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3−7.神剣さん、過去を語る

「アンタの本体、魔術で封印されてたの?」


封印されて消費期限切れっぽくなっていたのは知っているが、まさか魔術による封印だったとは。


「おう。その時の光景もバッチリ覚えてるで!」


ゲッコウにはそこまで期待していなかったが、思わぬ拾いものである。


「確か尻尾からアンタが摘出されて、本体が暴走した結果、封印されたんだっけ?」


神剣ゲッコウ・レプリカは本来、魔王ゲッコウ本体の異形深化による精神亡失を食い止めるための外部制御装置にあたる。


それが当時の勇者たちに運悪く摘出され、制御装置を失った本体が暴走した、という経緯だったはずだ。


「そうそう。儂、摘出されてからは諦めて黙ってたから、ただの剣や思われたんか、そのまま放置されて、最後に台座に突き立てられるまで全部見てたんや」


上位者といえども、ゲッコウが黙ればただの剣にしか見えないからね。


「話すと長なるから、皆に記憶共有で見せるで」


元・魔王とはいえ器用なものだ。


この場合、上位者じゃないレイジやジラムにも見えるのかしら?


そんな事を考えているうちに、ゲッコウの記憶が流れ込む。


妖精たちの住居空間が霧のように消え去り、それが晴れると、見覚えのある神殿。


カルシャたちがゲッコウと相まみえたあの空間である。


「■■■■■■■■■ーーー!!」


場面は暴走したゲッコウと、時の勇者たちが対峙するところ。


勇者の手にはゲッコウ、地面には切り落とされた竜尾。


たった四人の勇者たちに、ゲッコウは封印されたらしい。


毒のブレスに水流ブレス、薙ぎ払い、叩きつけ、絞め上げる。


魔王ゲッコウの攻勢は凄まじく、腐り落ちる前の異形の魔王はさぞかし強かった事を、ありありと示している。


同時に、時の勇者たちの強さも。


煌めき、鋭く舞う剣閃。


轟音響かせ、焼き払う浄化の炎。


打ち砕き、命運切り開く銃弾。


ギフトもさることながら、元々の技量が凄まじく、カルシャが戦えば10秒と保たないであろう真の勇者たち。


カルシャが決して弱い訳ではなく、当時の実力者たちが強すぎるのだ。


現在の勇者も魔王も、この時代の者たちには敵わない。


圧倒的な力のぶつかり合いの中で、魔王ゲッコウは徐々に神殿の奥へと追い詰められていく。


カルシャの見たかった場面は、程なくして訪れた。


剣と銃の勇者がゲッコウを抑えつける。


その間、武器を持たずギフトで戦っていた女勇者が祭壇に立ち、祈りを捧げ始めた。


「ーーー我等に加護を与えし運命の神よ、我等が祈りを聞き届け給え」


そんな一節から始まる祈りの言葉。


周囲の空気がざわめき、ギフトとは違う力が蠢く。


「我等の前に立ちはだかる者、名を魔王ゲッコウ」


それがただの言葉で無いことを、カルシャは肌で感じ取る。


妖精たちの神託、その幾何学模様に語られた言葉のひとつひとつと同じ。


意味と力のある言葉の羅列。


「我等は請い、願う」


言葉を起点として、ざわついた空気が整えられていく。


魔力なるものの流れが、僅かに垣間見える。


「魔王ゲッコウを滅ぼし、人の未来を切り開く運命を」


沸き立つ空気。


祈りに則して熱を帯びる。


金剛、玉の輝きすら霞む、魔力の昂ぶり。


「我等は神威を此処に。いざ顕れよ、《浄光の神剣(ルミナス・ソード)》」


始めは一条。


終わりは一面。


幾重もの光の剣が次々と現れては、ゲッコウに突き立てられていく。


神殿に縫い留められ、光の剣は膜となり、八俣大蛇は封じられた。


まるで光でコーティングされたかのよう。


これが結末。


これが魔王の最期。


これが魔王を封じた魔術。


見るべきものを見た後は、始まりと同じように霧の中に消えゆき、現実世界が戻ってくる。


「これが儂の、魔王としての最期や」


ゲッコウの言葉によって、過去の幻影は完全に消え去った。


「ーーー魔術どころかギフトでさえも足りないって訳ね」


痛感するのは己の実力不足だ。


ウォロクの言葉じゃないが、私が歴代魔王に鼻で笑われるのは間違いない。


あの頃の勇者は既にいないが、一神教が私を軽んじるのも納得だ。


例えあのレベルの勇者でなくとも、今のカルシャ程度なら楽勝だと思われている訳だ。


「お嬢ちゃんは決して弱くはない。ただ、さらに上が居るってだけや」


ゲッコウの言葉は正しく事実を示している。


特別司祭たちは、多分カルシャよりも強いのだ。


「…とりあえず、今は魔術の事だけ考えるわ」


だから、今は部分的なところから考える。


「ゲッコウ殿の記憶から、魔力の流れはなんとなく感じ取る事が出来たでござるが…」


凄まじい魔術だからだったのか、ゲッコウの感知能力が高かったからなのか、再現記憶ではざわついた空気の流れを感じ取る事はできた。


あれがいわゆる魔力なるものであるという感覚は得る事ができた。


それでも、一歩前進とすら言えない。


「具体的な方法はやっぱり解らないわね…」


何かが蠢いたことを知覚できただけ、なのだ。


「そもそも上位者じゃない僕にはさっぱりだよ」


上位者でないレイジやジラムにとっては、ギフトとの違いも解らないのだろう。


「解らないという事が解っただけ前進、と言いたいとこだけど、魔王の亡骸とか遺跡を探すしかないのかしらね…」


こうなると八方塞がり。


新たなヒントを探すしかない。


…ホント、魔術ってなんなの?


後書きウサギ小話

記憶のシェア、編



「アンタの記憶共有って、見たことあるものなら何でもいいわけ?」


「せやな」


「…つまり、他人が嫌がるようなモノも見せられる訳ね」


「…まぁ、せやな」


「じゃ、昔の異形化改造の記憶とかも見せられる?特に過程がグロいやつ」


「…できるけど、それで何するん?」


「捕まえた転生者へ見せしめ例示と拷問に使えるかなーって」


「…お嬢ちゃん、けっこうエグい事考えるなぁ…」


ナチュラルしどいムーブ!


完!

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